プール飛び込み禁止は妥当か? 「なんでも禁止か」論に東京都が反論「生徒の命に関わるリスクがある」

    リスクと便益を比較すると……

    「飛び込みで生じるリスクが大きすぎる」

    今年7月、東京都立墨田工業高校の水泳の授業で、男子生徒がプールに飛び込んだ際、底に頭を打ち首の骨を折る重傷事故があった。生徒は胸から下が十分に動かせず、今もなおリハビリを続けている。

    東京都教委は、プール飛び込みを原則禁止とする措置を取ることを決めたが、これに対し、インターネット上で「なんでも禁止か」と批判的な声があがった。都教委の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、こう反論する。

    「批判的な声があることは知っている。しかし、水泳の飛び込みは、生徒の一生を変えてしまいかねない、あまりに大きなリスクがある」

    都教委は、都立高校などで原則として、水泳の授業で飛び込みを教えることを禁止する。「原則」としたのは、飛び込み自体は学習指導要領で禁止されていないためだ。担当課長の佐藤浩さんが語る。

    「まず、水泳の授業ですが、指導する教員が技術的に指導可能で、生徒も習熟しており、水深が十分確保されているプールなどと条件が整えば、事前に都教委が確認したうえで飛び込みを許可することもあります」

    水泳部の飛び込みも、安全面の確保を条件に認めるという。

    映画「ウォーターボーイズ」の影響で広まった男子のシンクロナイズドスイミングなどでも飛び込みは禁止される。

    「走り込んで飛び込みをするなど、危険な行為があるためです」

    原則禁止とするのは、水深が深いプールで授業をしていないというのも、大きな理由だ。生徒の重傷事故も水深約1メートルと浅かったために起きた事故だ。

    「浅い水深にしておかないと、水泳の授業で溺れる生徒がでてくることもあります。飛び込みのために水深を深くすれば安全面の確保はできますが、水泳が苦手な生徒には、別のリスクが発生します。そこを比較しないといけない」

    飛び込みのリスクと便益

    その上で、重視したのは水泳の教育目標だ。

    「大事なのは、正しい泳法で長く泳ぐことです。そのために、飛び込みは絶対に必要なことではありません。水中スタートで目標は達成できます」という。

    過去、1999年に飛び込みよる死亡事故が起きており、他にも重傷事故が起きているという事実を重視した。そして、すべての体育教員が水泳の指導に精通していないことも、また事実だ。

    佐藤さんは、ネット上の「なんでも禁止か」という冷笑的な反応に、リスクと得られる便益を比較すべきだと反論する。

    「重大な事故は、東京だけでなく全国各地で毎年繰り返されてきました。水泳の飛び込みは、生徒の命に関わるリスクがあります。それはあまりに大きい。飛び込みで得られる便益を考えると、原則禁止という措置は妥当だと思います」

    専門家からは賞賛の声

    英断だと思います。 今回の決断は、「なんでもかんでも禁止」という話ではありません。「なんでもか... - 都立学校、プール飛び込み原則禁止に 都教委が方針(朝日新聞デジタル) https://t.co/Q0gVU2CYj1 #YJnewsComment

    学校で起きるスポーツ事故に詳しく、プール飛び込み禁止を訴えてきた名古屋大の内田良准教授は自身のツイッターで「ついに行政が動いた」「英断だと思います」と都教委の対応を賞賛した。