「自民党との差はない」 北朝鮮ミサイル問題でみえた、民進党のリアリズム路線

    民主党政権の失敗から学んだ?前原誠司、枝野幸男の共通認識。

    両者が打ち出した明確なリアリズム

    北朝鮮が8月29日に発射し、北海道・襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に落下した新型の中距離とみられる弾道ミサイル。

    この日、外国特派員協会で開かれた民進党代表選の記者会見でも、北朝鮮への対応が話題になった。

    「野党であっても自民党に協力する」「自民党との差はない」

    前原誠司さん、枝野幸男さんの両候補が打ち出したのは、安全保障政策における明確なリアリズム路線だった。

    安全保障の論客・前原さんの主張

    民主党政権時代に外務大臣も務め、党内屈指の安全保障の論客として知られる前原さん。

    会見の冒頭は、当然のように北朝鮮問題への言及からはじめた。

    《北朝鮮のミサイル発射は許しがたい暴挙です。

    厳しく抗議するとともに、国連決議違反であり、国際社会と連携して北朝鮮に強いメッセージを送ることを、日本政府は行うべきです。 

    これは国益にかかわる問題であり、野党であっても、政府に対して協力するところは協力する。》

    野党なら対案を出す、というスタンスではなく安全保障は現実主義でいくという立場を鮮明にした。

    リベラル派と言われる枝野さんも……

    かつて官房長官を務めた枝野さんも。歩調をあわせるかのように北朝鮮問題からスピーチをはじめた。

    「リベラル派」と言われる枝野さんは、前原さんとの立場の違いを明確に示すのか?

    《北朝鮮による弾道ミサイル発射は、具体的な被害がないからいいとはいえない。挑発行為は東アジア、太平洋地域の安全への脅威であり、断固抗議すべきであります。

    挑発には、日米同盟を中心に関係諸国との連携を深め、我が国は専守防衛の範囲で、防衛力を高めていくなどして、毅然とした態度をとる。

    リアルな安全保障については、自民党と大きな差があるものではないということを、外国のメディアに知ってほしい。》

    と、こちらもきっぱりと言い切った。

    枝野さんは「我が国は、核拡散防止や平和構築という分野で、国際社会で大きな役割を果たしていく。こうした将来の方向性が、特にここ10年くらい自民党のなかで弱まっている。ここは明確な対抗軸を立てる」と付け加えたが、直面する北朝鮮問題に対して、基本的な路線で大きな違いを打ち出すことはしない。

    つまり、安全保障路線は、自民党と差異を強調せずにリアリズムでいくーー。

    対話はあるのか?という質問に……

    安全保障で過度の理想主義を打ち出したところで、仮に政権交代を果たしても、幻滅を招くだけで終わる。

    民主党政権の失敗を踏まえた、両氏の共通認識だと言っていいだろう。

    それが、より明確になったのは「北朝鮮と直接、対話を通じて関係改善という路線はあるのか?」という質問に対する答えだ。

    前原さん「対話も模索する」

    前原さんはこうだ。

    《私は外務大臣のときに、日朝の対話を行ってきました。小泉政権がつくった日朝間の外交間のルートを使っていました。

    対話は正式な外交ルートでやることが、特に北朝鮮のような国には一番正しいのだと思っています。「対話と圧力」路線でもあるので、対話も模索することもやる必要がある。》

    枝野さん「いまは日本が対話を強調する局面ではない」

    枝野さんは、さらに踏み込んだ発言をした。

    《対話の重要性を否定するものではありませんが、いまの状況は日本が対話を強調する局面ではない、と思っています。

    北朝鮮が対話を通じて、挑発行為をやめるのか、核ミサイル開発などにブレーキをかける余地があるのかどうか。

    日本単独ではなく、アメリカや中国など、関係諸国が水面下を含めてどうなっているのか。

    全体の状況のなかで、対話の意義がある場合、ない場合を見極める 。》

    この日、両者のネクタイの色は前原さんがエンジで、枝野さんがブルーだった。

    メディア上では、この日のネクタイの色と同じくらい対照的に描かれる両者だが、こと安全保障については大きな違いはない。

    「対話」という言葉に安易な理想を託さず、リアリズム路線を貫く。

    北朝鮮のミサイル発射で浮かび上がったのは、なにはともあれ一度は政権を担当した、野党第一党の”学び”である。