3年ぶりに自身の思いを赤裸々に綴ったエッセイ「ウチらメンタル衛生きちんと守ってかないと普通に土還りそう」(KADOKAWA)を出版したkemioさん。
自分の心とどう向き合うか。メンタルヘルスやセルフケアの大切さにも触れる本書には、新型コロナウイルスがkemioさんの生活に及ぼした影響が、色濃く滲んでいる。
「日常ってすぐに吹き飛んでしまう」
「この本にコロナの話題がこんなに入ることになってしまったこと自体が悲しくはあるけど、本当にコロナの衝撃は大きい。日常ってすぐに吹き飛んでしまうのねっていう実感が今もナウで続いてる」
kemioさんが生活の拠点としているニューヨークは、全米で最も新型コロナウイルスの被害が深刻だった地域の一つ。
New York Timesによると、ニューヨーク州だけで、550万人を超える人々が感染し、約6万8千人が命を落とした(6月13日現在)。
2020年3月から始まったロックダウンで、人影が消えたマンハッタンでの毎日は「普通に、冷静に、トラウマでした」とkemioさんは語る。
「プロセスしきれない」トラウマ
生活は少しずつ元の姿を取り戻しつつあるが、kemioさんはまだコロナ禍によって経験したトラウマを「プロセスしきれていない」と語る。
「今はみんな普通にマスクをして、自分達にできる限りのことをしながらコロナとたたかって、毎日世界で生きてますけど、あの(ロックダウン中の)期間って、誰しもが予想のできないところを生きて、めっちゃ怖くて、めっちゃ不安な毎日だったと思います」
「でも、気づいたらある瞬間から、なんかもう当たり前のように(コロナと)一緒に生きてやっていこうみたいな感じになっていて、(トラウマを)癒す時間がなかったというか、今でもプロセスしきれていません」
「だからなんかたまに『2020年はこういうことがあって、ロックダウンがあって』とかって話を聞くと、でもウチまだあの時期のことプロセスしきれていないなって思ったりします」
「立ち止まって全然いい」
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々のメンタルヘルスに影響を及ぼした。
経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表した調査によると、うつ病やうつ状態にある人の割合は、新型コロナが流行する前(2013年)は7.9%だったのが、2020年春には17.3%と倍以上になった。
アメリカでも2019年の6.6%から、23.5%と大きく増えている。
特に懸念されるのが、10代への影響だ。国立成育医療研究センターが2021年12月に実施した調査では、小学5~6年生の9~13%、中学生の13~22%に中等度以上の抑うつ症状がみられたという。
コロナ禍に襲った様々な変化に葛藤する10代に、kemioさんは「立ち止まって全然いい」とメッセージを送る。
「だってよくわかんないし、大人でも立ち止まってる人とかいっぱいいると思う。私も正直、そのうちの1人なので。だから大丈夫です」