セネガル式魚と野菜のトマトリゾット、南アフリカの家庭料理のチキンの煮込み…。
眺めているだけでよだれが出てきそうなレシピの数々。
この冬、世界66カ国の料理の作り方をまとめたレシピ本『どローカルごはん』が電子本で出版されました。
レシピを書いたのは、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊として派遣された人たちです。
各国で暮らし、現地の人々と食べた「同じ釜の飯」。思い出の味がたくさん紹介されています。
レシピ本に掲載されているのは、中国やベトナムなど、日本でも馴染みのある国の料理から、エスティワニやホンジュラスなど、日本人にとってはどんな料理があるのか想像がつきにくい国の料理まで様々です。
多くの人にとってこれまで食べた経験のなさそうな料理でいっぱいですが、どれもが日本で手に入る食材を使って作れるということです。
このレシピ本を制作したきっかけは、「青年海外協力隊が作った任国の料理レシピ集があったら、おもしろいかな?」というアイデアでした。
それから企画が進み、青年海外協力隊大阪府OBOG会が中心となって完成させました。
任期を終えて帰国した元隊員や、新型コロナウイルスの影響で一時帰国となった隊員たちが協力し、レシピを紹介しているそうです。
それぞれの料理に、心温まるエピソード
JICAの青年海外協力隊は、発展途上国など世界各国で活躍。自分の専門分野の知識や技術を生かし、その国の人々と協働してプロジェクトなどに取り組んでいます。
どのレシピにも、それぞれの隊員の思い出があります。それらのエピソードが、レシピに添えられているのもこの本の魅力の一つです。
現地の人々の優しさや、隊員が当時食べた料理の味を想像できるエピソードも多くあります。
緊急帰国が決まった時、何人もの同僚の先生が手作りごはんを自宅まで届け続けてくれました。マレーシアの方々の優しさを身をもって感じた瞬間でした。(マレーシアの「マレーシア風焼き鳥 サテ・アヤム」より)
配属先の少年院で食べた思い出のスープです。食堂のおばちゃんが作るこのスープは絶品で、職員も生徒も大好きな一品でした。(ベリーズの「トロトロオクラ入り魚のココナッツスープ」より)
それぞれ任国への「愛が詰まった1冊」。読んでいるだけでも、各国の食卓や暮らしを感じることができ、楽しくなってきます。
本の企画進行などの中心となった青年海外協力隊大阪府OBOG会の佐藤省吾さんは、取材に対し「『料理はちょっと作るのは苦手だな』という方でも楽しんでいただける内容になっています」と話します。
レシピの中には、「鳥一匹」や「材料8人分」など、日本のレシピではなかなかお目にかかれない材料や分量も。
佐藤さんは「独特な調理道具の使い方など、普段やらないような手順は面白いと思います」とも語りました。
冠婚葬祭の前夜から、夜通しかけて準備。思い出の味
佐藤さんは2015年にボツワナに赴任。コンピューター技術を伝える活動に従事しました。
本書では2019年度に派遣された隊員が、ボツワナの伝統料理「セスワ」を紹介しています。
佐藤さんもボツワナで活動している際によく食べた料理だそうで、どんなものか聞いてみました。
セスワは、「牛肉を長時間煮込んで棒で叩いてホロホロにしたもので『コンビーフ』に近いイメージの料理」。
肉は牛肉を使うことが多いですが、ヒツジやヤギ、鶏を使うこともあるといいます。
冠婚葬祭や大きなイベントで頻繁に出され、結婚式やお葬式では多くの人に提供するため、なんと前の晩から牛を解体し、夜通しかけて準備されるとのこと。
佐藤さんにとっては「大好きなボツワナ料理の一つ」なんだとか。
レシピ本『くらして初めて知った(ど)ローカルごはんー日本で作れる世界のレシピとお話ー』(102ページ、定価税別500円)は、Amazonから購入できます。
レシピ本の利益は、国連の関連団体への寄付が予定されています。