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「緊急避妊薬は “避妊につなげる入り口”」で良いのか。検討会委員が指摘した「1番の問題」とは

「緊急避妊薬(アフターピル)」の市販薬化(OTC化)に向けて、専門家や関係者が議論を続けている厚生労働省の検討会。3月10日に開かれた会議では、日本産婦人科医会が会員の医師を対象に実施したアンケート調査の詳細も共有された。

「緊急避妊薬(アフターピル)」の市販薬化(OTC化)に向けて、専門家や関係者が議論を続けている厚生労働省の検討会

3月10日に開かれた会議では、日本産婦人科医会が会員の医師を対象に実施したアンケート調査の詳細も共有された。

前回の会議で、アンケート結果が歪曲されており、「OTC化を色眼鏡的に見ている」などと批判を受けたことも受け、改めての発表となった。

産婦人科医が懸念することは…

今回の会議では、調査結果の中から「OTC化により懸念されると思うこと」を複数選択する設問で、「懸念する問題はない」以外を選んだ医師が88.1%いたことを発表。

最も回答が多かったのは「転売の可能性」(65.4%)で、「コンドーム使用率の低下による性感染症リスク拡大の可能性」(64.4%)、「緊急避妊薬服用後の妊娠(異常妊娠を含む)への対応が遅れる可能性」(62.5%)、「避妊に協力しない男性が増える可能性」(59.2%)などが続いた。

OTC化のメリットとしては、土日や夜間の処方について「産婦人科医の負担を軽減する」という点のみ挙げた。

58.8%が同じ人に複数回処方

アンケートでは、これまで緊急避妊薬を処方してきた際の対応などについても調査した。

医会が10日の検討会で公表した資料によると、産婦人科医(回答数4625件)の58.8%が、同じ人物に対して複数回にわたって緊急避妊薬を処方したことがあると回答した。

自由記載欄の中には「相手が避妊に協力しない」「相手に避妊してほしいと言えない」「緊急避妊薬があるため、他の避妊法は使わない」「これから性交をする際に使用したいと、事前に処方を求める」などの記述があったという。

また、産婦人科医(回答数3743件)の94%が、緊急避妊薬の処方時に、確実な避妊法に関する情報提供や、経口避妊薬の処方を「必ず」または「必要に応じて」行っていると答えた。

OTC化の懸念事項を解決するためには、妊娠の仕組みや避妊方法、DVや性暴力の防止などを含む性教育の推進を求める意見が多数あったとした。

賛成派の一部を「反対」で集計

このアンケートをめぐっては、医会が昨年10月の検討会に提出した資料の中で、OTC化に「賛成(条件付き賛成も含む)」と回答した医師の一部を「反対」に集計するなど、結果を「歪曲」したことが問題となった

検討会の委員からも、「産婦人科医の大多数がOTC化に反対しているかのように見える資料を、厚労省のサイトで公開し続けるのは問題」だと指摘する意見があり、資料は数日後に差し替えられた。

OTC化の要望者であり、産婦人科医や性教育に関わるNPOなどでつくる「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」は、医会の調査には、結果の歪曲だけでなく、誘導的な設問文や結論の飛躍があると指摘。

中立性や信頼性を問う公開質問状を医会に提出したが、回答は得られていないという。

アンケート結果を発表した日本産婦人科医会の種部恭子常務理事は、「産婦人科医がこうした懸念をしているから(OTC化を)承認しないということではなく、(OTC化された際に主に販売を担うことになる)薬剤師さんも同じことを経験すると思うので、それにどう答えるかを議論するための資料。現場における懸念事項は解決していただく必要がある」と、見解を述べた。

緊急避妊薬は「入り口」?

種部常務理事は検討会で、緊急避妊薬を購入するために処方箋が必要な現状において、緊急避妊薬は「平時の避妊につなげるための『入り口』であり、大事なチャンスと捉えている」と語った。

さらに、海外では性感染症予防の効果があるコンドームと、避妊方法としてより確実な低用量ピルなどを併用する「ダブルプロテクション」の避妊が主流であるのに対して、日本ではコンドームのみによる避妊が大多数であることを指摘。

「日本では(低用量ピルの)普及率が20年経っても増えていかず、コンドームという相手との関係性が一番影響をする方法が避妊法として使われている。これには大きな問題があって、(解決するためには)教育しかないと思う」と述べた。

「普段から産婦人科に行けないことが…」

しかし、検討会委員である産経新聞社の佐藤好美論説委員は、「仮に緊急避妊薬のOTC化が認められたとしても、平時の避妊が重要なのは変わらないわけで、(避妊方法に関する周知を)どのようにきちんと行っていくは異なる課題」だと反論。

性教育が重要である一方、「日本において、10代の女の子が普段から気軽に産婦人科に行くことが出来る環境がないことが1番の問題であって、産婦人科が(緊急避妊が必要になる際など)トラブルが起きた時にしか行かないものになっていることではないか」と批判した。

さらに、日本薬剤師会が発表した調査の中で、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの連絡先を「把握していない」と答えた薬剤師が6割を超えたことにも触れ、「産婦人科医の先生も、薬局の先生も、自分たちの持ち場から出ずにいるのではなく、地域に出て、自分たちに出来ることはないかということを考えて欲しい」と訴えた。

BuzzFeed Newsは3月11日、同医会と厚労省に対して、アンケート調査の結果がわかる資料を公開するよう求めた。回答があり次第、続報する。