安倍首相の演説に「異様」なスタンディングオベーション なにが問題なのか?

    舞台は国会。

    安倍首相の呼びかけに拍手で応じる自民党議員ら

    それは、あまり見ることがない光景だった。舞台は9月26日に開会した臨時国会、安倍晋三首相の所信表明演説だ。

    安倍首相は「現場では夜を徹して、そして今この瞬間も海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が任務に当たっています」と述べる。そして「彼らに対し、今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」と呼びかけ、これに呼応するように、自民党議員らが起立して大きな拍手が沸き起こった。安倍首相は壇上で、自らも拍手した。

    大島理森議長はしばらくして「ご着席下さい」と注意をした。その後、インターネット上でも、この行動が話題になっている。

    首相の呼びかけに応じて、国会議員が立ち上がって拍手を送る。一体、何が問題なのか。

    野党は「ちょっと異常」、小泉進次郎さんは「僕もびっくりして、つい立った」

    野党からは「ちょっと異常な光景だ。自画自賛をするためにやっていると、言論の府ではなくなってしまう」(朝日新聞より日本維新の会、馬場伸幸幹事長の発言)。当の自民党内部からも「あれはないよね。あれは私も含めて、ちょっとおかしいと思いますよ。(中略)僕もびっくりして、つい立っちゃったよ」(小泉進次郎議員の発言)と疑問の声があがりはじめた。

    しかし、この問題。「議会のマナー」、異様か否かが問題になってしまいそうだ。本当にそこが、争点なのだろうか。

    問題の本質「国会議員は内閣をチェックする立場」

    法曹界からは「三権分立の意味をどれだけ理解しているかの問題だ」という指摘する声があがる。三権分立は内閣、国会、司法がそれぞれにチェックを働かせることで、権力の濫用を防ぐシステム。

    「つまり、安倍首相は内閣のトップであり、行政機関を束ね、政策を実行することが仕事です。大事なのは国会のトップではないということです。国会は法律を作る権限を持ち、内閣をチェックする機関です」と話すのは、弁護士の小笠原基也さんだ。

    「問題は安倍首相は内閣のトップなのに、あたかも国会のトップであるかのように、敬意を払うよう国会議員に求め、チェックする立場にあるはずの議員たちが、無批判に起立し、拍手で応じたことにあります」

    「憲法には、国会は国権の最高機関と定められています。国会議員は、国民の代表として、あくまで民意に従って議論を進めることが求められる。国民の代表として、内閣との緊張関係にある、という意識をどれだけの議員がもっているのか。疑問が残ります」と指摘する。

    「国会は党大会の場ではない」

    お互いをチェックする立場にあるはずなのに、それができていないのではないか。それが小笠原さんの疑問だ。

    「国会は党大会の場ではありません。あの場に立っているのは自民党のトップではなく、内閣総理大臣。敬意を払うよう求める安倍首相も、応じる議員も何か勘違いしているように思えてなりません」