民進党の新代表に決まった、前原誠司さん(55歳)。野党屈指の安全保障の論客として知られる前原さんが力を込めて訴えたのは反格差社会だった。
2017年9月1日、白いシャツにエンジのネクタイをしめた前原さん。新聞各紙が新代表選出を前打ちできるくらい、優位に選挙戦を戦ったせいか、表情には余裕があった。
アルバイトばかりの大学時代
投票前の最後の訴えは大学時代のバイトのエピソードから始まった。自身が政治の原点と語る、中学2年のこととの関連だ。
前原さんは、父を自死で亡くした自死遺族だ。中2から母子家庭で育った。
奨学金だけでは足りないからと、大学時代はいくつものアルバイトを掛け持ちした。24時間喫茶の深夜バイト、バスガイドに家庭教師……。
市場の鮮魚部門でのバイトでは、早朝4時に家を出て、せりが始まった市場で魚を運んだ。バイトが終わり、そのまま大学に向かった前原さんに、友人たちは「おまえ、魚臭いな」と言ったという。
格差が固定化される社会でいいのか?
そんなエピソードを話し、前原さんは力を込める。
親の年収によって、大学進学率に大きな差があること、大卒と高卒で生涯年収に差があること、結果として格差が固定化されていることーー。
「親の所得で子供の機会の平等が変わる社会はおかしい」
「格差が固定化されていく、こんな不平等な社会は変えたい」
「すべての子供に機会が平等に与えられるよう、我々の手で変えよう」
声を張り上げたのはすべて、格差の固定化に関わることだった。
安全保障の論客から、社会政策の強調へ。自身の子供時代を振り返りながら、機会の平等を訴える政治家へ。
格差是正の方法論、具体化することへの疑問はまだ残っている。
しかし、自民党との違いは外交や安保論ではなく、格差是正、目指すべき社会像の違いで打ち出すという方向性をより鮮明にしたといっていい。
ここから、なにかにつけ、意見がまとまらない党内をまとめることができるのか。前原さんの手腕は早速、試されている。