九州北部豪雨のボランティアが活発になっている。そこで思い出すのが、災害取材に行くたびに現地で聞くこんな声だ。「善意なのはわかるんだけど……」。装備もないままにきてしまうボランティア、刻一刻と変化するニーズを踏まえない救援物資ーー。
良かれと思う気持ちが、新たな負担にならないために必要なこととは?
必ずチェックしたい情報、ニーズ
「何かしたいって善意はありがたいのですが、もう足りているものを送られても……」
2016年の熊本地震。ため息まじりに、こう語っていたのは被害が大きかった自治体の職員だ。
ボランティアや災害支援でもっとも重要なのは刻一刻と変化する情報、ニーズを正確に把握することだ。
全国社協のホームページをチェックする
九州北部豪雨の支援について、必ずチェックしたいのが全国社会福祉協議会のホームページだ。現地のボランティアセンターが発信している公式の情報がまとまっている。
ボランティアセンターでよく起きるのが電話回線のパンク。問い合わせが殺到し、回線がふさがってしまうため、本当に必要なやりとりができなくなるという声を取材で何度も聞いた。
問い合わせで多いのは基本的な情報で、ホームページなどですでに記載されていることも多いという。
かなり使える水害ボラ作業マニュアル
現地に向かうなら、必要な道具は事前に揃えておくこと。過去の水害取材でも軽装備のボランティアとすれ違うことがあった。
なにが必要なのかは、全国社協のホームページにあがっている水害ボランティアの作業マニュアルに詳しい。BuzzFeed Newsは全国社協に転載の許可をとった。
水害ボランティアに必要な道具
最低限、必要なものがまとまっている。すべて事前に用意して、自己完結することで現地の負担を軽減できる。現地調達で賄おうとしても、店が空いていなかったり、すでに売り切れたりしていることも多い。
このマニュアルの優れているところは、モノの取り扱い方にも言及があること。よくまとまっているので、心構えとしてしっかり読んでおきたい。
あると便利な道具
注意したいこと
救援物資を送るときに気をつけるべきこと
もちろん、現地に駆けつけるだけではなく、救援物資を送るということも大事な災害支援だ。
しかし良かれと思って送った物資が、現地ではまったく必要とされていないもので、かえって負担になることもある。
荻上チキさんがまとめた『災害支援手帖』(サイト上で随時公開版を読める、木楽舎)にいらない物資支援の実例がまとめられている。いくつか抜粋しよう。
- ナマモノ、賞味期限の短いお弁当が箱詰めで送られてきたケース。
- 使用済みの下着、洗っていない服
- 余っている備品
東日本大震災でも、季節を考えていないナマモノ(果物なども含む)、必要とされない大量の古着や千羽鶴が送られてきて困ったという話を何度も聞いた。
忘れてはいけないのは、求められる物資というのは自分たちが「送りたい」ものではないということだ。
それは現地が必要としているものであり、「必要」の中身は刻一刻と変わっていく。送るなら、最新の情報は常に集めておきたい。
善意は善行にならず
消防防災科学センターのサイトに掲載されている論文「救援物資は被災地を襲う第二の災害である」を読むと、過去の災害でも善意で送られた救援物資のなかに、現地の負担増になってしまったものがあることがわかる。
荻上さんは災害ボランティアをテーマにした過去の取材にこう話していた。
「キーワードは『善意は善行にならず』。よかれと思ってしたことでも、やり方を誤れば迷惑になることがあります」
「まずは、支援をしたいと思った対象のニーズを確認する。現地で活動している団体の情報発信を調べ、それを支援するのが妥当ですが、それすらできていないケースがあったのです」
「中途半端なまま現地に行っても、かえって邪魔になってしまう。ゴミ出しや、食料の確保なども含めて自己完結できないなら、行かなくてもできる支援を考えたらいいのです」
中途半端な支援しかできないと思ったら、行くのに実際にかかる費用を募金するというのも一つの方法だ。
募金は時間の経過とともに減少していく。お金も重要な支援であること。これも忘れたくないことだ。