【参院選】奥田愛基さんが着たシャツ そこからSEALDsの選挙戦略が見える

    「選挙のカルチャーを変えたい」

    参院選まで1ヶ月を切った6月17日。東京・外国特派員協会の会見場に、薄いブルーの半袖シャツを着た、奥田愛基さんが現れた。23歳、安保法制に反対した国会前デモの中心的人物であり、積極的に政治を語る「若者」として一躍注目を集めた。

    この夏の参院選に向けて、SEALDs(シールズ)などで作る「市民連合」は野党共闘を後押ししてきた。民進、共産、社民、生活の4野党と安保法廃止などの政策協定を結び、野党が候補者を一本化したほとんどの選挙区で推薦もする。

    市民連合の選挙戦略 こだわる見せ方

    参院選を前に、奥田さんは何を語るのか。国内外のメディアがその発言に注目し、会見場に集まった。この日、奥田さんが力をいれて語ったのは、市民連合が発信するメッセージの見せ方であり、「選挙戦略」だった。

    「野党共闘は珍しいかもしれないが、選挙のやり方は旧来のまま。僕はやり方から、カルチャーを変えたいと思っている」。奥田さんはそう切り出した。

    「争点を政治家が決めて、市民がそれに従うような選挙は古い。選挙に積極的に関わっていきたい。例えば(アメリカ大統領予備選の民主党候補)バーニー・サンダースは支持者と一緒に写った写真がホームページにある。日本の選挙でよく見る絵は政治家だけが写ったもの。今回の選挙は『私たちの選挙』なんだと言いたい」

    具体例としてあげたのが、4月、北海道5区であった衆院補選だ。市民連合は野党統一候補を支持した。自民党候補に敗れたが、約1万2000票差まで迫った。

    「一般的な選挙の絵は選挙カーに政治家が乗っているというもの。これだと政治家が上から説得するというような絵に見えてしまう。僕たちが提案したのはこれです。(低い台に登壇した候補者の周りを、支持者が囲む写真が映し出される)なるべく同じ目線で候補者がしゃべっている絵です」

    見え方、見せ方をキーワードに、奥田さんは言葉を強めていく。

    「デモをやってきたときから思っていたが、(ポスターなどの)色やフレーズが統一されていないことがある。僕からしたら、それはカッコ悪い。もっとどう見えたか気にしないといけない」

    「政党や広告代理店の発信で届く範囲は限られている。同じ目線で政治を語り、硬い言葉だけでなく、日常の感覚、言葉で語っていくことが大事だと思っている。選挙にただ勝つだけじゃなくて、選挙のカルチャー、政治のカルチャーごと変えようと思っています。どの政党が勝っても、国民のほうを見ないと意味がない」

    奥田さんのシャツ

    この日、着ていたシャツも「見せ方」の一環なのだろうか。胸ポケットを投票箱に見立て、投票する人の手、投票用紙がプリントされている。

    私は手をあげて、質問した。

    「シャツのポケット、デザインが面白いのですが、自分たちでデザインしたのですか」

    硬い表情が続いていた、奥田さんから笑顔がこぼれる。

    「このシャツなんですけど、SEALDsで作って渋谷とかインターネットでも販売しているんですよ。政治に対する距離が遠いので、日常の中からメッセージを伝えたい。このシャツはとりあえず選挙に行こうよ、というメッセージがあって……。みんなに着てもらえたらなぁと思って、着てきました」

    会見が終わり、奥田さんの目の前においたICレコーダーを取りに行った。奥田さんが「これ背中も……」と後ろを向き、プリントされたメッセージを見せてくれた。

    どこまでも見せ方に、メッセージの伝え方にこだわる。それが市民連合の「戦略」であり、彼らの流儀なのだろう。

    背中にはこう書かれていた。

    「DON’T TRASH YOUR VOTE」(あなたの一票を無駄にしないで)