「突然抜かれてうまく状況を飲み込めない親知らず」と投稿された絵が話題です。
画家のSui Yumeshimaさん(@sui_yumeshima)がTwitterに投稿したところ、3万2千以上のリツイートと19万を超える「いいね」が集まるほどの注目を集めました。
リプライ欄には「元気にしてるかな私の親知らず…」「この表情…!大好き」と多くの声が寄せられています。
突然抜かれてうまく状況を飲み込めない親知らず
BuzzFeedはアメリカに住む投稿者さんに、お話を聞きました。
あまりにシュールすぎる絵と、状況を的確に表現した一文。絵を見つめていると、何だか笑いがこみ上げてきませんか?
描いた理由が気になったので尋ねてみると、「深い意味はなかった」と前置きした上で、「この親知らず(奥歯らしき歯)とこのコメントがセットになり、突然脳内に現れました。その鮮度を保ったまま、感覚的に投稿したんです」と説明します。
実はこの親知らずの絵、6月17日から1年半ぶりに日本で開催する個展のために制作した作品の一部なのだそう。
それがこちら↓親知らず、すごい小さいです...!

神秘的な雰囲気をまとった豪華な作品です。が、絵の右下をよ〜くみてみると噂の親知らずが.....。
この作品の完成間近、親知らずがいるスペースだけポッカリと空いてしまっていたのだといいます。
「何かがはいる気配はあったのですが、その時が来るまで何が描かれるのか、自分自身でも検討がついていなかったです」
「しかしそのスペースに取り掛かろうとしたその瞬間、稲妻に打たれたような衝撃で親知らずが現れたので、イメージを逃すまいと急いで描きました」
それにしても、なぜ突然「親知らず」が登場したのでしょうか。
Yumeshimaさんにモデルとなった歯の存在があったのか聞いてみたところ、ついこの間抜いた歯とのこと。
「矯正の際に、残された2本の親知らずを抜きましょうといわれたのがきっかけで抜歯をすることになったんです。他の2本は日本で抜き、かわいい歯を模したケースにいれられて持ち帰り、暫く愛でられました」
「しかし、現在私が住んでいるアメリカでは、全身麻酔をかけた大手術で抜歯をします。その麻酔から目覚めた時には、もう彼ら(親知らずたち)はいなくなっており、その姿をみることもなくそのまま捨てられてしまっていたのです」
「それがショックで、親知らずたちも私自身もお互い顔を合わせることもなく永遠に離れ離れとなってしまいました。その子たちが霊的なものになって私にコンタクトを測り、その無念を晴らそうとしていたのだろうと思っています」

再会を果たしたにもかかわらず、親知らずはどこか曇った表情をしています。
絵のなかにいる歯はどんな気持ちでいるのでしょうか...。想像を上回る返答がこちらです。
「すゑの露 もとのしづくや 世の中の おくれさきだつ ためしなるらむ」
なんとYumeshimaさん、新古今和歌集に収録される僧正遍昭の歌を感じ取ったようです。
「草木の先端の露と根元にしたたる雫は、遅かれ早かれ世の中のものは、いつか滅びゆくことの例であろうか」
そんな意味を持つこの歌は、まさに言葉をかわすことなく親知らずと別れた様子を表現しているのかもしれません。
反響には....
親知らずの気持ちに共感する人が多かったのか、今回の投稿には大きな反響が寄せられました。
「日々山にて細々と絵筆をとっていたので、歯のおかげでたくさんの方に作品をみていただく機会にもなりました。(絵の)歯と見てくださってる方々、どちらにも感謝しております」
「英語で親知らずはWisdom tooth、すなわち物事が判断できるようになった大人になる頃存在に気がつく歯だと言われることもあります」
「また、西洋ではTooth fairyがいたり呪術に歯を用いたりと、何かと歯には迷信めいた物語も存在していたり...。今回人々に気に入っていただけた(?)のもそういう不思議なパワーがあったのかもしれません」
歯とYumeshimaさん、それぞれの深い想いが詰まった作品であることが伝わってきました🦷
【個展】
場所:gallery hydrangea (https://twitter.com/AjisaiGallery)
日時:2021年6月17日〜27日 (火・水定休日)13時〜18時半(最終日17時まで)