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通学中に電車で痴漢にあう子どもたち、どうすれば助けられる?周りの大人ができること

通学中、満員電車などで中学生や高校生も被害に遭う、痴漢。どのように抑止し、被害者を助けることができるでしょうか?痴漢抑止活動センター代表の松永弥生さんに話を聞きました。

満員電車などで、通学中の中高生の被害が絶えない、「痴漢」。

鉄道会社も車両内に防犯カメラを設置したり、警視庁も呼びかけの強化などを実施していますが、痴漢はなくなりません。

しかし、電車通学の子どもたちは毎日、混み合った電車で学校へと向かいます。

どうしたら子どもたちを痴漢から守ることができるのでしょうか。

痴漢から子どもたちを守る活動を続けてきた、痴漢抑止活動センター代表の松永弥生さんに話を聞きました。

もし痴漢被害を目撃したら、どう対応する?

松永さんは「周りの大人などは、変な動きを見たときに、アクションを起こしてほしい」と語ります。

痴漢が多く発生するのは、混み合う時間帯の電車など。もし車内で不審な動きを見かけたら、迷わず声をかけてほしいとします。

痴漢をした相手に何か言ったり、手をつかんだりすることが怖い時は、まずは咳払いをしたり、被害に遭っている人に「体調悪いんですか?」「どうしたの?」などと声をかけたりする方法もあると話します。

松永さんは、痴漢の被害者の約3割が10代の子どもであることなども指摘し、こう述べます。

「痴漢から子どもを守る、声をかけて助けるということは、あなたに出来ることだと知ってほしいです」

警視庁は、鉄道警察や各警察署の生活安全課に通報、相談することを呼びかけています。警視庁ウェブサイト上では、東京、新宿、上野、立川各駅の鉄道警察隊の分駐所の場所の地図も示されています。

痴漢の45%は「電車」で。痴漢の実態

痴漢は、いつ、どこで被害が出ているのでしょうか。

警視庁は生活安全総務課は、東京都内の痴漢(迷惑防止条例違反)の場所別検挙状況などをウェブサイト上で公表しています。

2020年8月更新の令和元年のデータでは、都内の痴漢の検挙の45%が「電車」でもっとも多く、次に「駅構内」が19%です。

その次に「店舗内」が10%、「路上」9%、「商業施設」2%、「その他(トイレ、更衣室など)」15%となっています。

また、痴漢の検挙状況の時間は朝7時や8時ごろが飛び抜けて多く、電車や駅構内で通勤・通学ラッシュを狙った時間帯の犯行であることが伺えます。

年齢別の被害状況は、2018年のデータでは「10代」が28.3%、「20代」が42.6%で、「30代」が11.3%と続きました。

被害抑止の対策は。大人にできること

松永さんは2015年から毎年、「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」を開催しています。

今年は国土交通省と文部科学省も後援につき、JR西日本も協賛しています。

コンテストでは全国の中高生・大学生が、「痴漢は犯罪」「泣き寝入りしません」などのメッセージが入った缶バッジのデザインを考え、優秀作品は商品化されます。

生徒らが着けやすいようなデザインになっていますが、周りの大人たちもかばんに着け、痴漢に対し「犯罪です」と伝えることも、抑止の一つの方法になるといいます。

実際に、通学かばんに着けて電車を利用した生徒からは、「バッジを着けてから痴漢されることがなくなった」「安心して通学できる」といった声が寄せられています。

これまでのコンテストで受賞した作品は商品化され、ネットショップで販売されています。

アニメーション動画を作って伝えたい

これまで、痴漢抑止の活動を続けてきた松永さんは、さらに多くの人々に痴漢被害について伝えるため、ある企画を始動しました。

痴漢への対策や痴漢発生の現状について伝える、アニメーション動画の作成です。

アニメーション動画の目的は、痴漢の実態について知ってもらうこと。

11月20日まで、クラウドファンディングで支援金を募りながら、クリエイターと協力して動画作成を進めています。

「どのような被害あるか知らず、これが痴漢か分からなかった」

松永さんは、痴漢抑止バッジの活動などを通して、多くの中学生や高校生からも話を聞いてきました。

被害に初めて遭った子どもたちからは、こんな言葉が聞かれたといいます。

「痴漢という言葉は知っているけど、どのような被害があるか知らなくて、(被害に遭った時)痴漢なのか分からずに声があげられなかった」

「本当に自分が被害に遭うとは思わなかった」

「どう対処したらいいか分からなかった」

松永さんはこのような生徒たちの声に対し、こう語ります。

「痴漢は、偶然のふりを装って触ったりしてきます。中には手を使わずに腰を何回も押し付けてくるなどの被害も発生しています」

「どのような痴漢被害があるか、また電車の入り口は痴漢に遭いやすいことなどを、『知っている』ということが、身を守ったり、助けを求められる助けになります」

動画では、痴漢被害の実態や、被害に遭った際の助けの求め方、周りにいる人が助ける方法などについてアニメーションで説明します。

一方で、動画を見ることで、被害に遭ったことがある人が、そのことを思い出したりしないよう、イラストを用いてリアルすぎないようにするなどの配慮もしています。

電車通学を始める親子、教員にも「見てほしい」

松永さんは、動画をきっかけに、教員など学校側にも痴漢被害の実態を知ってほしいと語ります。

「2018年秋に大阪府立高校全校を対象にアンケートを実施した時にも、教員から『痴漢被害がここまでひどいと知らなかった』という声が聞かれました」

「学校では、『短いスカートを履くのをやめなさい』などと生徒に忠告するなど、認識がずれた痴漢への対策も行われています。実態を知って、しっかりとした対策をしてほしいと思います」

また、動画は、家庭で痴漢や性犯罪について話すきっかけにもなります。

動画は、2021年春の公開を目指しています。

小学校や中学校、高校などに入学し、電車通学を始めるというタイミングで、「親子で動画を見て、電車での痴漢について知ってほしい」と話しました。