「お前は離婚家庭の子どもだからダメなんだ」 担任の先生の言葉で、僕は不登校になった。

    「最初は『先生がそんなことを言うはずがない』と、誰にも信じてもらえませんでした。いまもその時のことは、僕にとっては辛い記憶なので正直思い出したくありません」

    学校や先生による「スクールハラスメント」に対応する相談窓口などを設置すべきだというオンライン署名の活動が始まっている。

    中学生の頃、担任の教師に「お前は離婚家庭の子どもだからダメなんだ」と罵られて不登校になったという男性が7月17日、文部科学省や東京都に対し、「スクールハラスメント」の相談窓口の設置を求める署名を立ち上げた。

    男性は「特に私立の学校は自主性が強く、相談しても実効性のある指導をしてくれる窓口がなかった。僕と同じように『スクールハラスメント』に苦しんでいる人が、仕方なく泣き寝入りさせられてしまうことは、あってはならない」と訴えている。

    「お前は離婚家庭の子どもだから」

    署名を始めたのは、都内にある私立の中高一貫校に通っていた佐藤悠司さん(19)。

    佐藤さんは中学2年生の冬、所属していた美術部を退部したいと、部の顧問で、クラスの担任だった男性教諭に伝えたところ、「お前は離婚家庭の子どもだからダメなんだ!」などと20分以上罵られたという。

    「小学校低学年のときに両親が離婚して以来、それを理由に学校でいじめられたり、友達の輪から外されるのが怖くて、離婚家庭であることを知られるのがずっと恐怖でした」と佐藤さんは語る。

    この出来事をきっかけに中3の春から不登校になり、引きこもり状態となった。2014年8月にはメンタルクリニックへの通院を始め、睡眠障害などの症状で現在も通院しているという。

    また、教員によるハラスメントが原因で不登校になったにもかかわらず、学校側が欠席日数が長期化したことを理由に、留年や転校を勧めたと主張している。

    一方、学校側はBuzzFeed Newsの取材に対して、「事実認識に大きな齟齬があり、ハラスメントはなかったと評価している」とコメント。

    「弁護士の協力を得て、関連資料の調査や担当教員へのヒアリングを実施したところ、佐藤さんが主張されているような先生から生徒に対するパワーハラスメントと評価される指導はなかったと判断している。今後の対応については、検討中」と話した。

    実効性のある「相談窓口」を

    佐藤さんはこれまで学校側に、教員の適切な処分や問題を公にして再発防止策を講じるよう求めてきた。

    さらに、文部科学省や東京都教育委員会で私立学校を管轄している部署にも相談をした。しかし、各校の自主性が重んじられる私立の学校の場合、行政側から直接的な指導はできないと言われた、という。

    そのため、署名では、小中学校や高校で起きる「スクールハラスメント」を防止するために、「第三者による公正な調停機関の設立」するよう文部科学省に呼びかけている。

    また、東京都に対しては、「公立学校よりも指導がしにくい私立学校への対応として、私学助成金を管轄する部署にスクールハラスメントの窓口を設け、助成金の審査を厳格に行うこと」を求めている。

    教員から生徒へのハラスメントを防ぐには

    教育現場におけるハラスメントなどに詳しい名古屋大学大学院の内田良・准教授は、「生徒間のいじめについては、各自治体で様々な相談体制が整備されてきましたが、教師から子どもに対する暴言や体罰などのハラスメントについては、相談体制がほとんど構築されていません」と指摘する。

    佐藤さんは「最初は『先生がそんなことを言うはずがない』と、誰にも信じてもらえませんでした。いまもその時のことは、僕にとっては辛い記憶なので正直思い出したくありません」と言う。

    「ハラスメントは突発的に起こるもので、被害に遭った人が泣き寝入りしなければならないような状況はあってはならない。署名活動をすることで、現行の教育制度やその不備について多くの人に知ってもらいたいです」

    署名ページでは今後、スクールハラスメントを受けた被害経験に関する情報提供も募る予定だという。