路上生活も経験した青年の人生を変え、映画化されるまで有名になった一匹の猫について、あなたは知っていますか…?
この冬、あるイギリス人男性と猫について書かれた本が出版されました。
ミュージシャンを夢見て、ロンドンで路上演奏で生計を立てていたジェームズは、2007年の春に迷い猫のボブと出会いました。
音楽活動がうまくいかず薬物依存症に苦しみ、生きる希望を失っていたジェームズですが、ボブと一緒に暮らすようになって人生が変化していきます。
ボブと生きていくために、ホームレスの自立を支援する雑誌『ビッグイシュー(BIG ISSUE)』の販売者の仕事に励み、経済的にも安定することを目指します。
違法薬物を断ち、依存症を克服することができました。
ジェームズとボブが一緒に路上演奏をしたり、ハイタッチする姿が通行人の話題になり、一躍有名に。
2012年にジェームズが、『ボブという名のストリート・キャット』を出版すると、大反響を呼びました。
日本を含む30カ国以上で翻訳され、続編も合わせ累計1000万部を超える、世界的なベストセラーになり、映画化もされています。
この冬、シリーズ完結作の『ボブが遺してくれた最高のギフト』(辰巳出版)が日本語で出版されました。
タイトルにも「遺してくれた」とあるように、ボブは2020年6月に死んでしまいました。
本書の中で、ジェームズはボブとの出会いについてこう綴っています。
《ボブは、大げさでなくぼくの命の恩人といっていい。六年前に出会った時は野良猫で、ロンドン北部のぼくのアパートメントの廊下に怪我をした状態で丸まっていた。この出会いが、問題の多かったぼくの人生のターニングポイントになった》
真冬に暖房代に事欠く日々を送りながら、ボブとともに再起を図っていきます。
100点満点以上のボブとのクリスマス
かつては「ヘロインに完全に支配」され、生き延びるために軽犯罪に走ったことも。
極寒の路上で過ごすクリスマスイブーー。
路上生活者向けに提供された食事にどうにかありつくと、夜にはシェルターでドラッグを打つのです。
そんな荒んだクリスマスは、ボブのおかげで180度変わりました。
《ソファで丸くなり、ぼくが新しいビデオゲームをしている横でボブはいびきをかいて寝ていた。世界中で、大勢の人たちが自分たちの思い描く理想のクリスマスを過ごしているのだろう》
《ぼくたちの理想はこれだ。1から100で満足度を測るとしたら、ボブとぼくの満足度は101だった》
路上から始まったストーリー。12月は「日本の路上」で購入できる
『ボブが遺してくれた最高のギフト』は全国の書店のほか、日本のビッグイシューの販売者により「路上」でも販売されています。
路上で販売するのは12月限定で計750冊。1冊売るごとに、定価1760円の半額が販売者の収入になります。
ビッグイシュー日本によると、5冊販売すれば4000円の収入になり、数日間は温かい場所で寝食ができるようになるということです。
ビッグイシュー販売者として経済的な自立を果たしたジェームズとボブの物語が、日本のビッグイシュー販売者により「路上」で販売される。
そんな縁について、ビッグイシュー日本の佐野未来さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう語ります。
「ジェームズとボブの話は私たちにとって、とても身近なものです。ビッグイシュー販売に励む中でお客様に支えられ、自身の生活だけでなく、他者への感謝や愛情をも取り戻していく様子をぜひ本で知ってほしいです。多くの方に手にとって頂ければと思います」
全国のビッグイシュー販売場所は、ビッグイシュー日本のウェブサイトから確認できます。