• unknownworldjp badge

「不思議な模様」は人類からのメッセージ。NASAの宇宙探査機エウロパ・クリッパーに搭載されるプレートの意味とは?

木星の衛星エウロパに、生命が存在するための条件がどれくらい整っているかを探査するNASAの宇宙探査機「エウロパ・クリッパー」。金属製プレートに刻まれたメッセージの内容を調べました。

地球外生命体を探すため、木星の衛星「エウロパ」へと旅立つ、アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機「エウロパ・クリッパー」。

その内部に搭載される、金属製のプレートの「不思議な模様」が話題を集めています。

木星の衛星エウロパに接近する宇宙探査機「エウロパ・クリッパー」の想像図

エウロパ・クリッパーは、10月にフロリダ州のケネディ宇宙センターからの打ち上げが予定されています。5年半かけて、約26億kmかなたにあるエウロパを探査します。

エウロパの表面は厚さ15〜25kmにもなる氷の層に覆われていますが、その下には広大な海が存在していると考えられています。エウロパの海の水量は、地球の海の2倍以上に及ぶ可能性があります。

エウロパの海は深さ60〜150kmほどと推定され、海底には熱水噴出孔が存在する可能性も指摘されています。エウロパ・クリッパーの目的は、エウロパの海が何らかの生命にとって住みやすい場所かを判断するために、物質の組成を研究することです。

NASA公式サイトによると、2030年4月に木星の周回軌道に入る予定。エウロパには50回近くも接近し、詳しく探査します。最接近時には25kmまで近づくそうです。

プレートに刻み込まれた不思議な模様の正体は?

NASAは3月8日、エウロパ・クリッパーに不思議な模様が刻み込まれたプレートを取り付けると発表しました

このプレートは「タンタル」という非常に固い金属で出来ており、大きさは18cm×28cmほどです。電子機器を収納する区画の開口部を塞ぐ位置に設置され、プレートの外側(宇宙空間側)の面に不思議な模様が刻まれています。

この模様は何を意味しているのでしょう?

実はこれ「水」という言葉の波形です。言語学者が世界中から集めた103の言語による「水」の発音の記録に基づいて刻まれており、もちろん日本語も含まれています

生命の存在に欠かせない「水」は地球とエウロパを繋ぐものであるという思いが込められているそうです。ちなみに放射状に広がった模様の中心にあるシンボルは、アメリカで「水」を意味する手話を表現しています。

260万人の名前を乗せて

プレートの内側(宇宙空間と反対側)の面(NASA/JPL-Caltech)

では、続いてプレートの内側(宇宙空間と反対側)の面を見てみましょう!

まず注目したいのは、プレートの中央に刻まれた木星系の中心を貫くボトルです。これは、NASAの「メッセージ・イン・ア・ボトル」キャンペーンを示しています。

このキャンペーンは、アメリカの著名な詩人エイダ・リモンさんの「神秘への賛歌:エウロパに捧げる詩」と一緒に「あなたの名前をエウロパに送ろう!」というものでした。世界中から260万人以上の名前が寄せられました。


こうして世界中から送られてきた名前は、10セント硬貨サイズのシリコン製マイクロチップに電子ビームを使って印字されます。その文字の線の幅はなんと人間の髪の毛の幅の1000分の1以下だそうです。

このマイクロチップはボトルの中心に飾られることになっています。なお、プレートに刻まれているエイダ・リモンさんの詩は本人の手書き。ボトルの下の方に見えています。

プレートについて詳しく解説したNASAの動画

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

「あらゆる生命体に必要不可欠な水で結ばれた絆のメッセージ」とNASAの責任者

プレートの内側の面には他にも、私たちが住む「天の川銀河」で私たちと通信可能な地球外文明の数を推定するためのドレイクの方程式や、 エウロパ・クリッパーの礎を築いた惑星科学者ロン・グリーリーさんの肖像画などが描かれています。

NASAによると、今回のプレートはエウロパと地球の海の共通点を念頭に置いてデザインされたそうです。

「プレートのメッセージやデザインには意味があふれている」と、NASA惑星科学部門の責任者ロリ・グレーズさんは声明で述べました。

「プレートには科学、技術、教育、芸術、数学など人類が宇宙に提供できるもので最高のものが組み合わされています。あらゆる生命体に必要不可欠な水で結ばれた絆のメッセージは、我々が探索に乗り出そうとしている神秘的な水の世界と地球とのつながりを完璧に表現しています」

宇宙に向けてメッセージを送り続けてきたNASA

NASAはこれまでにもこのように何度も宇宙に向けてメッセージを送ってきました。

パイオニア10号と11号に搭載された金属板

中でも有名なのは1972年と1973年に打ち上げられたNASAの宇宙探査機パイオニア10号・11号です。

これらの探査機に搭載された金属板には、地球外知的生命体のために、この探査機がどこから来たのかわかるように地球の位置情報や、人間の姿が描かれていました。  

ボイジャーのゴールデンレコードとそのカバー。

また、1977年に打ち上げられたボイジャー1号、2号にはゴールデンレコードが載せられていました。この金メッキされた銅製のアナログレコードには地球の生命や自然、文化などに関する音や画像が収録されていました。地球から地球外知的生命体に向けたメッセージです。

パイオニア10号・11号 はすでに運用を終了しましたが、ボイジャー1号、2号はまだ現役で星間空間を旅しています。

今回のエウロパ・クリッパーを初め、これらの探査機が載せたメッセージが地球外知的生命体に届く日が来ることを信じたいですね。

ボイジャー1号のイメージ画像(Caltech/NASA-JPL)