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ノーベル賞式典欠席のボブ・ディラン 代役「パンクの女王」が日本で語りかけたこと

村上春樹さんとのコラボ、力強いパフォーマンス

ノーベル賞公式ツイッターは、ノーベル文学賞を受賞したミュージシャン、ボブ・ディランは欠席し、メッセージを代読すると発表した。それ以上のサプライズもあわせてツイートした。それがこちら。

Patti Smith will perform Bob Dylan’s A Hard Rain’s A-Gonna Fall at the #NobelPrize Award Ceremony 10 December.

アメリカのロックミュージシャンにして「パンクの女王」の異名を持つ、パティ・スミスがディランの「代役」として授賞式に出席し、ディラン初期の名曲「はげしい雨が降る」を歌うという。

パティ・スミス。1946年生まれ。ボブ・ディランやランボーの詩に憧れ、ニューヨークにでてくる。徐々に注目が高まり70年代のニューヨークパンクを牽引する存在になった。音楽だけでなく、詩を朗読するパフォーマンスも注目される。日本でも詩集が出版されるなど、詩人としての評価も高い。

パティ・スミスは、かつて自身のカバーアルバム「Twelve」のなかでディランの曲「 Changing of the Guards」をカバーしている。彼女はアルバムのなかで、その理由をこう記している。

(Changing of the Guardsを)聴いていると涙が流れた。(中略)ピカソと同じく、ボブ・ディランは、自身の芸術性と人間性がたゆまなく進化してゆく段階を惜しげもなくさらけ出してくれるアーティストなのだ。彼の曲にはよく涙が出るほど感動させられるが、それでも、私にはその理由がいまだによく分からない。

パティ・スミスはたびたび来日している。今年6月も来日し、アメリカの詩人でディランにも影響をあたえたと言われる詩人、アレン・ギンズバーグの詩や自作の詩を朗読するイベントも開いた。

ギンズバーグの新訳、そして彼女の詩を訳したのは、日本を代表する作家でノーベル文学賞の候補にも名前が挙がる村上春樹さん、翻訳家の柴田元幸さんだ。

日本で語る慰霊、そして平和

彼女は、広島や長崎、そして東日本大震災の被災地にも深い関心を寄せている。2003年の来日公演では広島や長崎の死者を忘れないように訴えながら、ギターの弦を引き抜くパフォーマンスを披露している(アルバム「Trampin’」小野島大さんのライナーノーツより)。

「この一本は平和のため、この一本は恐怖に打ち勝つため」と言いながら。

東日本大震災後に発表した2012年に発表したアルバム「Banga」のなかには「Fuji-San」という一曲が収録されている。声高に政治的な主張をする歌ではない。東日本大震災の犠牲者への追悼、祈りを込めた歌だ。

「パンクの女王」の異名とは少し違う印象があるかもしれない。単純なーあるいは形だけのー「反逆」ではなく、優しさと希望を込めた表現をみせる。

そんな彼女もまたディランと同じように「人間性がたゆまなく進化してゆく段階を惜しげもなくさらけ出してくれるアーティスト」なのかもしれない。

パティ・スミスが歌うことになる「はげしい雨が降る」。その詩のなかで、母は息子にどこに行き、何を見聞きしたかを問いかけ、息子は母にこたえる。

「1万人がしゃべっていたが、彼らは舌が切られていた」という光景や「どぶの中で死んだ詩人の歌」を聞いたことを。そして、彼が行った場所はどこでも、とても激しい雨が降っていた、と。

これまでの人生のなかで、母として子供を育て、大切な夫の死にも向き合ってきたパティ・スミスが、この曲をどう歌いあげるのか。本人欠席で盛り上がりにかけるとみられていた授賞式だったが、一転、世界中のロックファンの注目が集まる場所になった。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Satoru Ishidoに連絡する メールアドレス:Satoru.Ishido@buzzfeed.com.

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