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「分身ロボット」で重度障がい者が接客するカフェ、アニメ「イヴの時間」とコラボ

「“ありがとう”と言うばかりになって、“ありがとう”と言われなくなると、“いつもごめんね”になっていく」

ロボットコミュニケーター(研究者)の吉藤オリィさんらが発表した「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」プロジェクト。

「分身」として、自分がいない場所の様子をカメラやマイクで把握したり、スピーカーで人と会話したり、「お茶を出す」など簡単な動作をしたりできるロボット『OriHime』を活用し、重度障がい者が接客などを担当する。

株式会社オリィ研究所と日本財団、一般社団法人分身ロボットコミュニケーション協会が協働する実験的なプロジェクトで、期間は11月26〜30日と12月3〜7日の合計10日間。東京都港区赤坂の日本財団ビル内にスペースを設置する。

10月4日、このプロジェクトが、あるアニメ作品とコラボすることが発表された。ウェブ上で2008年~2009年にかけて短編の連作として公開され、再生数が合計300万回を突破。2010年に劇場版が全国公開された『イヴの時間』だ。

「学生時代に観ていた、思い入れのある作品」

分身ロボットカフェ「DAWN」、あのアニメ作品とコラボ決定! クラウドファンディングを開始! そのアニメとは、こちら! https://t.co/3GA94GZHBD

一部ファンの間で高い評価を得る作品で、舞台は“未来、たぶん日本。”。「ロボットが実用化されて久しく、人間型ロボットが実用化されて間もない時代」に、アンドロイドであっても「家電」として取り扱われることが“常識”の世界だ。

必要以上にアンドロイドに入れ込む人々が“ドリ系”として社会問題化する中で、「人間とロボットを区別しない」というルールを掲げた奇妙な喫茶店「イヴの時間」を中心に、ストーリーが展開していく。

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制作は吉浦康裕(スタジオリッカ)と映像コンテンツプロダクション DIRECTIONS。

今回のコラボでは、コラボコーナーを設置。内装などが『イヴの時間』の作品を意識したものになるという。

分身ロボットカフェプロジェクトの発起人の一人であり、また今回のコラボを主導するオリィさんにとって「イヴの時間は学生時代に観ていた、思い入れのある作品」。実は「戦わないロボット作品が大好き」だと明かす。

「空気感がいいですよね。キャラクターももちろん魅力的ですが、『イヴの時間』というカフェそのものが主役。作中のカフェは天井の高さもあって完璧な再現はできないですが、作品に通じる“秘密基地感”が伝わるといいなと思います」

「ありがとう」って言う、「ありがとう」って言ってもらう

分身ロボットカフェプロジェクトの背景には、重度の身体障がいを持つ人でも、社会参画ができることを伝えたいという、オリィさんの想いがある。

「分身ロボット開発をする中で“働きたいけど働けない”と悩む当事者の方々と出会いました。開発したOriHimeによって“寝たきりでも働いている人がいる”といっても、具体的にどうしているのか、わかりにくいという問題がありました」

「今回、カフェで働く大きなOriHime-Dは、一種のアート作品でもあります。仕事とはなにか、生きるとはなにか。ロボットを使って代わりに働くということを、イメージしやすくなる」

「こういう未来を私たちは目指していますというビジョンを広め、老後や、寝たきりになった場合のその後の人生を考えてもらうのが狙いです」

実施に向けて、企業などからスポンサードを受ける他、10月4日からクラウドファンディングもスタートした。

「クラウドファンディングに関わることで“身体が動かなくても、心が自由ならなんでもできるし、働ける世界”を自分ごととして感じてほしい」(オリィさん)。

カフェは6席を予定しているため、10日間で想定される客数の上限は240人ほど。クラウドファンディングでは、入場予約チケットや、イヴの時間とのコラボチケットもリターンに設定されている。

「“ありがとう”って言う、“ありがとう”って言ってもらう。この当たり前な社会とのつながりから、働けないことで外れてしまうんです。“ありがとう”と言うばかりになって、“ありがとう”と言われなくなると、“いつもごめんね”になっていく」

「そのつらさはあまり意識されません。だから、難病などが理由で働きたいけど働けない人を、応援したいと思ってくれる人を、今回の分身カフェプロジェクトで可視化していきたいのです」

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