ハワイ大学は6月28日、「かつて大きく膨れ上がった赤色巨星に飲み込まれ、爆死したはずの巨大ガス惑星がなぜか生き延びていることがわかった」との研究結果を発表しました。
普通に考えれば、赤色巨星に飲み込まれ、生きていられる惑星はまずあり得ません。一体なぜそのようなことが起こったと考えられるのか? この宇宙規模の壮大なミステリーについて、わかっていることを解説します。
赤色巨星に飲み込まれたのになぜ……?
今回のお話の主人公は巨大ガス惑星「Halla」です。地球から532光年ほど離れたところにある、赤色巨星(以下、主星)の周りを回っています。
太陽の0.5倍~8倍ほどの質量の恒星は、年老いると中心部に水素の核融合のカスであるヘリウムが溜まり、塊が作られます。
こうなるとやがて核融合が起こる場所が中心からより外側へと移り、恒星は膨れ上がり赤みを帯びます。このような状態になった恒星を「赤色巨星」といいます。
私たちの太陽も約50億年後には赤色巨星になります。現在の大きさの100倍ほどの大きさにまで膨れ上がり、地球は飲み込まれてしまうと考えられています。
ただ、赤色巨星は一方的に膨れ上がっていくだけではありません。やがて中心部に溜まったヘリウムが核融合を始めると、今度は逆に縮みはじめます。
今回、研究チームは、NASAが運用する宇宙望遠鏡「TESS」の観測データを使って、Hallaの主星が現在「中心部でヘリウムが核融合を起こしている段階」にあることを突き止めました。
つまり、Hallaの主星は、現在は縮んでしまっていますが、かつては大きく膨れ上がっていたということになります。
研究チームによれば、その大きさは最大で「0.7AU」の軌道半径まで達したと考えられるそうです。
「AU」というのは太陽から地球までの平均距離を指す単位。私たちの太陽系に置き換えると、水星(0.39AU)は完全に飲み込まれ、金星(0.72AU)に届くか届かないかくらいの大きさです。
さて、面白いのはここからです。
研究チームは、ハワイのケック天文台などの望遠鏡を使って、追加観測を行いました。するとHallaは、主星から「0.5AU」ほどのところを、93日の周期でほぼ円形の軌道を描きながら安定して回っていることが確認されました。
かつて主星は「0.7AU」の軌道半径まで膨れ上がりましたが、Hallaが回っているのは主星から「0.5AU」の距離……。
ということは?
そう、Hallaは、かつて主星に飲み込まれたはずの軌道を回っていることになります。
Hallaは一体どのようにして生き延びたのでしょうか?
考えられるシナリオは3つ!
まず考えられるのは「主星が縮んだ後に恒星系のもっと外側からHallaが移動してきた可能性」です。
しかし、研究チームによれば、赤色巨星の中心部でヘリウムが核融合している期間は短く、この可能性はまずないそうです。
次は「主星が白色矮星と連星であった場合」です。連星は意外に多く恒星の半分以上を占めると考えられています。
この場合、主星と白色矮星が膨張の途中で合体し、想定されるほどには主星が膨れ上がらなかった可能性があります。
最後の可能性も「主星が白色矮星と連星であった場合」です。
ただしこちらのケースでは、主星と白色矮星が激しく衝突。その結果、「飛び散ったガスとチリからHallaが新しく形成されたのではないか」というものです。
この場合、Hallaはまだ若く、第2世代の惑星ということになります。
いずれにしても、どのシナリオもまだ仮説の域を出ません。もしかしたら正解はもっと別なところにあるかもしれません。
もし、夏休みの自由研究のテーマでお悩みなら、このミステリーの解明に挑戦してみてはいかがでしょうか?
これからの研究の進展がとても楽しみです!