街に見守られ育った「どん兵衛スワローズ」。ついに、巣立ちの日がやってきた。

    「感慨もひとしおです」

    兵庫県の住宅街にある小さなビルの一階に、どん兵衛のカップで作られたツバメの巣がある。

    そこで暮らすのは、もうすぐ巣立ちの日を迎える6羽の雛たち。その凛々しくも愛らしい写真がTwitterで話題を集めている。

    写真を撮影したパヤさんによると、このビルでは毎年春に巣作りに来るツバメたちが風物詩となっていたが、風や雨で巣が壊れたり、ヘビやカラスなどの天敵に雛たちが襲われたりしていた。

    そのため、5年ほど前にビルのオーナーが「少し頑丈な家を」と、ツバメたちのためにこの「どん兵衛ハウス」を設置した。

    巣の下には「ツバメが来ました」「巣篭もりしています」「雛が生まれました」「まもなく巣立ちです」など、ツバメの近況をお知らせする看板も立てられている。

    「老若男女、ちびっこからお年寄りまで、みんな足を止めて『どん兵衛スワローズ』たちを見守っています。癒されている人も多く、街のアイドルです」

    そう話すパヤさんも、毎日の通勤でついつい観察してしまうという。

    「やっぱり毎日、ちゃんと生まれた数の雛たちがいるかどうか確認してしまいますね。エサを求めて大きい口を開き、懸命に鳴いている姿を見ると、命の尊さを感じますし、また親のような愛おしい気持ちになります」

    「もちろん雛たちが元気だと、僕も元気出ますしね」

    だが、雛たちが巣立つのはそう簡単なことではない。

    「今までは巣から落ちたり、天敵に食べられてしまう雛たちもかなりいたんです。だから、このように6羽もすくすく育って、すし詰め状態のどん兵衛ハウスを見るのは、僕も初めてです(笑)感慨もひとしおです」

    パヤさんによると、31日午後5時ごろまでに4羽が巣立っていったという。

    新しい世界へ旅立つ「どん兵衛スワローズ」たちにパヤさんが伝えたいことは、ひとつ。

    「来年また帰ってきてね、と。それだけ伝えたいです」


    巣立ちを前に、嘴を真一文字に結び、強い眼差しで先を見据える。うん、お前らならきっと大丈夫さ。