ひょっとしたら生命いるかも? 東大などの研究チーム、火山活動の可能性がある太陽系外惑星を発見→科学者が注目するユニークな特徴とは

    活発な火山活動の結果として、大気があり、その表面には、液体の水が存在する可能性があるそうです。つまり……!

    NASA(アメリカ航空宇宙局)は5月18日、カナダのモントリオール大学や東京大学などによる国際共同研究チームによって、地球サイズの新たな太陽系外惑星が発見されたとサイトで報告しました(5月18日のエントリ)。東京大学も同様の発表をしています

    観測の結果、この惑星は星全体が火山に覆われている可能性があり、さらにもしも活発な火山活動が起こっているのであれば、この惑星には大気があり、その表面には液体の水が存在する可能性もあるとのこと。

    もしも液体の水が存在するなら、生命が存在する可能性もあるとして大きな注目を集めています。

    発見された惑星の特徴は……?

    太陽系外惑星LP 791-18 dの想像図

    今回発見された太陽系外惑星は「LP 791-18 d」と名付けられました。地球から90光年ほどの位置にあり、地球よりも少しだけ大きく重い惑星です。

    南天の星座・コップ座にある、小さな赤色矮星(以下、主星)の周りを回っています。

    LP 791-18 dが属する恒星系の見取り図

    また惑星全体が火山に覆われており、活発な火山活動が起きている可能性がある点も特徴です。

    では、なぜそのように考えられるのでしょうか?

    潮汐加熱による火山活動の可能性?

    LP 791-18 dの外側には、もう一つ別の太陽系外惑星が回っていることが分かっています。その惑星は、大きさは地球の2.5倍ほど、重さは7倍以上もあります。

    この外側の惑星の重力の影響で、LP 791-18 dの軌道は楕円になっています。

    そのためLP 791-18 dは、主星に近づいたときには、その主星の重力によって大きく変形させられ、離れたときには、小さく変形させられます。

    このように惑星の形状が変化することで、内部では摩擦によって莫大な熱が発生します。これを「潮汐加熱」といい、このためLP 791-18 dの表面では惑星規模で活発な火山活動が引き起こされている可能性がある――というわけです。

    同様に、潮汐加熱によって活発な火山活動が引き起こされている例は私達の太陽系にもみられます。例えば、木星の衛星イオです。

    イオでは木星や周りの他の衛星による潮汐加熱によって太陽系でも最も活発な火山活動が引き起こされています。

    木星の衛星イオの画像


    もしかしたらLP 791-18 dには生命が存在するかもしれません

    そして、面白いのはここからです!

    LP 791-18 dはいつも主星に同じ面を向けて主星の周りを回っています。このような現象を「潮汐ロック」といいます。

    潮汐ロックはよくみられる現象で、例えば、普段私たちが見ている「月」も、いつも地球に同じ面を見せながら地球の周りを回っています。

    国際宇宙ステーションから撮られた月と地球の画像

    このように潮汐ロックされているために、LP 791-18 dには、常に主星の方を向いている「昼側の部分」と常に主星の反対側を向いている「夜側の部分」があります。当然、昼側の部分は温度が高く、夜側の部分は低くなります。

    また、LP 791-18 dには、活発な火山活動の結果として、大気が存在する可能性がありますが、その場合、昼側の部分は温度が高すぎるために水が液体の状態で存在することはできません。

    しかし夜側の部分では、温度がちょうどよい感じに下がるために水が液体の状態で存在できる可能性があるそうです。

    もし、表面に液体の水が存在しているならば、生命が存在する可能性があるかもしれません!

    NASAが運用する宇宙望遠鏡「TESS」のイラスト


    LP 791-18 dは宇宙生物学的にみても面白い!

    さらに、地球や地球以外における生命の起源を探る「宇宙生物学」の観点から見ても、LP 791-18 dは非常に興味深い太陽系外惑星です。

    宇宙生物学の大きな問題の一つに「生命に火山活動や地殻変動は必要か?」というものがあります。そのままだと地殻に固定されてしまう、生命にとって重要な物質――例えば炭素などを、火山活動や地殻変動がかき回してくれるためです。

    LP 791-18 dを研究することで、このような問題への解決のヒントがつかめるかもしれません。

    LP 791-18 dの外側の太陽系外惑星(LP 791-18 c)については、NASAのウェッブ宇宙望遠鏡による観測がすでに予定されています。

    ウェッブ宇宙望遠鏡はNASAが誇る最新鋭の宇宙望遠鏡。今後何が発見されるのか、いまからとても楽しみです!