アカデミー賞授賞式で話題をさらったのは、あるCMだった。

    「また、馬鹿げていると言われたって?いいでしょう。馬鹿げている私たちに、できることを見せてやりましょう」

    第91回アカデミー賞授賞式が2月25日(日本時間)、ロサンゼルスで開催されました。

    日本でも大ヒットを記録した「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックが主演男優賞に輝いたり…

    最優秀歌曲賞で初のオスカーを手にしたレディ・ガガが感動的なパフォーマンスを披露したりと、見所満載の授賞式でしたが…

    ひときわ話題になったのが、式の合間に放送されたNIKEのコマーシャルでした。

    If they think your dreams are crazy, show them what crazy dreams can do. #justdoit

    「Dream Crazier(もっと馬鹿げた夢を見ろ)」と名付けられた1分30秒のコマーシャルは、女子テニス界の女王、セリーナ・ウィリアムズ選手がナレーションを務め、

    様々な女性アスリートたちの競技映像とともに、これまで彼女たちに投げかけられてきた「言葉」をウィリアムズ選手が読み上げていきます。

    「感情を見せると、ドラマチックすぎると言われる」

    「男性相手に競技したいと言うと、無茶苦茶だと言われる」

    「そして、機会の平等を求めると、妄想に取り憑かれていると言われる」

    「信念のために立ち上がると、気が動転していると言われる」

    「成功しているときは、彼女は何かがおかしいと言われる」

    「そして私たちが怒りを示すと、ヒステリックで、理性がなくて、馬鹿げていると言われる」

    「でも、かつてはマラソンをする女性も馬鹿げていると言われていました」

    ウィリアムズ選手がそう続けると、これまで「常識」を塗り替えてきた多くのアスリートたちの姿が画面に写し出されます。

    WNBA(アメリカの女子プロバスケットボールリーグ)で史上初めて、ダンクシュートを決めたリサ・レスリー選手。

    NBA初の女性コーチとなった、サンアントニオ・スパーズのベッキー・ハモン。

    アメリカのオリンピック選手としてはじめて、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が身につけるスカーフ)を付けて競技したフェンシングのイブティハージ・ムハンマド選手。

    ウィリアムズ選手も「馬鹿げている」と呼ばれた女性の一人として登場します。

    「グランドスラムで23回優勝を収め、子どもを産んでから、また競技に帰ってきて、さらに勝利を追い求める女性も、馬鹿げている、馬鹿げている、馬鹿げていると言われてきました」

    CMの最後は、こんな言葉で締めくくられています。

    「また馬鹿げてると言われるって?いいでしょう。馬鹿げている私たちに、できることを見せてやりましょう」

    ウィリアムズ選手はこれまでも、スポーツ界における性差別をめぐる議論の中心に立ってきました。

    昨年5月に開催された全仏オープンでは、フランスのテニス連盟会長がウィリアムズ選手のウェアに苦言を呈したことに対し、「(協会が)女性の身体を取り締まるのはやめるべきだ」と批判が上がった

    大坂なおみ選手と対戦した昨年9月の全米オープン決勝では、審判と口論になり、「男子選手だったらこのような扱いは受けない」と主張。世界中で議論を呼びました。