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「2017年に『ホモ』という言葉をテレビで聞くとは思わなかった」フジ番組に批判

自らゲイだとカミングアウトしている松岡宗嗣さんも、テレビを見て「自分のセクシュアリティを笑いにするか、一切隠すしかないんだと思い込んでしまっていた」と話す。

9月28日夜にフジテレビ系で放送されたバラエティー番組で、30年ほど前に人気だったコントのキャラクター「保毛尾田保毛男(ほもおだ・ほもお)」が登場し、同性愛者を揶揄するようなやり取りが繰り広げられたことが、物議を醸している。

たけし「お前ら外国いったら死刑だぞ」「小学校の時こういう親父が公園で待ってた」 木梨「ホモなんでしょ?」 石橋「ホモじゃないの、あくまでも噂なの」 保毛田保毛男の鉄板のネタらしいけど、こうも露骨に「ホモ」という言葉や気持ち悪い的な… https://t.co/pBFlczfSox

「あんた、ホモなんでしょ?」

問題となった番組は、28日夜9時からフジテレビ系で放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念SP」。

かつて人気を集めたお笑いコントのキャラクターが複数登場し、なかでも銀座の町歩きコーナーに出てきた、とんねるずの石橋貴明さん扮する「保毛尾田保毛男」が、ゲイの男性に対する差別的な表現だと批判された。

濃い青ヒゲにピンク色の頬。扇子をなびかせながら現れた“保毛尾田”は、同じく30年前のキャラに扮した木梨憲武さんと共に登場した。

共演したビートたけしさんは“保毛尾田”たちの姿を見て、「別の国に行ったら死刑だぞこれ」「小学校のとき、こういう格好の親父が公園で待ってたよ。みんなで逃げたよ」と発言。

さらに木梨さんが「あんた、ホモなんでしょ?」と言うと、“保毛尾田”はくぐもったやや高い声で、「ホモでなくて、あくまでも噂なの」と答える場面が放送された。

LGBTへの差別だと批判

“保毛尾田”の登場を受けて、Twitterにはゲイの男性へのステレオタイプを笑いのネタにしていると批判が殺到した。

「ゲイを笑い者にして、それが本当に面白いのか」

保毛尾田保毛男(ホモオダホモオ)を、このご時世に再現するなんて、フジテレビはどういう神経しているのだろうか。 ゲイを笑いものにして、それが本当に面白いのか。 :『とんねるずのみなさん』30周年SPにタモリ・ビートたけし登場 https://t.co/DhI1GtfiRp

「普通にテレビ見てたら、自分と同じ少数者が笑い者にされてる状況を目にしないといけない」

自分の一番大事なチームメイトは性的少数者なんですよ。そいつが普通にテレビ見てたら自分と同じ少数者達が笑い者にされてる状況をまだ目にしないといけない。 ぼくらが見せているんですよ。笑うから。望むから。だからこんなものはもういらない… https://t.co/MRXjJZx0CX

「当時の自分はこれでゲラゲラ笑ってたけど…」

当時の自分はこれでゲラゲラ笑ってたし、一番好きな芸人は誰かと言われれば「とんねるず」と答える。今でも。 でも。時代は変わった。こういうのはやってほしくなかった。誰かが止めれたハズ。ノスタルジーで済まして欲しくはない。 https://t.co/0eYHA2vcQn

「本当に(テレビ制作者として)我々は猛省しなくてはならない」

これは本当に我々は猛省しなくてはならない。たとえ部署が違ってもテレビ制作者として/保毛尾田保毛男を放送するフジテレビの無神経、広がる視聴者の嫌悪感(秋元祥治) https://t.co/WHKZeSmSRm

また、LGBTの支援団体はフジテレビに抗議文を送った。さらに、「このキャラクターの話題になるたび、顔では笑いながら心の中ではホモであることが周りにバレたらどうしようと震えていた。名前を聞くだけで心が縮こまるのを感じた」とのも寄せられた。


「まさか2017年に『ホモ』という言葉をテレビで聞くことになるとは」

自らゲイだとカミングアウトし、LGBTを理解し支援したいと思う人(アライ)を増やす活動をしている松岡宗嗣さんは、BuzzFeed Newsの取材に対し、「まさか2017年に『ホモ』という言葉をテレビから聞くことになるとは思ってもみなかった」と話す。

松岡さんは放送前日に番組内容を知り、当日テレビで視聴した。

“保毛尾田”の見た目や話し方、出演者のやりとりを見て、「30年前に『ホモ』はこうした気持ち悪いものとして語られていたんだなと思い、それを改めて肯定している内容に嫌悪感を感じた」という。

一番懸念しているのは、周囲にカミングアウトしていないLGBT、特に子どもたちへの影響だ。

松岡さんも自分がゲイだと気付き、悩んでいた中高生の頃、テレビを見て「自分のセクシュアリティを笑いにするか、一切隠すしかないんだと思い込んでしまっていた」という。

「“保毛尾田”を見て懐かしいと感じる世代は、小・中学生の親になっている人も多いと思います。『やっぱり面白いな』『やっぱりホモは気持ち悪いな』と笑う親の隣に、もし自分のセクシュアリティを言えずにいる子がいたとしたら。それだけで、その子は家にいれなくなるほど追い詰められるかもしれない」

番組の制作者には、「LGBTの当事者と出会ってほしい」と話す。

「今回うれしかったのは『自分は非当事者だけど、何が面白いのかわからなかった』『マジョリティだからこそこういうのはいらないって言おうよ』って声を上げてくれる人が増えたことです」

「(“保毛尾田”が)懐かしいという気持ちがすごくあるんだと思いますが、時代は変わっています。当時は苦しんでいた人が声をあげられなかっただけで、今は当事者が可視化されて、当たり前に毎日を生きているということを見てほしいです」


フジテレビ「差別の意図はありませんでした」

フジテレビは今年5月の「東京レインボーウィーク2017」で、お台場にある本社を虹色にライトアップするなどして、LGBTへのサポートを表明してきた。

先日、お台場のフジテレビがレインボーにライトアップされるのを見に行き、本当に嬉しく思っていました。保毛尾田保毛男が放送され、言葉がありません。2017年になおこのような差別表現が繰り返され、職場や学校でのハラスメントにつながってし… https://t.co/Q36yIh4qQS

フジテレビの広報はBuzzFeed Newsの取材に対し、批判が殺到したことについて次のように答えた。

「本放送では、LGBTの方々を揶揄するような意図を持って、制作はしておりません。差別の意図はありませんでしたが、番組をご覧になって不快な思いをされた方がいらっしゃることについては、真摯に受け止め、今後の番組作りに生かしていきたいと思います」

また、「番組制作の詳細に関してはお答えしておりません」とした上で、“保毛尾田”を登場させた理由を、「1988年~1997年にかけて放送されていた、本キャラクターはあくまでも番組放送30周年ということで、本番組の歴史を振り返り、番組の人気キャラクターとして登場させたものです」と説明した。

ネット上で話題になった、同番組のスポンサーが降板したというについては、「スポンサー企業に関する質問についてはお答えしていません」とした。

スポニチによると、フジテレビの宮内正喜社長は29日、定例会見に出席。

批判の声が出ていることを受け、「これは30周年スペシャルで、30年間で作り出してきた色々なキャラクターで展開をしたわけですが、もしその時代が違っていて、不快な面をお持ちになった方がいたことは大変遺憾なこと。謝罪をしないといけない」と陳謝した。