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「日本で生まれ育った子どもたち」も強制送還になる恐れ。大学生たちが、ある法案を「許してはいけない」と話す理由

政府が再提出予定の「入管法改正案」をめぐり、若者たちが反対の声をあげています。大学生らが中心となり、国会前で毎週、抗議の座り込みをしています。

政府が入管難民法の「改正案」を国会に再提出する構えを見せていることに対し、若者たちが反対の声をあげている。

法案が通れば、難民申請中でも強制送還ができるようになる可能性があることなどを問題視し、大学生が中心となって国会前で毎週、抗議活動をしている。

「これは日本社会の問題。他人事ではない」

「難民を強制送還するな」「入管法改悪ダメ!」と書かれたプラカードを持って、大学生の有志たちは毎週金曜日の夜、国会前で抗議の声を上げている。

中心となっているのは、入管の収容施設で面会活動などを行ったり、難民支援に携わったりしている大学生たちだ。

普段はそれぞれの団体で活動する学生たちが、市民団体「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」として連携し、抗議活動を主宰している。

初回の1月27日の抗議には、大学生に加え、難民支援などを行う幅広い年代の人々が参加し、約70人が国会前に集った。

抗議の中心メンバーの一人の宮島ヨハナさん(国際基督教大学2年)はマイクを握り、こう訴えた。

「親に在留資格がない子どもたちは、日本で生まれ育っていたとしても、健康保険にも入れず、就労許可がないためにアルバイトで働くこともできません。親が入管施設に収容されると、引き離されてしまいます」

「これは外国人の問題で自分には関係ない問題だと思う方もいるかもしれません。しかし、これは日本社会の問題です。他人事ではないと思います」

2年前に廃案になった法案。問題点は

入管法改正案は日本の難民受け入れや入管施設への収容に大きな影響を与える可能性があるとして市民の強い反発を受け、2021年に廃案となっていた。

廃案になった前回の法案では、国に帰れない理由があったとしても強制送還を拒むと刑事罰の対象となりうる、いわゆる「送還忌避罪」(退去強制拒否罪)の新設や、難民申請の回数に上限を設け、3回目以降は強制送還の対象にするなどの内容が含まれていた。

再提出される法案の内容はまだ明らかになっていないが、前回提出された法案の修正案と似た内容になる見通しだ。

入管は複数回にわたり難民申請をする人を「濫用者」と捉え、強制送還の対象にしようとしているが、日本の難民認定率は例年1%以下などで、諸外国と比べて著しく低い。

斎藤健法相は法案について2月10日の会見で、「速やかに手続を終了させて、提出まで持って行きたい」と話している。

「日本で生まれ育った子どもたち」も強制送還になる恐れ。「許してはいけない」語った思い

国会前の抗議に先立ち、中心メンバーの大学生らは、難民申請中の外国人らと共に都内で1月25日、会見を開いた。

会見では、東京出入国在留管理局や茨城県牛久市にある東日本入国管理センターの収容施設で面会活動を行う学生たちが、法案に反対する思いや、難民申請中の人たちが置かれる厳しい状況などについて語った。

降旗恵梨さん(立教大学3年)は「そもそも日本は国際基準に基づいて難民認定をしていない」と指摘し、こう話した。

「私たちと同じように日本で生まれ育った子どもでも、親が難民申請中などで、生まれたときから在留資格が認められていない人がいます。帰国できない事情に耳を傾けず、強制的に送還してしまうようなことは許されません」

「収容期限の上限がない、いつここから出られるかわからないという長期収容の状態で心身がボロボロになっている人たちが多くいます。今でさえ深刻な人権侵害が起きている中で、さらに状況を悪化させてしまう改悪法案を許してはいけません」

日本に難民として逃れてきている人たちは、紛争や、出身国での宗教・人種問題での迫害を理由に助けを求めてきている。

物心つかないうちに親に連れられて来日した子もいれば、日本で生まれた子どもたちもたくさんいる。それらの子どもたちの多くは、難民申請が認められずに在留資格がないまま生活している状態だ。

入管法改正法で複数回申請に上限を定めて強制送還を可能にすれば、そのような子どもたちも送還後に危険にさらされることとなる。

加納茜さん(上智大学3年)は、出身国への送還を拒んでいる人たちという意味で政府が使う「送還忌避者」という言葉についても、こう指摘した。

「政府が言う『送還忌避者』という人たちの多くが難民であったり、国に帰ると危険な状況に置かれていたりするなど、国に帰れない事情を抱える人たちです」

「帰れない事情というものを見ないようにして、3回以上難民申請をした人を強制送還の対象にしてしまうような制度を作る、入管の体質に反対していかなければいけない」

「入管で面会する被収容者は心身ともに蝕まれていて、『動物のようにしか扱われない』という声もよく聞きます。国民として、一学生として、私たちが主権をもっているということを自覚して、アクションを起こしていきたいです」

岸田文雄首相や斎藤健法相に宛てたオンライン署名も集めており、2月13日現在で1万9千筆以上が集まっている。