海水浴場やプールが家族連れでにぎわう、お盆休み。水遊びが楽しいシーズンだからこそ、小児科医は「子どもは静かに溺れるため注意が必要」と呼びかけています。
「バシャバシャもがくのは映画の世界だけ」
注意喚起をしたのは、佐久総合病院(長野県佐久市)の医師たちが中心となり、子どもの病気やホームケア、子育て支援情報などについて発信している「教えて!ドクタープロジェクト」。
乳幼児が溺れる際にバシャバシャと音を立ててもがくのは「映画の世界」だけで、実際には溺れた状況を理解できず、呼吸に精一杯で声を出す余裕もないまま、静かに沈むと指摘しています。
そのため、「溺れても物音で気付くから大丈夫」と考えて目を離すことなく、しっかりと見守り続ける必要があると呼びかけています。
「15秒か20秒、目を離したら浮いていた」
「偉そうなことを言っていますが、実はわたしも経験したことがあるんです」
BuzzFeed Newsの取材にそう話すのは、同プロジェクトのリーダーを務める坂本昌彦医師。それは1歳3カ月の息子とお風呂に入り、自分が先に脱衣所に出たときのことでした。
「息子は浴槽のふちにつかまってジョウロで遊んでいました。そこまでは見てたんです」
「遊んでるなーと思って脱衣所に出て体を拭き始めて、チャプチャプと息子が遊ぶ音もしていたのですが、15秒か20秒後くらいにパッと見たらもう浮いていたんですよね。仰向けで、目を見開いてこっちを見ているような状況でした」
息子さんは無事でしたが、やはりバシャバシャともがくような音はしなかったと言います。
坂本さんによると、こうした反応は「本能的溺水反応(instinctive drowning response)」と呼ばれ、日本の医学界でもあまり広く知られていないそう。
「溺水は本当に命に関わります。『音が聞こえていれば溺れることはない』というのは違うんだよ、『子どもは静かに沈むんだよ』ということは、どれだけ強調しても強調しすぎということはないと思います」
万が一の応急措置は?
厚労省の人口動態調査によると、2016年に不慮の事故で亡くなった1〜4歳児85人のうち、約3割の26人が溺水。また、水中での時間が5分を超えると、脳に後遺症を残す可能性が高くなると言われています。
坂本さんによると、万が一の応急措置でまず必要なことは以下の通り。
- 平らな場所に寝かせる
- 意識があるかを確認
- 意識がなければ助けを呼び、救急車を呼ぶ
- 絶え間なく心臓マッサージと人工呼吸を行う
何よりも大切なのは、お風呂やプールでは子どもから目を離さないこと。また、乳幼児だけではなく、小・中学生でも溺れている際に音を立てたり、大声で助けを呼ぶことができるとは限らないため、注意が必要です。