政策も価値観も曖昧すぎてわからない 小池「改革保守政党」の船出

    自民党に対抗する「改革保守政党」として立ち上がったが、肝心の中身は「希望、希望、希望」……。

    それ、どこかで聞いたような……

    「おぉ…」。希望の党結党の記者会見に集まった記者から軽いどよめきが起こった。所属議員が着席後に、派手な音楽とともにPR動画が流れた瞬間である。

    小池百合子代表を想起させる女性の後ろ姿を映し、中年の男性が「変えられると困るんだ」ーー。約1分20秒後に動画が終わると、グリーンのスカーフを巻いた小池代表が壇上に颯爽と現れた。

    しかし、その後に飛び出した言葉はどこかで聞いたものばかりだった。

    「しがらみのない政治」「大胆な改革」「日本をリセット」

    「しがらみのない政治」「大胆な改革」「日本をリセット」——。

    「リセットするからしがらみがない。いえ、しがらみがないからリセットできる」

    9月27日、記者会見の冒頭で、立て続けに述べられた小池代表の言葉だ。

    紋切型連発

    言葉は力強い。しかし、具体性はなにもない。過去、選挙のたびにでてきた「改革」派と似た言葉を連発した。あらゆる「改革派」の紋切型だと言っていいだろう。

    若狭勝・衆院議員が読み上げた結党宣言もこうだ。

    「日本はこのままでは衰退の一途をたどる。しがらみ政治を脱却し、これまでの政治システムを大胆に改革する」

    「希望とは将来に望みを託すること」

    「政策は希望につながるか。こうした観点で考える」

    「日本を希望、希望、希望へとつなげていく、そういう党にしたい」

    締めは頑張ろう三唱

    そして、小池代表も加わって高らかに、選挙の定番「頑張ろう三唱」で会見を締めくくるのだった。

    この党の「保守」とは?

    改革の根底には、寛容、改革保守の精神があるという。

    では、この党の「保守」とはなにを指すのだろうか。

    会見で、希望の党の中核を担うとみられる細野豪志・衆院議員は「国民が多様な人生を送る社会。選択的夫婦別姓に取り組んでいく」と明言した。

    だが、新党メンバーの中には「多様な人生」とは異なる価値観を提示してきた人もいる。結党に加わった中山恭子参院議員は、かつてこんなことを書いている

    祖先を祀(まつ)り、血統を尊び、子孫に伝える日本の国柄を作り上げてきた根幹である家族の温かさを今一度、皆で思い起こさねばならない。

    行き過ぎた核家族化を是正することも必要である。家庭の力とは若い親だけで担保できるものではない。

    世代間の助けがあってこそ人間関係も学び、複雑さに耐えることも学ぶだろう。少子高齢化社会に対応するためにも、税制、住宅政策などを通じて、3世代家族を基礎とする社会が望まれる。

    中山さんの考えでは、いまは行き過ぎた核家族化であり、3世代家族を基礎とする社会を望むという。「多様な人生」とは真逆の主張に読めるのだが……。

    なぜ、与党時代に改革ができなかった?

    この党には、政権中枢にいた議員、あるいは与党経験者がたくさんいる。小池代表は自民の閣僚経験者であり、細野豪志さんも民主政権の一翼を担った。

    その時に、なぜ「大胆な改革」ができなかったのだろうか。

    「国政の奥深いところにはびこる」(希望の党綱領より)しがらみのせいだとして、それが「希望の党」なら解消できるという根拠はどこにあるのか。この日は明らかにならなかった。

    曖昧な政策

    しがらみ、改革、保守——。これからも「多くの仲間が増える」「立候補したいという声も多い」と細野さんは豪語している。

    しかし、政策は「希望につながるもの」という言葉に象徴されるように、曖昧なことしか説明できなかった。

    細野さんが何か説明すると、横から若狭さん「ちょっと補足すると……」と言う。まとまりがあるのか、ないのかもよくわからないままだ。

    選挙前恒例の風狙いの新党なのか、持続可能な政党なのか。10月22日とされる投開票日まで、もう4週間を切っている。