横浜市がWeWorkと提携。国内初となる自治体との協力でねらうもの

    横浜市とコミュニティ型ワークスペースWeWork(ウィーワーク)が連携を発表。地方自治体として、働き方改革、スタートアップ・中小ビジネス支援、積極的な企業誘致を協力して行う予定だ。

    横浜市は8月14日(水)、コミュニティ型ワークスペースを提供するWeWork Japanとの連携・協力に関する覚書を締結、発表した。

    行政がWeWorkをプロモーションの場として利用する事例はあったが、自治体との連携は今回が初めてとなる。

    WeWorkは28の国と地域で105都市のコワーキングスペースを運営しており、活発なコミュニティと充実した設備で人気を集めている。

    国内では2018年に東京・六本木拠点が最初にオープンし、現在は5都市に20拠点を持つ。

    横浜の「WeWorkオーシャンゲートみなとみらい」は昨年11月に国内最大級拠点としてオープンした。4フロアのスペースには2800のデスクがあり、様々な規模の企業やフリーランサーが利用している。

    いま、横浜市がコワーキングスペースの黒船と組む理由とは何か。

    横浜市が狙うのは、中小ビジネスの活性、働き方改革、企業誘致

    今回の提携の内容としては、大きく以下の5つの柱がある。

    (1)横浜市とWeWorkコミュニティを通じて、新たなイノベーションを創出するスタートアップの支援
    (2)市内のオープンイノベーション・プラットフォームとの協力による新たなビジネス創出・中小企業のチャレンジ支援
    (3)健康経営のさらなる推進、女性の活躍推進
    (4)横浜への企業誘致等を目的とした国内外での連携
    (5)その他、相互に有益なビジネス機会を創出するための情報交換、交流の促進

    横浜市経済局長の林琢己氏は、今回の提携の背景にWeWork Japanとの「意気投合」があったと語る。

    「WeWorkが持つ世界規模のネットワークが自治体にとって貴重な資源であるのはもちろん、そのネットワークを通じて人や企業との交流を重視する価値に大きく共感したというのがあります」

    発表会では、横浜市の具体的なねらいについても言及した。

    東京オリンピックを見据え、横浜市を都内企業のサテライト拠点として利用することや、市内のスタートアップ拠点との連携による、中小規模ビジネスの支援がその例だ。

    また、市としての積極的な企業誘致についても連携していくという。これには現在みなとみらい地区に相次いで進出している大企業の研究開発拠点や、海外企業の誘致も含まれる。

    実際、ニューヨークのWeWorkでは日本進出を狙う企業向けに横浜市をアピールするイベントがすでに開かれている。

    「横浜のWeWorkは現在、ベトナムやフランスの企業の日本進出の受け皿として活躍しています。特に海外企業はまずは小規模で事業を始める事が多いので、その点の貢献は大きいです。

    横浜市による企業誘致の助成制度も充実していきますし、いろいろな面でウィンウィンの関係で共に発展できればと思っています」

    もはや「コワーキングスペース=スタートアップのためのもの」ではない

    WeWork Japan副社長の髙橋正巳氏は同社のミッションについて、企業の規模にとらわれない、コミュニティ内のコラボレーションの重要性を強調した。

    「日本でのミッションは、スタートアップから大企業までの様々な会社がコラボレーションを通してイノベーションを生み出すこと。そのためにも協働しやすいスペースづくりや交流イベントの企画運営をしています」

    広報担当者によると、グローバルでは入居者の4割が大企業だという。リモートワークやサテライトオフィスとしての活用のほか、WeWorkが持つコミュニティに価値を見出し入居するケースもある。

    「大企業の一部署、例えばデジタルや新規事業部などに外部との交流を促すため、WeWorkを利用する企業もあります。製品のプロトタイプへのフィードバックを集めやすいなどのメリットも注目されています。

    スタートアップも大企業も、その規模の会社では出会えないような人と出会うこと、さらにそこで生まれるコラボレーションのチャンスが魅力のひとつになっているようです」