「14歳の自分と先生の関係は“恋愛”ではなかった」ある大学生が立憲民主党に求めていること

    性交同意年齢をめぐる立憲民主党の本多平直・衆議院議員の発言が、批判を呼んでいる。署名活動を始めた大学生は14歳の頃の経験を振り返り、「自分が性的な行為について理解し、同意する能力があったとは思えない」と語る。

    立憲民主党の本多平直・衆議院議員(56)が、刑法の性交同意年齢をめぐり、「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言し、批判が高まっている

    立憲民主党は、子どもの人権や性交同意年齢をめぐる問題について、適切な認識を持っているのかーー。

    そう問いかけ、党内で理解を深めるよう求める署名活動を、19歳の大学生が始めた。彼女が強い憤りを抱く背景には、自分自身が14歳の頃に経験した出来事がある。

    問題の経緯を振り返る

    問題の発言があったのは、「性交同意年齢」の見直しに向けた議論が行われていた立憲民主党の性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム。

    性交同意年齢とは、性行為をするか否かを自分で判断できるとみなされる年齢の下限を指すものだ。現行の刑法では「13歳以上」とされており、明治時代から110年以上改正されていない。

    この年齢に達していない子どもと性行為をした場合は、同意の有無を問わずに処罰の対象となるが、13歳以上であれば、被害に遭った場合も成人などと同じように扱われる。

    諸外国では同意年齢の引き上げが進んでおり、法務省の性犯罪に関する刑法改正の検討会でも議題になっていた。

    性交同意年齢、日本は明治時代から変わっていない。 世界では引き上げが進んでおり、韓国では5月に13歳から「16歳」に変更されました。 性暴力被害者の支援団体などは年齢の引き上げを求めています。 https://t.co/wBY7B59BWu

    Twitter: @HuffPostJapan

    本多議員の発言は、年齢差などを利用した子どもに対する性暴力に対する問題意識に欠け、「守りたいのは(子どもに対して)性加害をする権利では」などと批判の声が上がった。

    本多議員は「中学生を保護するために成年を処罰するという考え方に賛成している」「(刑法は)人を処罰する法律なので、例外や本来は想像できないような限界事例をどう考えるか、幅広い緻密な検討をしたいと考えていた」などと釈明。発言を謝罪し、撤回した。

    立憲民主党もワーキングチームでは了承を見送った、同意年齢を16歳に引き上げる方針を盛り込んだ党見解をまとめた

    今後は外部有識者で作るハラスメント防止対策委員会で、発言の経緯などについて調査し、今後の対応を決めるという。

    19歳の大学生が署名を開始

    署名を始めたりんりんさん(19)は、都内の大学に通う学生だ。大学で性交同意年齢について研究をしており、日本の性犯罪に関する刑法が持つ問題について関心を持ってきた。

    「本多議員の発言を知ったのは、報道があった日の深夜でした。ツイッターのトレンドにそのニュースが入っているのを見た瞬間は、信じられないというか、国会議員からこんな発言が出てしまうのかと、絶望感がありました」

    りんりんさんがこの問題について、強い憤りを感じる背景には、自分自身が14歳の時に経験した出来事がある。

    りんりんさんは当時、家庭環境に苦しみ、一人で悩みを抱えていた。そんなとき、10歳以上年上で20代の教員と親しくなり、悩みを打ち明けるようになった。

    「当時は家庭の問題についてすごく悩んでいたので、相談できる大人ができたことがすごく救いで、自分の拠り所になっていました」とりんりんさんは語る。

    相談する時間が増えるうちに、学校外でも教員と二人きりで会うようになった。身体を触られるなど、性的な行為をされることもあったという。

    セックスなどの行為について知ってはいたもの、性的同意や適切な避妊方法など、自分を守るための手段を身に付けていたとは言い難い。14歳の自分を、りんりんさんはそう振り返る。

    教員と自分の関係が、子どもを“手なづける”ことで性行為に及ぶ「グルーミング」に当てはまることに彼女が気付いたのは、大学に進学してからだった。

    「グルーミング」とは

    アメリカ法曹協会は、子どもに対する性的虐待における「グルーミング」の特徴として、加害者が標的を絞り込み、被害者の信頼を得るなどして、隔離した場で接近できる手段を確保し、関係性の主導権を握ることなどを挙げている。

    グルーミングとは、子どもと接近する機会や二人きりになる時間を得ることを目的に、子どもやその周囲の大人の信頼を得る行為などを含んだ加害者の用いる手法。

    …子どもやその家族を手なづけるために、加害者は子どもを世話するような役割を担い、子どもの味方となり、その信頼と自らの権威を悪用する。こうした加害者は、子どもの周囲にいる大人とも意図的に関係性を築いたり、大人による監視の目が薄い子どもを標的とする。

    (アメリカ法曹協会「子どもの虐待事件における性的なグルーミングとは」)

    りんりんさんの場合、教員は相談相手になることで、りんりんさんの信頼を得ていただけでなく、りんりんさんの保護者とも交流し、親密な関係を築いていたという。

    「14歳だった自分は、相手の教員を信頼して好意を抱いていたし、10歳以上年上の大人とも対等な関係が持てると思い込んでいました。でも今振り返ると、自分が性的な行為について理解し、同意する能力があったとは到底思えません」

    りんりんさんは当時の自分を、そう振り返る。

    「相手も私が悩んでいることを知り、助けたいと思ってくれてはいたと思います。でも本当に真摯に助けたいという気持ちがあったなら、そういう行為をするべきではなかったと思います」

    「子どもの人権を守るのは大人」

    りんりんさんは当時の経験について、被害を改めて申し立てたいという意思はない。

    ただ、自分と同じような状況に置かれ、被害を経験している子どもたちは少なくないはずだと訴える。

    「14歳の時、私は『性交同意年齢』について何も知らなかったし、13歳以上とされていることも知りませんでした。知らないのに、いつの間にか法律では性的な行為に大人と同じように同意できるものとみなされていたんです」

    「子どもは自分の権利が侵されていることに、自分で気付いて、助けを求めて発信することができません。だからこそ、大人が責任を持って、その役割を担わなければいけないと思います」

    署名では、①子どもの人権や大人と子どもの性交同意の問題点について党全体で学び直すことと、②党から独立したハラスメント防止対策委員会が発言について詳しく調査すること、③枝野幸男党首をはじめとする党の上層部が、今回の問題について説明をし、今後の方針を明らかにすることを求めている。