「どうりでお腹いっぱいになるわけだ!」とんかつ屋の店長が、背中で訴えてきたこととは......?

    これは、食べに行って確かめたい!

    とんかつ屋さんがツイートした、店長の写真が話題です。

    奈良県奈良市に本店を構える、とんかつ店「まるかつ」(@marukatsunara)のアカウントから投稿されると、2万5千以上のリツイートと15万を超える「いいね」が集まるほどの反響がありました。

    リプライ欄でも、「ふふってなった笑」「東京から食べに行きます!」など、多くの声が寄せられています。

    話題になった写真がこちら。

    お客様が喜んでくれればと、ひそかに「厚切りロースかつ」のサイズを大きくして約1週間。

    どなたか気づいてくれるかなとドキドキしていたのに、だれも気づいてくれないので我慢できなくなった店長がついに決行した作戦がこちらです。

    厚切りロースかつのサイズが大きくなったことをお客さんに知ってもらうため、店長が背中で語りかけてきます。

    BuzzFeedは金子友則店長に話を聞きました。

    今回の背中を使ってのお知らせは、初めてではないんだとか。

    初めて背中でアピールしたのは、2018年だったそうです。

    「『えびフライ』の中身のえびのサイズを大きくしたことを背中に貼ってアピールしたことをきっかけに、その後も、通販サイトのオープンや生駒店(2号店)オープンなどの告知も背中にポスターを貼って行うなどしています」

    「いつも何か貼っているので、一つの『名物』のようになっています」

    う~ん、まるかつの記念すべき2号店がどこなのか、いつ発表しようかな?特にフォロワーさんにはまだ内緒にしておきたいし……

    Twitter: @marukatsunara

    反響のある張り紙の内容はお店の情報だけに限りません。お客さんの依頼を受けて地域のイベントを紹介することもあるんだとか。

    そんな名物の張り紙で今回宣伝したのは、スタッフの意見を元に実現した「厚切りロースかつの増量」。金子店長はこんな思いを語ります。

    「大きくしたことはお客様には黙っておこうとも思いました。しかし、我慢しきれないものの、ストレートな方法でお客さんにお知らせするのはなぜか悔しかったため、『背中ポスター』で告知させていただきました」

    「厚切りロースかつ」、どのくらい厚くなった?

    厚切りロースかつは10月25日頃から増量。180gだったかつは200gになりました。以前より20g大きくなっています。

    「『いつもの厚切りのときよりもおなかがいっぱいになった原因がわかった』、『せっかくだから久しぶり厚切りにしました』など、喜んでいただいていると感じています。同時に『経営も大変だろうから無理しないでね』など、ご心配いただく声もありました」

    お店が潰れかけていた数年前にTwitterをはじめ、県外からたくさんのお客さんが来店するようになり、お店が賑わうように。

    とはいえ、新型コロナウイルスによる打撃を受け、客足が減っていました。

    そんな中での今回の大反響に、金子店長は感謝しています。

    「緊急事態宣言も解除されて移動もしやすくなったこのタイミングで、このように多くの人に話題にしていただいて、少しでもお店に来ようと思ってもらえることは本当にありがたいです」

    「奈良公園や春日大社の紅葉も見頃ですし、奈良は観光名所の宝庫ですので、これをきっかけに県外の人にもぜひ遊びに来ていただきたいです」

    「無料食堂」

    「確かめに行きます!厚みを!」「いつも美味しいです!ありがとうございます〜」とコメントが寄せられるお店には、他にもお客さんを温かく迎えるシステムがあります。

    それが「無料食堂」です。

    無料食堂は2018年5月から始まりました。店員に相談すれば、いつでも・誰でも無料でご飯の提供を受けられるように。

    お店のウェブサイトには始めたきっかけが記されています。

    各地の「子ども食堂」の現実、孤食が原因のさまざまな社会問題などがあることなど、まだまだ浅いですが私なりに勉強しました。子どもだけではなく、大人、高齢者の貧困なども問題視されています。自助努力が足りないと切り捨てるほど社会はまだちゃんとは出来ていないはずです。

    どうにかしようと本当にたくさんの人が努力されています。こんな私でも、きっと何もしないよりはいいかもしれないと思いました。今ある社会のセーフティーネットで拾いきれないことが、無料食堂で拾えるかもしれませんし。

    金子さんは当時をこう振り返ります。

    「貧困で苦しんでいる家庭が多くあることを報道で知って、できる範囲で何かお役に立ちたいと思いました。無料で食べたいお客様が殺到したらどうしよう、お金を払って食事をしてくださるお客様がお怒りになったらどうしよう、などという心配もかなりしました。

    ですが、以前からお金がない人に『あるとき払い』でお弁当を提供していましたし、やってだめならやめればいいと考えて、勇気を出して始めました」

    開始から数年経った現在、どのような変化があったのでしょうか。

    「やはり利用される方は増えました。『コロナの影響で仕事が激減し、収入がほとんどなくなった』とおっしゃる方もいらっしゃいました。

    一時期はいたずらみたいなご利用が殺到して継続も難しくなるのでは、と心配しましたが、店長である私自身が主旨をしっかり説明してから提供するようにした今では落ち着いています」

    「(無料食堂の利用者からは)泣きながら『助かります』、『ありがとうございます』と言われたことも何度もあります。『数年ぶりの外食です』と喜んでくださるご家族などもありました。詳しい事情はあまり聞かないようにしているのですが、お話をしてくださる方もいらっしゃって、やはり世の中にはいろんな事情で困っていらっしゃる方がいるのだと認識させられました」

    開始から半年が過ぎたころには、金子さんはウェブサイトでこう綴っています。

    「無料食堂を『無料』とさせていただいたのには、シンプルな理由があります。それは、想像できない人も多いと思いますが、今、数十円すら払えない人もいる、ということです。もうさんざんお金で苦しんできた人が一瞬でもお金から解放されるための選択肢を提供させてもらっているつもりです。

    ~中略~

    「無料の代わりに働かせるべき」というご意見をいただくことも多いですが、お客様をお迎えしている飲食店として現実的には難しいことですし(ご本人の心情を考えても)、もし「働かざる者、喰うべからず」「お金がないなら我慢すべき」という価値観がベースにあるとすれば、むしろ、私たちが「働けなくても生きていきましょうよ」「お金がないことは尊厳とは別問題です」という逆のメッセージを発信する意味でも「無料」ということでいいのではないか、という結論にいつも達します。まだまだ思慮が浅いと思いますが、半年間、私なりにいろいろ勉強、経験させていただいた今のところの結論です。

    人のお腹だけでなく、心までも満たしてくれるお店「まるかつ」の紹介でした。