「大阪市廃止・特別区設置」いわゆる「都構想」をめぐり、11月1日、大阪市で住民投票が実施されます。
「そもそも『都構想』って何?大阪都になるの?」「何が変わる?」ーー。
大学生たちが、そのような疑問に対して、一つ一つインフォグラフィックなどを使って解説し、Instagramやウェブサイトで発信をしています。
そこにあるのは「政治に関心を持ってほしい」「若者に投票してほしい」という思い。
U30世代に向けて、政治や社会問題に関する情報を発信する「NO YOUTH NO JAPAN」(@noyouth_nojapan)のメンバーに話を聞きました。
「NO YOUTH NO JAPAN」は大学生を中心に活動する団体。いわゆる「都構想」に関する疑問に答え、争点などを説明するのは、京阪神に住むメンバーの大学生たちです。
大学生10人にデザイナーが加わって「住民投票の教科書」を作成しました。
政令指定都市の大阪市を廃止し、4つの特別区に分けるという「都構想」。
10月23〜25日に共同通信が実施した電話世論調査によると、都構想への賛成は43.3%、反対は43.6%で賛否は拮抗しています。
これからの大阪を決めるのは、有権者が投じる1票1票。
「NO YOUTH NO JAPAN」は、まずは都構想について理解してもらい、投票に行ってもらおうと、プロジェクトを「CHOICE OF OSAKA」と呼び、若者に向けて発信しています。
「分からないことを説明するのが政治家なのに…」
「CHOICE OF OSAKA」のプロジェクトリーダーを務める、宮坂奈津さんと高槻祐圭さんは、このプロジェクトに取り組む中で、実際に賛成派・反対派双方の演説にも足を運びました。
その際、演説をしている人たちから出た言葉は「分からないなら賛成に入れて」「分からないなら反対に入れて」。
「分からないことを説明するのが政治家なのに…」、演説で聞いたその言葉に衝撃を受けたといいます。
「分からないなら、知ってほしい」、そのような思いで発信を続けています。
「43.1%」。どうにかしたかった、この数字
2015年5月17日に行われた前回の都構想についての住民投票の投票率について、大阪市は年齢別のデータを公表しています。
そのデータによると、20歳以上24歳以下の年齢層の投票率が最も低く、43.1%でした。
20代後半の投票率も46.7%で、いずれも半数以下となっています。
20代全体で住民投票を棄権した人数は、なんと15万人にも上ります。
宮坂さんは「(結果は)未来に長く生きる人たちに一番影響があるのに、これでいいの?」と問いかけます。
「若者に投票してほしい」、そう思う一方で、調べてみると実は複雑だった都構想の争点。「複雑で煩雑なシステムをわかりやすく説明して、投票にいこうと思ってもらえたら」という思いから、このプロジェクトが始まりました。
縦長画像で届ける「都構想の争点」
メインの発信場所は、多くの若者に使われているInstagram。選挙の時だけでなく、「NO YOUTH NO JAPAN」は日頃から、毎月テーマを決めてあらゆる社会問題を発信しており、フォロワーは4万8000人(10月31日現在)にも上ります。
その他、Twitterや「CHOICE OF OSAKA」の特設ウェブサイトで発信をしています。今回の住民投票は特に、投票権を持つ人が大阪市に住む18歳以上に限られているため、フォロワー以外にも届くウェブサイトや、拡散力があるTwitterでの発信にも力をいれました。
「大阪都構想、ココだけおさえる!」「もっと知りたい!」など、基本情報からさらに詳細な争点まで、行政や新聞などの情報をもとに説明しています。
Instagramでは「ストーリー」でも投稿をするために、画像はスマホ画面に合わせた縦長型。ウェブサイトでも、縦長画像を左にスライドして、より詳細な説明が見られる仕組みになっています。
また、「住民投票の結果によっては、大阪都になるの?」という疑問もよくありますが、今回の住民投票の結果で「大阪都」になることはありません。
市によると特別区が設置された場合、法令の適用上、都とみなされることになりますが、名称は現在と同じ「大阪府」のまま。「大阪都」となるためには、別に法律で定める必要があります。
投票前に「悩む」、その過程が大切
高槻さんは、若者の政治参加についてこう語ります。
「投票するとしても、(どちらに入れるか)悩むと思います。でも、『悩む』という過程が大切だと考えます。自分なりに考えて投票することで、(政治やその選択に対して)責任を感じるようになると思うんです」
これまで「分からない」を理由に投票を棄権していた若者に、「悩んで、そして自分の意思で投票してほしい」と呼びかけます。
「NO YOUTH NO JAPAN」は、活動を通して、若者に社会問題や政治について「興味をもってもらうこと」や「考え、行動してもらうこと」を目的に活動していて、選挙や住民投票についても、誰かの側に有利になるような発信はしないよう心がけているといいます。
情報のソースは行政のデータやウェブサイトなどが中心ですが、今回の都構想では、市が都構想を実現しようと取り組んでいる立場にあります。
そのため、宮坂さんは、行政のウェブサイトなどを情報源として「中立に発信することに難しさを感じた」と話します。
あくまで、有権者に情報を届け、投票に向けて考えてもらう「材料」としてもらうため、チェック体制なども慎重にして、投稿が中立であることに気を配ったといいます。
大阪大学・豊中キャンパスと立命館大学・大阪いばらきキャンパスの食堂で提供し、食堂内には、都構想や住民投票について説明したパンフレットも置きました。
「投票前、とりあえずこれだけ見ていって!」
CHOICE OF OSAKAでは、住民投票前日、投票当日に「駆け込み」でも基本情報が得られるように、ウェブサイトに情報を掲載しています。
初めて投票へ行くという人には「当日の投票の流れ」、とりあえず投票前に知識を得たい人には「投票直前!これだけ見れば大丈夫!」が用意されています。
11月1日の住民投票は午前7時から午後8時まで。
投票所の場所などは大阪市の住民投票に関するウェブサイトから確認できます。
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