相次ぐキャンセル、繁忙期に続く空室…。「また旅行を楽しめる日が来たら」と呼びかける宿オーナーの思い

    新型コロナウイルスの影響で、深刻な打撃を受けている宿泊業。北海道の24のゲストハウスが、来年春まで使える宿泊チケットを提供するクラウドファンディングを実施している。

    新型コロナウイルスの影響で、観光地や宿泊施設に経済的打撃が広がる中、北海道の24のゲストハウスが共同で、運営資金などを募るクラウドファンディングを実施している。

    主催したゲストハウスオーナーの男性は「北海道やゲストハウスの魅力を知っていただき、再び旅行が楽しめる日が来たときに、最初の旅先に選んでいただくことができたら嬉しい」と呼びかけている。

    北海道24のゲストハウスが参加

    プロジェクトには札幌市をはじめ函館市、釧路市、登別市、旭川市、小樽市など、道内各地の24のゲストハウスが参加している。

    支援をすると、来年春まで参加施設のどこでも使える宿泊チケットや、ゲストハウスオーナーたちが厳選した地元の観光情報などを受け取ることができる。

    すでに170万円以上の支援が集まっており、300万円を目標に支援を呼びかけている。

    プロジェクトページでは参加ゲストハウスを一軒ずつ紹介し、それぞれの宿に込めた想いや、北海道の様々な魅力を地元ならではの目線で発信している。

    「新型コロナが沈静した時に、会えるのを楽しみに」

    「この逆境をただ乗り越えるだけではなく、どうにか前向きに捉え、北海道のゲストハウスオーナーたちで手を取り合って、前に進んでいくことはできないか」

    「その思いが駆け巡り、『コロナが沈静化した時に、皆さんとお会いできることを楽しみにしています』という思いを込めて、北海道の魅力を伝える、温かく前向きなプロジェクトをやりましょうと、今回の企画が実現しました」

    そう語るのは主催者の一人で、札幌市にある「Guest House waya」を経営する合同会社Staylinkの柴田涼平さん(28)。大学卒業後に友人2人と起業し、札幌市と小樽市で計6軒のゲストハウスを経営している。

    「中国人は泊まっていますか?」

    柴田さんが新型コロナウイルスの影響を感じ始めたのは、中国・武漢市で感染が確認されたとされる昨年12月ごろ。

    じわじわとキャンセル数が増えていく中、1月28日に北海道で初めての感染者が確認されたことで、一気に拍車がかかった。

    「感染者が出たことが報じられると、多くの予約者から『中国人は泊まっていますか?泊まっているのであればキャンセルさせてください』という連絡が相次ぎました」

    「未知のウイルスへの恐怖はわかりますが、『中国人がいるなら泊まらない』という発言には、多くの中国人の友人を持つ者としても、とても歯がゆい気持ちにさせられました」と柴田さんは振り返る。

    緊急事態宣言「どの施設にも人がいない」

    例年、毎年2月上旬に開催される「さっぽろ雪まつり」の時期は連日満室が続く。しかし今年は空きベッドが多く、「いよいよ会社の存続に関わる深刻な事態になり得るのではと悟り始めました」と柴田さんは言う。

    そして2月28日、全国に先駆ける形で、北海道の鈴木直道知事が「緊急事態宣言」を発令した

    「緊急事態宣言が出た日を境に、3月の予約はほぼなくなりました。弊社では複数のゲストハウスを運営していますが、どの施設にも人がいないのはゾッとするような状況でした」

    3月のキャンセル数は200件にのぼり、4月も宿泊者がほぼいない状況が続いた。

    現在は6施設のうち半数を5月31日まで休業し、できるだけ経費を削減した上で、金融機関などからの借り入れ、雇用調整助成金の活用などを検討している。

    「おそらく、この先数カ月は何とかしのげるゲストハウスが多いと思いますが、一番危惧しているのは、北海道の繁忙期である7、8月も客足が途絶えてしまうことです」と柴田さんは言う。

    「そうなった場合は、おそらくより多くのゲストハウスが潰れていくと思います」

    全国で100件の経営破綻

    日本政府観光局の統計によると、今年3月に日本を訪れた外国人観光客は、前年比マイナス93%だった。

    東京商工リサーチによると、新型コロナウイルスの影響を受けた経営破綻は、全国で100件にのぼった(4月27日現在)。そのうち最も多いのが宿泊業で、21件だった。地域別でも、最多の東京都(24件)に次いで多いのが北海道(11件)だ。

    柴田さんは「これまで蓄えてきた資金や生み出してきた物の価値が一瞬で消え去りそうになってしまうという、残酷な現実と直面した時、『この社会に何を残したいのだろう?』という思いが芽生えてきた」という。

    プロジェクトページにはこんな言葉が綴られている。

    「この社会に残したいものはたくさんあると思います。私たちはゲストハウスという出会いと発見に恵まれ、新しい世界への扉になりうるような素敵な場所を、これからもずっと残していきたいです」

    柴田さんは「私たちだけでなく、多くの人たちが大変な状況下にいると思います。まずは、一緒にこの状況を乗り越えていきましょう」と語る。

    「そして、新型コロナウィルスが収束し、再び旅行を楽しめる時が来た日には、皆さんの最初の旅先に選ぶ場所が北海道であり、このクラウドファンディングを通して知ってもらえた、どこかのゲストハウスに泊まっていただけたら、心から嬉しいです」

    クラウドファンディングのページはこちら(https://camp-fire.jp/projects/view/246318)から。


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