「私のお店、燃えちゃったよ」 新宿・ゴールデン街火災の現場は

    「ゴールデン街の友達は、みんなパニック」

    4月12日午後1時20分頃、東京・新宿のゴールデン街から出火した。古い飲食店が残る名所は、火と煙に包まれた。

    「私のお店燃えちゃったよ」。グレーのニットを着た、初老の女性が消防のサイレンを聞きながら、つぶやく。チェックのコートを着た若い男性は「えっ、そんなところまで火がきたの」と声を上げながら、現場に目をやった。

    煙が立ち込める新宿・ゴールデン街の一角、彼らに話を聞こうとすると、黄色い規制テープを持った消防隊員が走って駆け寄り、強い口調で止められた。

    「まだ消えてないから、火は消えてないから。急いでここから出て。早く」

    出火した店の裏手に回った。報道陣や周辺住民が消火作業をじっと見ていた。古びた外壁のトタン、赤や白のスプレーでアルファベットを書いた落書きが目立つ外壁。それを突き破るように火の手があがる。

    消防隊員は火をめがけて、表口から放水を続けている。トタン屋根を突き破り、水が噴き出してきた。私たちの目の前に滝のような水が降り注ぐ。

    「うわっ」。テレビカメラに水がかからないよう、とっさに避けるテレビクルーとスマホを構えて撮影していた周辺住民から叫び声があがった。風向きが変わり、立ち上った白煙がこちら側に向かってくる。木造の建造物が焼けている、焦げた匂い。あわてて口元を押さえても間に合わず、目に涙を浮かべる人の姿があった。

    BuzzFeed Newsの取材に、現場付近にいた60代の男性はこう話した。「まず匂いがすごかったよ。そのあとはサイレンで。火がすぐまわってきた。ここ、どうなるんだろう」

    警察官が人だかりに叫ぶ。「お願いです!消防のホースが通る通路を確保してください!そこの道は開けてください!」

    全体を見渡すため、近所のビルに駆け上り、現場を見下ろした。

    出火場所の近くで、木造長屋に立てかけた細いハシゴを、防護服を着た消防隊員が一人、登っている。トタンに向かって、右手に持ったバールを振り下ろす。バールを抜いて、もう一回。5回振り下ろして、トタンを外す。外れた壁から、白い煙、そして放水された水が噴き出している。10メートルほど離れている、ホテルの外壁も水浸しだ。

    このビルに入っているホテルの男性マネージャーは「勤めて7〜8年になりますが、ここまでの火災は記憶にないです。匂いで気づいたら、すぐに煙が回ってきた」と話す。

    ゴールデン街の飲食店に勤める30代の知人女性に連絡を取ると、メールの返信で「ゴールデン街の友達はみんなパニック。ちょっと、話ができそうにない。私だって泣きそうだよ」と答えた。

    午後4時50分現在、現場では消火活動が続いている。