不法移民の取り締まりをめぐってアメリカ世論が大きく割れる中、同国とメキシコの国境にあるものが現れた。
ピンク色のシーソーだ。
国境を越えるピンク色のシーソー
7月28日、カリフォルニア州サンランドパークの国境沿いに建ち並ぶフェンスに取り付けられたのは、3つのシーソー。
建築家のロナルド・ラエルさんと、大学教授のヴァージニア・サン・フラテッロさんが2009年から温めていた「Teeter-Totter Wall」というプロジェクトで、10年越しに実現した。
シーソーは、フェンスを挟んで片方はアメリカ側、もう片方はメキシコ側に入っており、柵で隔てられた両国の人々が一緒に遊べるようになっている。
国境警備隊が見守るなか、30分間だけこの世に現れた、まぶしいピンク色のシーソーたち。
ラエルさんが自身のSNSに、両国の子供も大人も一緒になって楽しそうに遊ぶ様子を投稿すると、瞬く間に世界中の注目を集めた。
移民の取り締まりに「非人道的」と批判
およそ3200kmに及ぶアメリカーメキシコ国境。その内、約1125kmには、今回シーソーが取り付けられたようなフェンスが設置されている。
トランプ政権は移民の取り締まりを強化するために、この国境沿いに「壁」を建設すると主張。
不法移民とされる人々を各地で一斉に摘発し、親子を引き離して収容施設で拘束するなどの手法に、民主党議員などからは「非人道的だ」との批判が高まっている。
ラエルさんはBuzzFeed Newsの取材に、シーソーは「国境がアメリカとメキシコの関係にとって、文字通り『支点』となっていることを表し、壁を建設することは両国の関係を引き裂くことにつながると指摘しています」と語る。
さらに、シーソーは「一方が起こした行動が、もう一方に直接影響を与える」ことも体現している。
作品の背景にある思いを、ラエルさんはこう説明する。
「シーソーは、人と人の密なつながりがあることによって、国境沿いの暮らしにおいても、笑顔と遊びが大切にされる環境を作ることができること。隣人たちとの関係が政治的なものを超え、人間的な関係を築くことができることを示しています」
「『壁』と『壁』をめぐる政治によって、両国の人々の関係が引き裂かれている現代において、このことは非常に重要です。『壁』と『壁』をめぐる残念な政治は、国同士を分断させるだけでなく、地域、街、近隣関係、家族も引き裂いてしまうのです」
シーソーの設計図やモデルは現在、ニューヨーク近代美術館とサンフランシスコ近代美術館に収蔵されている。