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【加計問題】どこに本当の「悪いこと」があるのか?国家戦略特区賛成派に、前川さんが語ったこと

6月22日、東京都内。渦中の前川喜平さんが駒崎弘樹さんのもとを訪ねた。BuzzFeed Newsは2人の対談を単独取材した。

文部科学省の前川喜平・前事務次官は、にこやかな笑顔を見せながら、座卓に座布団が敷かれた一室に姿を見せた。

待ち受けたのは、病児保育事業などを手がける認定NPO「フローレンス」の代表理事・駒崎弘樹さんだ。

「加計問題」に疑問を呈している前川さんと、「加計学園問題、国家戦略特区が悪いのではない」と書いた駒崎さん。2人の対話からは、問題の本質が浮かび上がってきた。

駒崎:安倍政権を支持するか否か、安倍降ろしかどうかといった話を抜きにして、この問題をどう考えたらいいのか。じっくりお話をしたいと思いました。

僕自身、規制とぶつかってきました。意味のない規制に悩まされたこともあり、国家戦略特区に5回提案して4回通ったことがあります。

その結果、例えば、それまで年1回だけだった保育士試験が年2回になるなど、規制が変わっていったことがありました。

その経験をもとに国家戦略特区が本当に悪いのか、という記事を書きました。今日は、そんな立ち位置から、何が本当の問題だったのか。ぜひ、前川さんと考えたいと思っています。

「特区制度を否定する気はまったくありません」

前川:私は特区制度を否定する気はまったくありません。例えば学習指導要領ってありますよね。

学習指導要領をそれぞれの地域や子供にあわせて、もっと多様性を尊重しようという議論が長らくありました。

特区で学習指導要領の特例を認めるという仕組みができた。そこで、やってみたらうまくいくんです。

基準通りにやるとうまくいかないことはあります。特区でうまくいったことを今度は全国展開しようということもやってきました。

駒崎:特区は賛成なんですね。

前川:もちろんです。特区制度は無くしてはいけないものです。ここから、新しいものが生まれることが期待できるからです。

多くの場合、規制緩和で問題になっているのは岩盤規制というより、役所の前例踏襲主義と呼ぶべきものですよね。この問題は結構、大きいです。その実態は、その裏に利権集団があるというケースではなく……。

大体は、役所の前例踏襲主義。要するに変革を好まないで、今まで通りでいいというお役人根性があるんですよね。

駒崎:そうですよね。僕も特区に提案するときは、厚労省がカウンターパートになることが多いのですが、大半は「あっそういう規制あるんですか。でも、いまは忙しいから、ちょっと変えるのはめんどうだなぁ」といったものです。

すごく悪い人がいるというより、積み上がってきたものをそこまでは変えたくないという気持ちのほうが強い。

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前川:私は、岩盤規制に固執する抵抗勢力みたいに言われることがあるんですけど、抵抗する気はないんですよ。国家戦略特区もいい制度だと思っているんです。

では、今回の加計学園を巡る、獣医学部の問題とはなにか。

まず、獣医学部の新設を認めるかどうかという議論があります。獣医学部で新しい分野への対応が必要だということも含めて、これは政策論です。

政策として、新設を認めること自体に問題ないでしょう。

問題は、それがなぜ愛媛県今治市に新設するといった加計学園に決まったのか?

具体的に加計学園に決まるまでのプロセスに疑問がある。不透明な政治的な動きで、本来のプロセスが歪められているのではないか。

特に加計学園の場合は、決定までに京都産業大学という強力なライバルがいた。両方認めることもできたが、獣医師会は(新設は)一校に限れと言った。

結果として、加計学園に決まるのですが……。

駒崎:問題は規制緩和ではなく、プロセスの整合性や透明性が不足していることにあるということですね。

「国家戦略特区は強力なツールであるがゆえに、危険性がある」

前川:国家戦略特区というのは非常に強力なツールなんだけど、強力であるがゆえに危険性を持っている。

国家戦略特区は、ここで特別に、どこでもできないことをやるという考え方なんです。

経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進します。(内閣府ホームページより)

