法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法に反する」として、日本各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟。
東京地裁(池原桃子裁判長)で10月11日、第1次訴訟の審理の山場とも言える証人尋問が始まった。午前10時半から原告ら7人が自らの経験や思いを法廷で証言している。
自身もレズビアンで、この裁判の傍聴を続けてきたアーティストの鈴木恵里さん(https://twitter.com/eriire_4)のイラストとともに、尋問のやりとりを一部紹介する。
結婚式には「出たくない」
午前中は、原告の小野春さんと、小野さんのパートナーで同じく原告の西川麻実さんが証言台に立った。
小野さんと西川さんは、それぞれがかつて男性と結婚していた際に出産した子ども計3人と、5人家族で暮らしている。
小野さんと西川さんが2010年に結婚式を挙げたとき、西川さんの父親は当初、式に「出たくない」と言っていたという。
原告側代理人にその理由を問われると、西川さんは「同性愛者の他の人に会うのが怖いと言われました」と振り返った。
「父は、同性愛者が社会的に許されないことをしている変な人たちだと思って、怖いと感じていたのだと思います」
父親の同性愛者に対する偏見を感じる一方で、小野さんと子どもたちのことについては、「家族」と受け入れてくれていると西川さんは語る。
「小野と小野の子どもたちについては、私の大切な家族と思っていると思います」
「でも子どもたちを社会の偏見から守るために、家族のことを大っぴらにしない方がいいということは何度も言われています」
「でもママ、女同士の結婚は…」
一方、結婚式を挙げた当時、ふたりの子どもたちはまだ小学生だった。
原告側代理人に、子どもたちに結婚式を挙げることを説明したとき、どのように伝えましたか?と聞かれ、小野さんはこう答えた。
「ママと麻ちゃんは今度結婚式をするんだよということ、そしてLGBTという言葉があるんだよということを伝えました」
子どもたちはどんな反応を示したのか。小野さんは、小学校高学年だった長男が「でもママ、女同士は結婚できないんだよ」と言ったことを振り返った。
「長男は、結婚式を挙げるということは結婚することで、女性同士が結婚することは法律違反になるんじゃないかと思ったみたいで、それをすごく心配していました」
「なので、外国では女性同士でも結婚できる国があるんだよということ、結婚式をしても法律違反にはならないよということを説明したら、すごく安心した様子でした」
一歩外に出たら「家族」ではいられない
小野さんと西川さんは、子どもたちが小学校に通っている間、学校側にふたりの関係についてカミングアウトしていなかった。
国側の代理人からなぜ説明しなかったのかと問われ、小野さんは簡単にできた決断ではなかったと述べた上で、西川さんと何度も話し合い、「いまは子どもと自分たちの安全を第一に考えることにした」結果だったと説明した。
誰がどんな偏見を持っているかわからない。その不安から、西川さんも、家庭の外で愛する家族について話すことを、とまどい続けていたと話した。
それは子どもたちも同じだ。西川さんの尋問の際に、原告側代理人が取り出したのは、小野さんの長男が家族5人で海に行った日のことを描いた絵日記だ。
小野さんと西川さん、そして子どもたちの5人で楽しい1日を過ごしたのに、絵日記の中ではっきり描かれていたのは、小野さんと小野さんの次男と長男自身の3人だけ。
西川さんと西川さんの実子は、背景に溶け込みそうな棒人間として、どこか遠慮がちに描かれていた。
この3人と2人が区別された絵日記を見たとき、西川さんは「この子も私みたいに外で家族のことを話すのに苦労しているんだと不憫に思った」と言う。
「家族として幸せに暮らしているのに、家から一歩外に出たら、それが言えないかわいそうな子になってしまうと感じました」
小野さんにも似たような記憶がある。
小野さんの子どもが小学生の頃、休日の様子に関する作文で、西川さんのおもしろいエピソードを書いたら、先生が西川さんの名前に印をつけ、「これは誰ですか?」と書かれたことを証言した。
「その時はどうしたらいいかわからなかったので、息子と話し合うことができませんでした。そのあと、息子は家の外でパートナー(の西川さん)について話さなくなりました」
「自分たちのような家族は『想定されていない』と感じたのだと思います」