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「痴漢が日常的っておかしいです」「政府は本気で対策して」女子高校生たちが声をあげた理由

政府に「本気の痴漢対策」を求めるため、オンライン署名が立ち上がりました。中心になっているのは自身や友人が痴漢被害に遭った女子高校生や大学生。話を聞きました。

「痴漢なんてない世の中にしたい」「これまで『仕方ない』と言われてきた痴漢を本気で問題解決するために、皆さんのお力が必要です」ーー。

政府に「本気の痴漢対策」を求めるため、オンライン署名が立ち上がりました。

中心になっているのは、自身や友人が痴漢被害に遭ったことがある女子高校生や大学生です。

署名を立ち上げた思いを聞きました。

8月8日に立ち上がったオンライン署名「本気の痴漢対策を求めます!来学期からは #NoMoreChikan」には、すでに2万筆以上(8月25日午後5時時点)が集まっています。

署名を立ち上げたのは、社会問題について話し合ったり、各政党や政府に若者からの提言をしたりしている「日本若者協議会」に所属する高校生や大学生です。

痴漢撲滅に向けて様々な方面から解決策を講じてもらうため、署名は法務省、警視庁、国土交通省、内閣府、文部科学省にあてられ、要望書と共に提出される予定です。

署名では次の10の対策を求めています。

1・痴漢事件の実態調査を行う
2・痴漢報告後のプロセスを見直す
3・ワンストップ支援センターの増設と周知を行う
4・痴漢事件の迷惑防止条例での取り締まりを見直す
5・性犯罪についての充実した教育を行う
6・学校での痴漢ルール(被害に遭った際の対応など)を作成する
7・痴漢の加害者が再発防止プログラムを受けられるようにする
8・女性専用列車を増やす
9・省庁横断型の連絡協議会の設置
10・性被害を受けた時の対応をまとめた資料を各家庭に配る

「自分が明日、被害者になるかもしれない」

署名を立ち上げたきっかけは、署名運動の中心となっている芹ヶ野瑠奈さん(19)の友人が、痴漢被害を受けたことでした。

今年5月ごろ、芹ヶ野さんの友人が駅のエスカレーターで被害に遭い、加害者を追いかけましたが逃げられてしまいました。

友人はすぐに駅員に被害を申し出ましたが、被害を受けた場所はちょうど防犯カメラの死角となっている場所でした。

駅員は「映っていないから何もできない。いつも使っていない路線ではないし、被害届も出さなくていいのでは?」と言ったといいます。

友人から相談を受けた芹ヶ野さんは「痴漢被害は本当にたくさん日常的に起こっているのに、きちんと認識されていないように思います」「国による本気の対策が必要です」と話します。

今回、署名を立ち上げたメンバーの中には、痴漢被害に遭ったメンバーもいます。被害に遭ったことがないメンバーも「自分が明日、被害者になるかもしれない」。そのような危機感を持ち、署名を立ち上げました。

一般社団法人「痴漢抑止活動センター」によると、痴漢には、体を触られたりする被害のほか、衣服を切られる、卑猥な画像を見せられる、体液をかけられる、電車内が空いているのに密接してくる、カバンやポケットに使用済みの避妊具を入れるなど、様々な形の被害があります。

「痴漢かなと思ったけど、わからなくて被害を言い出せなかった」という被害者もいるため、痴漢について学校教育で教えたり、また「痴漢は犯罪であり、許されない」ということを伝えたりすることの必要性も強調します。

「根本から解決する必要がある」との思いから、署名では、痴漢加害者向けの再発防止プログラムの整備や省庁横断型の連絡協議会の設置なども提案しています。

性暴力やセクシュアル・ハラスメントに対して「声をあげた人」を支援するプラットフォーム「#WeToo Japan」は2019年1月、ハラスメント被害の実態について調べた調査結果を発表。(関東圏で暮らす15〜49歳の男女約1万2千人を対象)

調査結果によると、女性の70%、男性の32.2%が電車やバス、道路などの公共空間で、何らかのハラスメント被害を経験していました。また、痴漢被害に遭った人の約半数が「我慢した」と答えていました。

これらの結果からも、被害を駅員や警察に申し出ていない被害者も少なくないとみて、今回の署名では、国に痴漢被害の実態調査を行うことも求めています。

被害を見た周りの人、被害を知った教員の「対応も周知を」

署名の中心メンバーの阪本瞳さん(18)は、女子校に通う高校3年生。周りにも、登下校中の電車などで痴漢被害に遭った友人が多いといいます。

阪本さんは「痴漢が日常的に起こることに、慣れてしまっていることがおかしい」「そういう現状があまり問題化されていないこと自体も問題です」と話します。

「痴漢は、れっきとした社会問題である」ということを受け止め、痴漢被害が発生した時に周りにいる大人たちの対応も変えていく必要があると強調します。

阪本さんがそう話す背景には、登校途中での経験がありました。

ある日、阪本さんが電車に乗っていると、「この人、痴漢です」「一緒に駅員さんのところに行ってください」と声を上げた女子高校生がいました。

痴漢加害者とみられる人物を掴み、勇気を出して声をあげていましたが、周りにいる大人はしばらく傍観しているだけでした。

少しすると一人の女性が、駅員さんのところへ一緒に行くことを申し出ましたが、阪本さんは大人たちが即座に対応しなかったことにショックを受けました。

「急なことで戸惑ったという人もいるけど、自分には関係ないし仕事に行かないといけない…という人もいたのではないかと思います」

「痴漢被害を見た時に、どう対応すればいいかということも周知していく必要があると思います」

署名メンバーの友人が通学途中に痴漢被害に遭った後、登校して教員に相談したのに、そのまま追い返されたこともありました。

痴漢被害や対応に関する教員の知識が十分でないため、生徒が守られていない現状があるのです。

駅員や教員の適切な対応や、学校と警察・交通機関の連携強化を図ってもらうため、文部科学省や国土交通省も署名提出先に入っています。

(サムネイル:Getty image)