要するに、最初から拠点を作るという考え方が強い。そこでしか認められない、特定の主体に、特別なチャンスを与えるという仕組みなんですね。

それだけに透明性や公平性は普通の特区より強く求められると思うんです。

どうして、加計学園なのか。公平性、透明性に欠けるところがあったと私は思っている。

政府の中で、文科省は内閣府に対して「このままでは、ちゃんと説明できない」と言っていたつもりなのですが、特区制度を所管している内閣府が決めてしまった。

もう一度、ちゃんと検証して、国民が知る必要があります。

駒崎:なぜ加計学園なのか、という話について、それは長年、提案を出し続けてきたからだ、という意見がある。

前川:長年の熱意というのはあると思います。しかし、大事なのは長年の熱意があるかどうかではなく、提案を公平に見ることでしょう。

国家戦略特区諮問会議の、民間議員のお考えというのは規制緩和を推進するという前提がある。

だから、国家戦略特区の制度を使う場合も、まず1カ所でやるとしても、2カ所目、3カ所目があるという前提で、考えておられるように思う。

つまり、今治の加計学園はたまたま1校目であり、2校目、3校目があると考えているのではないか、と推測されるんです。

ところが、国家戦略特区の場合、2つめ、3つめがあるかどうかの保証はされていないんです。

もし本当に1校しか認められないということになるのであれば、もっと真剣に、その1校がどこであるべきなのかを検討すべきだったんじゃないか。

今回の場合、最初は新潟も手を挙げていたので、新潟・京都・今治と3つあったんですね。

新潟はかなり早い段階で諦めちゃった。京都も諦めているのかなと思いきや諦めていなくて、詳細な構想を立てて出してきたというわけです。

結局、京産大に対してはその後、お引き取り願うわけですが……。

お引き取り願う時の理屈として「広域的に獣医学部が存在しない地域に限る」、「平成30年4月開学ができる所に限る」というのが入った。

2つの条件が入ったのはなぜ?

前川:この2つの条件って、かなり厳しい条件です。言ってみれば規制緩和をするが、そこにもう一つ別の規制を加えるようなものですからね。

この2つの条件をつけ加えることによって、結果的に今治の加計学園しか残らないことになっている。

ここの部分について、国家戦略特区諮問会議の民間議員さんの記者会見もしっかり聞きました。

(民間議員は、規制改革のプロセスに)1点の曇りもないとおっしゃっているんだけれど、私は曇りの部分は「見えてない」のではないかと思ったんです。

民間議員からも見えていない、政治プロセスの部分、つまり表の議論じゃないところで、加計学園さんしか残らない条件を設定されたのではないか。

この2つの条件が設定されたので、京都の方は「これは無理だ」と諦め、結果的に今治の加計学園しか残らなかった。

ここのプロセスが非常に不透明で、もともとオープンに議論しているところには出てこなかった議論なんですね。

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駒崎:ちなみに、もしそこで公明正大にコンペがされて、「基準をきちんとクリアしているのはここだ」となっていれば、前川さんとしては反対することもなかったですか?

前川:そうですね。京産大と加計学園を、もっとイーブンに、公平に比較するべきだったと思います。そこはちゃんとできてないと思います。京産大は相当、強力なライバルだったんですよ。

それが、言葉は変だけど「闇から闇に葬られた」みたいな感じでね、退場を迫られちゃった。

政治的に付けられた条件によってね。そこにものすごく不透明なものを感じるんですよね。

「感じる」というのは他人事みたいに聞こえるかもしれませんが、そこは文部科学省がタッチできない部分だったんです。

内閣府の中で行われているから。だけど、出てきたものをみるとそういう条件が付いていた。特に平成30年(2018年)4月開学ありきというのは最初から言われてましたしね。

文科省としては、どうして平成30年4月開学でなければならないのかという説明は、やっぱり、どこまでいっても納得できなかったですね。

「官邸の最高レベル」が急げというのは悪いことなのか?

駒崎:なるほど。内閣府の官僚は文科省に対して「官邸の最高レベルが言ってるし、急いでください」みたいなことを言っているようです。

ただ、国家戦略特区の仕組み上、トップは総理になります。トップの意向として「規制改革を急いでください」と言うのは不思議でもない気がします。

今回は、文書に「官邸の最高レベル」という言葉があったので、「いけないことだ」という見え方になってしまっている。

ただ、官邸が急げといっていること自体は悪いことではない気がします。もちろん、それが不透明に行われるのは悪いことですが……。

どの部分が悪かったのでしょうか。僕の認識だと、「官邸が急いでくれと言っていること」、それ自体はセーフな気がしています。

ただ、次の段階で何か不透明なプロセスで条件が加わって、事実上、加計学園だけになったという、この説明がつかないことが悪いということかなと思ったのですが、どうでしょうか?

