「受験生に自信を持っておすすめできない」 萩生田文科相、英語民間試験の導入を延期

    2020年度から始まる「大学入学共通テスト」で導入を予定していた英語の民間試験について、萩生田光一・文部科学相が会見で、導入を見送る方針を発表した。

    文部科学省は11月1日、2020年度から始まる「大学入学共通テスト」で導入を予定していた英語の民間試験について、導入を見送る方針を発表した。

    萩生田光一・文部科学相は会見で、「受験生におすすめできるシステムになっていない」といい、2024年度入試からの活用を目指して「仕組みも含めて抜本的に見直しをしていきたい」と述べた。

    「身の丈に合わせて頑張って」

    当初の計画では、大学入試センターの試験に加えて、英検やTOEFL、IELTSなど文科省から認定された7種類の民間試験から選んで受験する仕組みになっていた。

    「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測ることが狙いで、高校3年生の4~12月に受験した2回分までの成績を提出する。

    中には、受験料が2万5000円を超えるものや、会場が都市部の10地区に限られているものもあり、経済的に困難を抱える生徒や、地方で暮らす生徒にとって、さらなる負担になるのではないかと懸念されていた。

    そんな中、10月24日に放送された報道番組で、萩生田文科相が民間試験による不公平について問われた際に「身の丈に合わせて勝負して頑張ってもらえれば」と発言。

    「地域や家庭の経済力などによる教育格差を容認するのか」と、野党や教育関係者などから批判が上がっていた

    萩生田文科相はのちに発言を撤回し、「私の不徳の致すところだと反省をしている」と謝罪した。

    「自信を持っておすすめできない」

    萩生田文科相は1日の会見で「現時点において、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して試験を受けられるような配慮など、文部科学大臣として、自信を持って受験生の皆さんにおすすめできるシステムにはなっていないと判断せざるを得ません」と、導入延期を発表した。

    試験を実施する各事業者との連携が不十分で、各大学の活用内容や、試験会場の場所などを含む詳細についての情報提供が遅れたといい、「今日の段階においても、自分が受けようと思っているテストがどこで受けられるかわからないというのは限界がある」と判断したという。

    各事業者とは「引き続き信頼関係を持って前に進めていきたい」と述べた一方、「仕組みも含めて抜本的に見直しがしたい」と述べた。

    今後は検討会議を設けて、1年を目途に結論を出すという。

    自身の発言については「私の不用意な発言で高校生はじめとする皆様に大変なご迷惑をおかけしましたが、この間もさらに多くの方々からご意見をいただくこととなり、より一層現状の課題を浮き彫りにすることができました」とコメント。

    進退については、特に言及しなかった。

    萩生田大臣の会見冒頭での発言全文は、以下の通り。

    私は就任以来、試験を受ける高校生のことを一番に思いながら、英語民間試験活用のための大学入試英語提供システムのあり方について、これまでの進捗状況を冷静に分析しつつ、多くの方々の意見を伺いながら、慎重に検討を行ってまいりました。

    こうした中、先日は私の不用意な発言で高校生はじめとする皆様に大変なご迷惑をおかけしましたが、この間もさらに多くの方々からご意見をいただくこととなり、より一層現状の課題を浮き彫りにすることができました。

    文部科学省としましては、大学入試センターを通じてということもあり、民間試験団体との連携調整が十分でなく、各大学の活用内容、民間試験の詳細事項等の情報提供不足等の準備の遅れにつながることとなりました。

    ここまで準備を進めていただいた試験団体の皆様にもご迷惑をおかけをすることになりました。

    大学入試英語成績提供システムは、現時点において、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して試験を受けられるような配慮など、文部科学大臣として自信を持って受験生の皆さんにおすすめできるシステムにはなっていないと判断せざるを得ません。

    これ以上、決断の時期を遅らせることは、混乱を一層大きくしかねないため、ここに来年度からの導入を見送り、延期することを決断をいたしました。

    私の耳にはこれまで頑張って英語の勉強をしてきた高校生の声も届いていますし、皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ない気持ちです。

    最後に私から言わなければならないことがあります。それは、今後の話です。

    子供たちに英語4技能を身につけさせることは、これからのグローバル社会に必ず必要です。

    それを入試でどのように評価していくのか、できるだけ公平でアクセスしやすい仕組みはどのようなものなのか。

    新しい学習指導要領で初めて実施をする、令和6年度に実施される大学入試に向けて、私の元に検討会議を作って、今後1年を目途に検討し、結論を出したいと思います。

    また、多面的・総合的に学力を評価しようとする高大接続改革を引き続き着実に進めてまいります。

    令和2年度から開始する大学入学共通テストの記述式問題の導入など、大学入試改革については、円滑な実施に向けて万全を期してまいりたいと思います。

    今回の件について、受験生をはじめとした高校生、保護者の皆さんに対する私の気持ちをメッセージとしてお伝えをしたいと思いますので、朗読を許してください。

    文部科学大臣の萩生田光一です。皆さんに令和2年度の大学入試における、英語民間試験活用のため、大学入試英語成績提供システムの導入を見送ることをお伝えします。

    大学入試における英語民間試験に向けて、今日まで熱心に勉強に取り組んでいる高校生も多いと思います。

    今回の決定でそうした皆様との約束を果たせなくなってしまったことを大変申し訳なく思っております。

    英語民間試験を予定通り実施するかに関しては、高校生をはじめ、多くの皆様から賛成、反対様々な意見をいただいてきました。

    私としては目標の大学に向けて、英語試験の勉強を重ねている高校生の姿を思い浮かべながら、当初の予定通りのスケジュールで試験を実施するために、連日取り組んでまいりました。

    しかし大変残念ですが、英語教育充実のために導入を予定してきた民間試験を経済的な状況や居住している地域に関わらず、等しく安心して受けられるするためには、さらなる時間が必要だと判断するに至りました。

    大学入試における新たな英語入試については、学習指導要領が適用される令和6年度に実施する試験から導入することとし、今後1年度を目途に検討し、結論を出すこととします。

    皆様が安心して受験に臨むことができる仕組みを構築していくことを、改めてお約束を申し上げます。

    今回文部科学相としてシステムの導入見送りを決めましたが、高校生にとって「読む・聞く・話す・書く」といった英語4技能をバランスよく身につけ、伸ばすことが大切なことは変わりありません。

    グローバル化が進展する中で、英語によるコミュニケーション能力を身につけることは大変重要なことです。

    皆様にもこれからも日々の授業を大切にするとともに、それぞれの目標に向かって努力を重ねていただきたいと思います。