男女の報酬や待遇格差をめぐって、アメリカのサッカー界が揺れている。
「実質的に同じ働きをしているのに、男子の代表選手よりも女子の代表選手の報酬(賃金)が少ないのは差別だ」として、選手28人がアメリカサッカー連盟を訴えた裁判で、連盟側が3月9日、「男子の方が女子よりも責任が重く、求められるスキルも高い」と主張し、批判を浴びている。
女子代表チームも選手全員で抗議し、連盟会長が謝罪したのちに、辞任する事態となった。
ユニフォームを裏返して抗議
アメリカ・テキサス州で3月11日に開催された国際親善大会「She Believes Cup」の最終戦。
試合前の国歌斉唱をする間、アメリカ女子サッカー代表チームの選手たちは、全員ユニフォームを裏返しにして着ていた。
その理由は、胸元に縫い付けられているアメリカサッカー連盟のエンブレムを隠すため。賃金格差をめぐる訴訟で、連盟が格差を正当化する主張をしたことに対して、チーム全員で抗議した形だ。
報酬や待遇の平等を求めて提訴
選手たちが連盟を訴えたのは、昨年3月。原告は2015年の女子ワールドカップで優勝を収めた代表選手28人で、昨年のワールドカップでチームを連覇に導いた主将ミーガン・ラピノー選手も名を連ねている。
選手たちは、男子の代表選手と同じ報酬を支払うことや、雇用条件を同等にすること、女子の試合にも平等な宣伝・サポートなどを求めているほか、6600万ドル(約69億円)以上の損害賠償を請求している。
「男子は女子よりも、高いスキルが求められている」
「男子の方が収益性が高い」
さらに連盟側は、男子代表の方が女子よりも収益性が高いと主張。
FIFA(国際サッカー連盟)主催の試合で男子代表が勝つことで得られる賞金は、女子代表がワールドカップで優勝した場合に得られる賞金よりもはるかに上回っていると説明した。
しかし、ワールドカップの賞金における男女間の格差も、すでに批判の対象となっている。FIFAのインファンティーノ会長は昨年7月、次回の女子ワールドカップでは賞金を倍に引き上げる方針を提案したと発表した。
2018年の男子ワールドカップの賞金が4億ドル(約420億円)だったのに対して、2019年の女子ワールドカップはその1割にも満たない3000万ドル(約32億円)だったと報じられている。
会長辞任「選手を侮辱し、傷つけた」
連盟の主張に強い批判や抗議が相次いだことを受け、サッカー連盟のカルロス・コルデイロ会長は12日に謝罪し、こう表明した。
「裁判で様々なファクトや数字を議論する際も、我が国の女子サッカー代表選手たちだけでなく、世界中の女性アスリートに対する最大の敬意を持って、議論を進めなければならないと、連盟の法務部に対して明言しました」
そして翌13日には、自身のTwitterで辞任を表明。「今週裁判所に提出された文書の内容は、女子代表選手たちを侮辱し、傷つけるものでした」と述べ、提出前に文書を確認して、内容を修正することを怠った責任を取るとした。
「すべての女の子、男の子へ」
アメリカの女子サッカー代表チームは、昨年のワールドカップで2大会連続・4度目となる優勝を果たしている。一方、CNNによると、男子代表のワールドカップ最高成績は2002年の準々決勝進出で、2018年は予選敗退した。
ラピノー選手は11日の試合後インタビューで、一連の問題を受けてこう述べている。
「このチームを見て、このチームでプレーしたいと願い、ただただ自分の夢を追いかけたいと願うすべての女の子、そして男の子へ。あなたは女の子だというだけで劣っているなんてことはないし、男の子だというだけでより優れているということも決してありません」
昨年のワールドカップでアメリカ代表が優勝した時、スタジアムには「賃金平等」と叫ぶサポーターたちの声が響きわたっていた。
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