前川:そういうことだと思いますよ。私も「できるだけ早く改革を進めよう」ということは賛成です。「善は急げ」という言葉もあるぐらいですからね(笑)。急ぐべきだと思うんですよ。

駒崎さんも行政の壁にぶち当たってイライラしたことは多いと思うし、私だって行政の中にいてもイライラすることが多くてね。

上司を説得したり、部下も説得したりしないといけないですから。こんなこといつまでやってるのか……と思ってましたからね。できるだけ早くしたいという気持ちはよくわかります。

「総理のご意向だ」とか「総理の指示だ」で破れるものは破っていったらいいと思うんですよ。

いま、世の中に流出した資料を見てもらうとわかるように、「官邸の最高レベルの言っていること」だとか「総理のご意向」だと内閣府から言われた、とは何を指しているのか。

それは、平成30年4月に開学だというところですよね。それが前提なんだと、これは総理のご意向なんだと読める。

要するに、改革を早く進めろという風にも読めるんですね。

「総理のご意向」文書はどう読めたのか?

前川:ただそれは、規制改革を早く進めろという一般論だけではなくて、今治の獣医学部を平成30年4月に開学させるんだ、と文脈上は読めちゃうんですよ。

どうしてもそこは、内閣府の人たちも、文科省の人たちも、これは総理が今治に獣医学部を早く作らせたいんだろうなって、思わざるを得ないようなやり取りになっている。

「改革を早く進めろ」という、一般的な指示だったとは、なかなか我々としては受け取りにくい。加計学園の獣医学部を作らせてやれというふうに、具体的に言っておられるんじゃないのかなと、どうしても、そう受け止めざるを得ない。

そういう状況があったということは事実だと思うんですよ。

ただ、総理のご意向があったとしても、それは単なる願望かもしれない。やっぱりちゃんとした検討は踏まないといけない話なので、きちんと議論すべきだと思うんですよ。

「1校に限るのはある意味、無責任」

前川:踏むべきステップを踏んで、検証すべき点を検証して、ここは獣医学部の一律禁止を解禁すべきだということであれば、そういう結論を出して、それがどのくらいの規模なのか……。

160人規模なのか、200人規模なのか、300人なのか……、それはまた次の議論としてあったと思うんですけどね。

1校に限るというのは、ある意味で無責任な「限り方」です。獣医学部はもともと全国で930人しか定員がない。

30人の1校もあるし、120人の1校もあります。入学定員をどれだけ増やすのか、1校と言ったときにはわからないんですよね。

ふたを開けてみると(加計学園で)160人という今までにない大きな規模になっていた。

規制緩和の穴の開け方には、もっと工夫があったかもしれない。透明性を確保する他の方法があったんじゃないかな、と。

そこの検討・議論がほとんどされていないんですよ。

駒崎:前川さんは、規制緩和に反対なのではない。その穴のあけ方、つまり穴をあけるのは良いが、穴のあけ方は公正に透明性高くやるべきだ、という点にこだわられているのですね。

前川:こだわるといえばそうですね。穴をあけるかどうかは、正面から政策論でやればいいと思います。無駄な規制って、沢山ありますから、どんどん撤廃すればいいし。

獣医学部については、逆の立場、つまり規制は維持すべきだという立場の人もいます。それは単に岩盤規制に固執し、既得権益にしがみつく人たちだと切り捨てるのも問題だと思います。

それなりの理由もちゃんと聞かなければいけないし、獣医師会の意見もちゃんと聞くべきだったと思うんですよね。それもやってないんですけど。

「新しい分野の獣医師が必要」にもそれなりに理屈がある

前川:しかし、新しい分野の獣医師が必要だから、今まで通りの定員でやらなければいけないわけではない、というのにもそれなりの理屈があると思う。

その結果として、規制を解除していくという結論も当然あってしかるべきです。

ただ、そのときの穴のあけ方に問題があったんじゃないか。

特に国家戦略特区は、もともと特定の主体に特別なチャンスを与える仕組みなので、その時に手を挙げていた加計学園と京産大をもっとじっくりと見て、加計だけ160人ではなく、京産大と80人、80人で両方見るというやり方もあったと思う。

