いわゆる「キラキラネーム」に悩んでいた山梨県に暮らす高校3年生の男性(18)が、甲府家庭裁判所に改名を申し立て、許可された。
改名前の男性は「王子様(おうじさま)」。親に愛を持って名付けられたが、男性は高校卒業という節目に手続きを進め、「肇(はじめ)」と名を変えた。
どうして改名に踏み切ったのか。今の思いは。
「王子様」という名は、母親がつけたという。
愛するがゆえに「私にとっての唯一無二、私の王子様」との意味を込めたそうだ。
名付けるとき、名付け親にはその子の幸せを願い、個性を尊重したいという思いがある。そして名には、時代によって流行がある。
1990年代以降に増えたのは、俗に「キラキラネーム」と呼ばれる名だ。
アニメのキャラクターの名に漢字を当てた名やカタカナだけの名、欧米的な名に漢字の当て字を振った名など、それ以前にはあまりなかった名が、そう呼ばれた。
知らない人にもバカにされた過去
とはいえ、みんな、そのような新しいスタイルの名を付けられた訳ではない。肇さんは、こう振り返る。
「自己紹介をしたら、名前を言った途端に吹き出され、知らない人にもバカにされました」
「辛かったです」
家族や友人には「王子」と親しみを込めて呼ばれていたが、嫌な思いをした経験は尽きなかった。
ある店で会員証を作った際には、店員に「本当に本名ですか?」と疑われ、口頭で何度も名前を確認された。傷ついた。
今後の人生を考えたうえで「このままではマズイと思い」、15歳の時に改名することを決めたという。
改名を打ち明けると両親は
日本では15歳になると、親の同意なしに改名を申請できる。
手続き方法を知った肇さんは、両親に改名したいという思いを打ち明けた。
父親は「お前の人生だから好きにしろ」と優しく後押しした。母親は嫌がったが、最後は自分に判断を委ねてくれた。
18歳になって申請書類に「肇」と記し、家庭裁判所に提出した。
ある僧侶から「人生を新たに始める」との思いを込めた「はじめ」という名前を貰い、経済学者の河上肇氏から「肇」の漢字を取ったという。いずれも尊敬する人々だ。
同じ境遇の人へのエールと自身のこれから
Twitterで改名を報告すると、3月9日午後7時現在、12万件以上リツイートされるなど、大きな反響があった。
「キラキラネームの十字架を背負ったみんなも希望を捨てないで」。そう思いも投稿し、改名を望む人を応援したいと強い気持ちを持つ。
「もし、名前で苦しんでいるのなら、勇気を出して行動してほしいです。改名することで人生が変わるかもしれません」
「親は、本当によく考えて子どもに名前をつけてあげてください」
今春には大学への進学を控える。福祉を専門とし、ボーカルを務めるバンドも継続していきたいという肇さんは「今は清々しい気持ちです」と語る。
「多くの人と関わっていく中で、円滑に関係が進めば良いなという期待を持っています」
なお、改名には正当な理由が必要だ。
裁判所の規定によれば「名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合」のみ認められ、不便な経験などの理由の記載を求められる。