「今は別府行くより草津行こうぜ」 別府市の新聞広告に称賛の声

    「横綱同士、張り合ってこそのライバルですから」

    「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」そんな一見、挑戦的なコピーが書かれた新聞広告が話題を呼んでいます。

    「今は、別府行くより、草津行こうぜ。」 という広告。一瞬草津が出した挑戦的な広告かと思ってよくみたら、実は別府が出してて「どういうこと?」となり、最後しっかり「なるほど、良いな...」と思わせる。 草津に興味持たせながら自分た… https://t.co/SZ6m9lrJPO

    2月16日に西日本新聞の朝刊に掲載されたこの広告を出したのは、日本随一の温泉郷として知られる群馬県草津町…ではなく、同じく日本を代表する温泉の街、大分県別府市

    なぜ別府市は、ライバルの草津温泉を宣伝する広告を出したのか。

    背景には、2016年の熊本地震で風評被害にあった経験から、草津白根山の噴火で宿泊客が減少していた草津温泉を応援したいという思いがありました。

    1週間で3万3千人がキャンセル

    草津白根山が噴火したのは、1月23日。スキー場で訓練中だった自衛隊員1人が死亡し、11人が怪我を負いました。

    気象庁は当日開いた会見で、「草津温泉や居住地に噴石が飛来する恐れはなく、噴火の影響はない」と発表しましたが、草津町観光課によると、噴火から1週間で3万3千人の温泉客が宿泊をキャンセル。

    被害総額は、およそ3億円となりました。

    別府温泉も13.7億円の損害

    草津温泉の置かれた状況が他人事ではなかったのが、別府市。

    市観光課によると、2016年4月に発生した熊本地震では、当時旅館ホテル組合に所属していた市内の温泉宿112軒中、111軒が翌日から通常営業を再開したものの、8日間で11万人分のキャンセルが発生。

    被害総額は13.7億円に上りました。

    また、地震から数週間後に迎えたゴールデンウィークの期間中も、宿泊者数は前年度比で33%減少。同じ水準に戻るまでに半年以上を要したと言います。

    「別府市はもともと観光の街で、働いている人のほとんどが何らかの形で観光に携わる仕事に就いています。だから温泉に宿泊するお客さんが減ってしまうことが、街にとって一番の損害なんです」

    「そのため、草津温泉さんが噴火の影響を受けていると聞いたとき、同じ自然災害で風評被害を受けた者として何かできないかと考え、今回の広告を出させていただきました」と観光課の担当者は言います。

    また、別府市が2017年度に実施した「別府温泉の恩返し」事業の一環で、草津温泉から温泉11トンを分けてもらったこともあり、改めて恩返しをしたいと考えたそうです。

    「元気であってこそライバル」

    そんな草津温泉が15年連続、観光経済新聞社が選ぶ「にっぽんの温泉100選」の1位に君臨し続けるなか、別府温泉は2017年が3位、2016年は2位。一歩及ばずにきました。

    でもライバル関係にあるからこそ、早く元気を取り戻してほしいと担当者は言います。

    「向こう(草津)が東の横綱であれば、うち(別府)は西の横綱の立ち位置で称されることがよくありますが、相手が弱ったからといってうちがトップを取るのも違いますよね、と」

    「張り合ってこそのライバルというか、横綱同士やりあって、切磋琢磨して、温泉地として成長していければいいなと思います」

    草津町温泉課の担当者も「草津が横綱でいてもらってこその目標であり、ライバルであると応援してくださる。そういう気持ちはありがたい話ですよね」と話しました。

    BuzzFeed JapanNews