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逮捕の瞬間、マトリに「来てくれてありがとうございます」 俳優が語る依存症の孤独

薬物使用などで逮捕されてから4年。俳優の高知東生さんは、薬物依存を取り巻く誤解をなくすため、自らが「生き直す」過程をSNSなどを通じて発信しています。

覚せい剤取締法違反などで逮捕されてから4年。

俳優の高知東生さんは、薬物依存を取り巻く誤解をなくすため、自らが「生き直す」過程をSNSなどを通じて発信しています。

薬物依存症に苦しみ、苛烈な報道に翻弄され、孤立し、死も考えたという高知さんがいま、伝えたいこととは。

「全てを失ってしまう」とわかっていたのに

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「捕まる前から、薬物というものをうまくコントロールして支配していたつもりが、何か知らぬ間に使う頻度が多くなってきた。

心の中では『このままではやばい』『捕まってしまう可能性もある』『全てを失ってしまう』とわかりながらも、やめることができなかった。

だからマトリ(麻薬取締官)が来た時に、『終わった…』という気持ちと『これでやめられる』という、何とも言えないいろんな感情が一気に来て…。

僕自身、マトリに『来てくれてありがとうございます』って、言ってしまったんですけどね」

留置場前での「謝罪」とは

「留置場から出てきたその時に、マスコミがたくさんいる中で、一言添え、一礼して、車に乗って出て行くんですけども、ぶっちゃけた話、僕自身がそうしたいとは一言も言ったことないんですね。

弁護士さんが、とにかく外でマスコミがすごい、と。警察から『バミリ』もあって、ここに立った方がいいんじゃないかという話もあったので。

実際に外へ出てみると、自分の予想以上のマスコミの数で、フラッシュで目の前何にも見えないし。

急に言われたことにどう対処していいかわからない中、頭の中に残っていたフィルムのようなものを巻き戻し、過去に捕まった人たちがどうしていたかを必死で思い出し、それを真似てみたというのが事実です」

着ちゃいけない「心の防弾チョッキ」

「バッシングというのは、なかなか生きているうちに、あれほどの衝撃を経験することはないですよね。

自分自身も芸能界で二十何年間、生かさせてもらいながらも、自分のいないところでワイドショーや紙面によって書かれ続けるということに、もちろん慣れているわけじゃないから。

本当に苦しんで、自分でどうしていいかわからない。誰とも話したくない。着ちゃいけない『心の防弾チョッキ』が、どんどん自分を孤立させて。

なんて言うんだろうな…。あの苦しみ…。今こうやって話してるだけでもつらくて。今こういう取材をしている段階でも、カメラを向けられていること自体に違った鳥肌が立つくらい、それぐらい思い出すぐらい、苦しかった日々なんです。

まあ…二度と、嫌ですね」

「助けて」と言ってください

「自分が仲間を見つける前は、もう正直な話、死んだ方がいいんじゃないかと思っていたし、とにかく絶望しかなかった。

死のうと思ったその時の自分が、正しい経験と知識を持ってして、回復し、社会にもう一度人生再起できている人たちの中で、僕は導かれて今がある。

僕が今現在言えることは、依存症というのは、病気なんです。だからこそ、しかるべき治療を重ねて、回復し、自分自身をもう一度取り戻して生き直せる。

だからこそ、決してあきらめないで。あたし一人じゃないんだ、俺一人じゃないんだってことを、本当に勇気を持って第一歩を踏みしめて、真実を知ろうとすれば、仲間は待っています。

だからこそ、一人で考え込まないで。ほとんどそれ間違ってるから。

正直に、ありのままで、『助けて』って言ってください。まあそれだけかな?」


高知東生さんをゲストに招き、ライブ配信番組を放送します

薬物の使用で著名人が逮捕されるたび吹き荒れるバッシングの嵐…。誤解に基づく批判が回復を妨げています。薬物依存とはどのような病気なのか、ゲストと一緒に考えます。

【番組概要】

「依存症は孤独の病 俳優・高知東生に聞く回復への道」

日時:11月13日(金)19:00〜20:00
視聴方法:Twitter(@BFJNews)でライブ配信

【ゲスト】
高知東生さん(俳優)

1964年高知県生まれ。1993年に芸能界デビューし、映画やドラマ、バラエティに多数出演する。2016年6月24日覚せい剤と大麻使用の容疑で逮捕。執行猶予判決を受ける。2019年3月より依存症問題の啓発活動を始める。2020年5月Twitterドラマ「~ミセスロスト~インタベンショニストアヤメ」で俳優復帰。2020年9月自叙伝「生き直す~私は一人ではない~」刊行。

松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長)
1993年、佐賀医科大学卒業。2004年に国立精神・神経センター(現国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所司法精神医学研究部室長に就任。以後、自殺予防総合対策センター副センター長などを経て、2015年より現職。日本精神救急学会理事、日本社会精神医学会理事。『自分を傷つけずにはいられない』(講談社)、『薬物依存症』(ちくま書房)など著書多数。

田中紀子さん(公益社団法人ギャンブル依存を考える会 代表)
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 代表。国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 研究生。祖父,父,夫がギャンブル依存症者という三代目ギャンブラーの妻であり自身もギャンブル依存症と買い物依存症から回復した経験を持つ。全国各地で家族相談会やギャンブル依存問題の普及啓発のための講演を行っている。2018年12月にはローマ教皇主催の「依存症問題の国際会議」に出席し,我が国のギャンブル依存症対策等の現状について報告をした。著書に「三代目ギャン妻(高文研)」「ギャンブル依存症(角川新書)」がある。