「1億円超は異常なまでに重い」プロ野球選手会、巨人・山口俊の処分に猛反発

    罰金、減俸に加えて複数年契約の見直しーー。これはあまりに重いのではないか。巨人とプロ野球選手会側との交渉が続く中、この日、大きな動きがあった。

    巨人 VS 選手会

    プロ野球・巨人の山口俊選手が暴行騒動を起こし「1億円以上」の高額な処分を受けた。

    この処分が妥当だったかどうかをめぐって、プロ野球選手会(嶋基宏会長)と巨人側が対立している。

    プロ野球選手会は10月11日、球団側が選手会側との団体交渉に、誠実に応じないとして、東京都労働委員会(都労委)に「不当労働行為の救済申立」をした。

    経緯

    7月11日未明、酒に酔ってケガをした山口選手は、都内の病院に向かい、そこで警備員と口論となった。警備員は山口選手に胸で押され、院内にあった机に体をぶつけ、全治2週間のケガを負ったというもの。

    山口選手はこれを球団に報告していなかった。巨人は一連の問題で、山口選手に罰金・減額処分に加え、複数年契約の見直しも求めた。

    選手会の主張

    選手会側は、山口選手の処分が「総額1億円以上」にのぼり、これは過去の不祥事処分と比べて「異常なまでに重い」と主張している。

    処分の再検討や、球団が山口選手とした契約見直しの撤回などを、巨人や日本野球機構側に求めてきた。

    だが、選手会側は今回、巨人やプロ野球機構側が交渉を一方的に打ち切り、選手と個別に交渉し、合理的な説明をしなかった……などとして、これらの対応が誠実交渉義務違反と、団体交渉拒否にあたるとした。

    申立では、処分や契約変更について球団・プロ野球機構が「客観的・具体的な資料を示して、合理的に説明するなど、誠実に対応すること」などを求めた。

    なお、選手会は、プロ野球選手の労働組合。企業は労働組合との交渉に誠実に応じる義務がある(労働組合法7条2号)。

    都労委は、組合側と企業側との紛争を中立的な立場から解決する組織。都労委がこの問題にどのような判断を下すのか、注目される。

    読売巨人軍広報部は、BuzzFeed Newsの取材に対し、「当球団のこれまでの対応に不当労働行為に該当する行為はないと考えています」とコメントした。

    山口投手の問題を選手会はどう受け止めているのか

    元プロ野球選手で、選手会事務局長を務める森忠仁氏が記者会見を前に、BuzzFeed Newsの単独取材に応じた。

    ——山口選手のイメージは「泥酔暴行」といった文字が躍る報道で、かなり悪い。巨人による罰金・減額も当然ではないか、と思われている。

    森事務局長:暴行という言葉から、殴った蹴ったというイメージが膨らんでいる部分がある。

    事実関係は巨人側の発表にもあるように、都内の病院の警備員を胸で押した、というものです。

    山口選手がお酒に酔って、犯してしまった行為に対しては、罰がなければいけないと思っています。

    私たちは事実関係そのものを争っているわけではありません。

    問題は、罰の重さです。

    ——罰金だけでなく、給料からの減額もカウントすれば、総額で1億円以上です。プロ野球界では、過去の刑事事件処分でも減俸2500万円、謹慎6ヶ月といった処分もありますが……

    過去の処分と比べても異常なまでに重い処分です。

    選手会としては、この処分の重さを問題視しています。

    さらに、巨人軍は山口選手と結んでいる複数年契約を見直すとしています。これも非常に大きな問題です。

    球団側の都合で選手の複数年契約を見直していいのでしょうか?

    それも山口選手はFAで移籍してきた選手です。日本球界では、7〜8シーズン活躍した活躍した一部の選手しか使えない制度です。

    選手として良い契約をとったのに、減額だけでなく複数年契約の見直しされる。

    これはさすがに、おかしいんじゃないかと選手会は主張しています。

    ——それはなぜですか?

    今回の処分を認めてしまうと、球団側が、一方的に複数年契約を打ち切れるという前例になってしまいます。

    FAで良い契約を取った選手が、見直しされるとなると、複数年契約を結ぶ意味がなくなります。

    日本球界はまだまだ選手よりも球団のほうが力関係が上です。

    今回の異常なまでに減額、罰金に加えて、このような形で、複数年契約の一方的な打ち切りを認められては、選手の立場はますます弱くなります。

    これは、山口選手ひとりの問題ではありません。選手会全体の問題だと私たちは受け止めています。