毎年、世界でどれくらいの食品が捨てられているか、知っていますか?
食品廃棄物には、人が食べられる食品ではなく、製造や加工過程で出る、骨や野菜の芯や外葉など、飼料になるようなものも含まれています。
「食品ロス」と聞いて想像するのは、スーパーやコンビニでの売れ残りなどかもしれません。その他に、家庭内での食べ残しや期限切れでの破棄などがあります。
これだけの食品が捨てられているのに、世界、そして日本にも、貧困のために十分な食べ物が得られていない人が多くいます。
発展途上国を中心に、飢えや栄養不良で苦しんでいる人は約8億人。
日本でも、十分なごはんを自宅で食べられない子どもたちが存在します。
「相対的貧困」に置かれた子どもの数は、7人に1人と言われていて、「子ども食堂」や「子ども宅食」などの活動が広がっています。
食品関連の企業ができることは
どのようにすれば、この問題は解決されるのでしょうか?
実はこの問題、政府や消費者一人一人の努力はもちろんのこと、食品メーカーや小売業者の取り組みがとても重要なのです。
農林水産省・環境省の2016年度推計によると、食べられない部分の食品廃棄物2759万トンのうち、1970万トンは食品関連事業者が出しています。
可食部分である「食品ロス」になると、一般家庭が排出する割合が多くなり、全体の643万トンのうち、事業者は352万トンです。
2030年までに食品廃棄物を「半減」
この状況をどうにかしようと、アメリカのシンクタンク「世界資源研究所」(WRI)が各国の食品関連企業と協力して、食品廃棄を削減するプロジェクトを立ち上げました。
その名も「10×20×30」。世界の大手小売業10社、それぞれのサプライヤー20社と共に、2030年までに主要サプライヤーの食品廃棄物の半減に取り組むというものです。
世界全体では200社がこのプロジェクトに加わります。参加する大手小売業の多くはIKEAやWalmart、TESCOなどの欧米の企業ですが、アジアからは日本のイオンが挑戦します。
世界からはIKEAやWalmart、TESCOなど11社が参加します。
イオンが協力するサプライヤーは、キユーピーや味の素、伊藤園、日清食品など21社。
各社は今後、食品や飲料を製造する過程で出ている食品廃棄物の半減に取り組みます。
12月11日には都内で、イオンや同社に協力するサプライヤー21社が「10×20×30」日本プロジェクトの始動会見を開きました。
イオンはこれまでも食品廃棄物の削減に取り組んでいましたが、今後は21社とともに、2030年をゴールに食品廃棄物の半減を目指します。
会見でイオンの三宅香執行役は、「食品の3分の1が廃棄されている、この現状をなんとかしなければならない」と決意を表明。
約10年で、廃棄量の把握や削減方法などについて、WRIと協議しながら模索していく、と説明しました。
現段階で詳細は決まっていませんが、イギリスの小売大手TESCOがWRIと共に一足先に、参加企業のモデルとなる取り組みを始めているため、データ収集や削減実践など、同社を参考にして行われます。
会見には、サプライヤー参加するキユーピーの森佳光執行役員も登壇し、同社の取り組みと課題について話しました。
森氏によると、マヨネーズの製造過程では大量の卵を使いますが、卵の殻で土壌改良剤を作り、水田に肥料として撒くと、コメの収量が増えるなどの効果があったということです。
また、惣菜やカット野菜の製造では、キャベツの外葉や芯の部分が残るため、乳牛の飼料などにしています。
森氏は「一企業で取り組めることには限りがあると考えているので、皆さんと連携して進めていくことが大事だと感じています」と話しました。
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