7月31日8時20分すぎ、事務所に姿をみせた鳥越俊太郎さん(76)は「準備不足もあったし、週刊誌からの選挙妨害に近い記事への影響もあったが、基本は私の力不足だった。申し訳ない」と敗戦の弁を述べた。
共同会見で質問できるのは、都政を取材する記者クラブ加盟社に限られた。
準備不足とは何をさすのか。
「最初は東京都政について、十分な政策は用意がなかった。ただし、数日のうちに政策、公約を示した。心の中に期するものがあった。準備不足は解消された。街頭演説を聞いていればわかったと思う。最初と最後ではだいぶ違う」
新しい都知事に何を望むのか。
「公約を実行してほしい。特に待機児童の問題、介護の問題だ。どうしても言いたいのは、小池さんが『核武装の選択はありえる』と述べていたことだ。このような発言をする人が、東京都知事になっていいのか」
訴えの中心にあった非核の問題に対して、強い言葉で批判した。
直前だった立候補
鳥越さんは告示日直前になって名乗りを上げ、民進党や共産党などによる野党統一候補に決まった。理由は「参院選の結果」を見たからだった。国政への批判をもとに都知事選立候補を決めた。
選挙戦には、日本のリベラル勢力を代表する若者、知識人、政治家が結集した。
7月14日、マイクを握ったのは奥田愛基さんだった。反安保法を訴えたSEALDs、市民連合の看板だ。SEALDsの活動は参院選で終わっており、「個人」として駆けつけた。
結節点は「反アベ政治」
市民連合の中心にいた中野晃一さん、山口二郎さんといった政治学者、作家の澤地久枝さんや鎌田慧さんといった往年のリベラル系知識人が次々とマイクを握る。
彼らは「反アベ政治」あるいは、自民党を中心にする改憲勢力が憲法改正を可能とする議席数を確保したことへの危機感を訴えた。
国政への危機感を訴え、批判票を集める。鳥越さんもそれに呼応するように脱原発、核兵器廃絶を軸にする「非核都市宣言」に重点を置いた演説をするようになった。街頭では待機児童ゼロも述べられたが、その道筋は具体性がないままだった。
最後まで「共闘」できなかった陣営
応援を取り付けられなかった有力者もいた。元日弁連会長の大物弁護士・宇都宮健児さんだ。
宇都宮さんは過去2回、都知事選に立候補し、事前に名乗りも上げていた。政策も練っていたが、野党勢力の結集を理由に、鳥越さんにその道を譲った。
しかし、期間中に鳥越さんのスキャンダルが報じられると、それを理由に宇都宮さんの応援は最後までなかった。
政策を引き継ぐはずだった、宇都宮さんとの共闘は最後まで果たせないままだった。
宇都宮さんについて問われた鳥越さんはこう述べた。
「宇都宮さんと一緒に行動できなかったのは、率直にいって残念だった。私は宇都宮さんの心は受け止めた」