どこか、議論の透明性とか公平性に欠けていたのではないでしょうか。

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前川:文科省の大学設置・学校法人審議会がいま、加計学園の審査をしているのですが、ここでなにか政治的に歪められたことが起きないようにしないといけないと思うんですよね。

教員が資質に欠けるけどOKしてしまうとかね。

これは政治的に曲げることはできないはず。しっかり審査すると、設置認可できないという可能性もかなりあると思います。

この時に総理のご意向という話がくるかもしれないけど、ここで文科省は筋を曲げてはいけないと思うんですよ。

例えば、教員が本当に集まるのか、という不安材料がある。160人規模の入学生で、70人規模の教員が必要になってくる。

本当に資格のある先生たちが十分に集まるのか。質量ともに、それは大丈夫だろうか。

さらに、普通の獣医学部ではない、特区で認められたどこもやらないことをやる獣医学部である。(大学設置・学校法人)審議会の議論だけでは十分じゃない、という声も上がる可能性もある。

駒崎:やはり、公平性、透明性というテーマが浮かび上がってくるように思えます。

前川:大きく言えば国民主権の問題ですよ。いかなる権力も国民から信託を受けている。内閣総理大臣も公務員も国民から権力を預かっているわけですから。

権力は公正明大に使わないといけなくて、特定の人に恩恵を与えるために使ってはいけない。

加計学園の問題には、まだまだ不透明なことが残っている。巧妙に京産大を排除し、加計学園に決まっていく。それが世の中からも、民間議員にも見えない部分がある。

見えない部分を見える化することが大事だと思うんです。透明性・公平性の確保がされているか。チェックできる仕組みも必要かもしれない。

駒崎:メディアでは、文科省に忠誠を誓う前川さんが、政治主導でいく官邸に反抗しているという構図で語られている。官僚 VS 政治家という構図で語られている。

「政治主導は間違っていない」

前川:政治主導は間違っていないですよ。

駒崎:官邸のリーダーシップが強いのもいい、政治主導もいいが、このケースは不適切かつ不透明なプロセスがあったので、そこに納得いかないと。

前川:そうなんです。そこに納得がいかない。こういうのを国民に知ってほしい。政治の世界に国民は権力を預けているわけです。

権力がちゃんとつかわれているならいいが、見えないところで国民全体ではなく、一部の人のために権力がつかわれているとしたら、国民が見えるようにしないといけないだろうと。私の問題意識はそこに尽きます。

最後は国民がチェックしないといけないのです。

特に都合の悪い、不公正なことがあるならば、ここを伝えないといけない。

駒崎:前川さんが言っているのは、加計学園という特定のケースで、その決定に至るプロセスがおかしい、ということだと今回わかりました。

ただ、メディアでは、前川さんは反安倍派のヒーローであり、支持率を下げた立役者という物語が消費されている。

あるいは、いろんな思惑があるのか、本題とまったく関係ない出会いバーの話を報じるメディアがある。

メディアでは、特定の物語ばかりが消費されていて、ではどうしたらいいのかという、本質的な議論がなされていない。

前川:早く私のことは忘れてもらいたいと思っています(笑)。あんまり誤解されたくないのですが、政治活動をする気もありません。

あいつは政治的な意図をもって、民進党や共産党や、自民党の石破さんや麻生さんと結びついているんじゃないかと言われているようです。しかし、政権転覆どころか、私はそもそも反安倍政権ではありません。


対談のあいだ、前川さんがずっと投げかけていたのは、新設の獣医学部が加計学園に決まっていく過程が、本当に公平・公正だったのかということだ。

感情や目的ではなく、あくまで事実に基づいて議論をする。もっとも大事な点は情報公開、透明性、決定までのプロセスの検証である、と。

安倍政権はこの問題の幕引きを図ろうとしているが、まだまだこの問題は終わりそうにない。


BuzzFeed Newsでは前川喜平さんに単独取材をしました。

NHKがスクープした萩生田メモ』渦中の前川さんはこう読んだ

なぜ、加計問題で渦中の前川さんが『安倍さんに感謝している』と語るのか?」で報じています。

また、6月23日に日本記者クラブで開かれた記者会見は「テレビ・新聞記者を前に… 前川氏が語った『国家権力とメディアの問題』」でまとめています。


バズフィード・ジャパン ニュース記者

Satoru Ishidoに連絡する メールアドレス:Satoru.Ishido@buzzfeed.com.

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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