【更新】入学式の式辞、歌詞利用にお金かかる? 京大 VS JASRAC論争決着「これは引用です。お金はかかりません」

ボブ・ディランの歌詞を取りあげて話題になった京大の総長式辞に、JASRACが著作権料を請求?

ボブ・ディランの歌詞を使った京都大学総長の式辞にJASRACが著作権料を請求した、と京都新聞が5月19日報じた。「式辞への引用」にまで著作権料がかかるのか。BuzzFeedが双方に取材した。

京都大によると、式辞は4月7日の入学式で、山極寿一さんが読み上げ、ホームページにアップされた。すると、JASRAC(日本音楽著作権協会)から著作権料について連絡があったという。

山極総長は、ゴリラ研究の第1人者として知られる。式辞では、ボブ・ディランと茨木のり子の詩を取り上げ、学ぶとは何か、大学の役割とは何かを語った。

ボブ・ディランの引用は下記の部分だ。

“How many roads must a man walk down
Before you call him a man? 

人間として認められるのに、人はいったいどれだけ歩めばいいの?”
という問いで始まる歌です。そして、

“How many ears must one man have 
Before he can hear people cry? 

人々の悲しみを聞くために、人はいったいどれだけの耳をもたねばならないの?

How many deaths will it take till he knows
That too many people have died? 

あまりにも多くの人が死んだと気づくまで、どれだけの死が必要なの?”
と続きます。それは、

“The answer, my friend, is blowin’ in the wind 
The answer is blowin’ in the wind 

友よ、答えは風に吹かれている”

こう、歌詞を紹介したうえで、こう述べた。

この歌は、誤りを知っていながら、その誤りから目をそらす人を強く非難しているのです。(中略)

常識にとらわれない発想とは、これまで当たり前と思われてきた考えに疑いを抱いたとき、それに目をそらさず、真実を追究しようとする態度から生まれます。

どんな反発があろうと、とっぴな考えと嘲笑されようと、風に舞う答えを、勇気を出してつかみとらねばならないのです。(京大総長
式辞
より)

ボブ・ディランから「常識に捉われない自由な発想」を論じる。発表直後からネットで話題になっていた。

京大「電話があったのは事実」「引用の範囲」

京大によると、ディランの楽曲を管理するJASRACから連絡があったのは5月のGW明け。広報が電話を受けて、関係者間で電話の内容を共有した。

BuzzFeed Newsの取材に、広報担当者はこう話す。

「電話の内容は『ホームページに(歌詞)を掲載するなら手続きが必要。使用料が発生することもある』という趣旨でした」

具体的に、いつまでに手続きが必要という時期に関しての話はなかった。京大は「歌詞を引用したという認識」であり、総長式辞の掲載を続けている。

JASRAC側の見解はどうなっているのか。広報担当者が取材に応じ、京都新聞の報道を否定した。

「入学式の式辞について、京都大学に対して具体的に請求したという事実はありません。いくら、いつまでに払ってくださいといった話にはなっていません」

しかし、電話はあったと京大は主張している。重ねて聞くと、連絡を入れた事実は認めた。

「確かに、歌詞の利用状況について、確認する目的で問い合わせはいたしています。これは請求をするかどうか、判断するための問い合わせでJASRACとしては日常的に行っているものです」

京大は、許諾利用手続きを要求された、という認識だが……

「利用許諾手続きについての案内はしましたが、それは制度についての一般的な説明で、みなさんに話していることと同じ説明です。許諾をとるように強く要求したわけではありません。現段階で、京都大学との間で争いがあるわけでもありません」

入学式の式辞に織り交ぜた歌詞をウェブサイトに掲載する程度で、著作権者の許諾が必要なのだろうか?

著作権法に詳しい岡本健太郎弁護士(骨董通り法律事務所)は、「著作権法上は、引用と認められる形であれば、著作権者の許諾なしに利用できます」と話す。

著作権法にはこう書いてある。

「引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」(著作権法32項後段)

今回の利用は、「引用」にあたるのか。岡本弁護士は、こう話す。


引用についての裁判所の判断枠組みは近年揺らぎつつありますが、これまで……

  • 『引用部分と自己の創作部分が明瞭に区別されていること(明瞭区別性)』
  • 『自己の創作部分が主であり、引用部分が従であること(主従関係)』

などが要件または考慮要素とされてきました。

今回のウェブサイトの表示には、そういった点への配慮があり、また、出典の記載もあります。

入学式の式辞であるという点も考慮すれば、引用として認めてよいケースに思えます。

ただし、何が『公正な慣行』や『正当な範囲内』にあたるかなどはケースバイケースの判断となりますので、仮に今回の件が裁判になったとすれば、こうした点が議論になる可能性はあるでしょう


著作権法の目的は、「文化の発展に寄与すること」だ。

BuzzFeed Newsも今回、この一件を報じる目的で、歌詞の一部を記載している。JASRACから著作権に関する問い合わせが来たら、続報としたい。

更新

5月24日、JASRACは会見のなかで「引用と判断している」との見解を表明した。朝日新聞が報じた。



バズフィード・ジャパン ニュース記者

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