「緊急避妊薬へのアクセスは女性の権利」「科学的根拠に基づいた議論を」 厚労省検討会へ要望を提出

    緊急避妊薬のアクセス改善を求める声が高まるなか、「スイッチOTC医薬品」の候補とし、薬局販売に向けた検討を進めるよう求めて、NPOや産婦人科医でつくる市民団体が厚生労働省に要望を出した。

    避妊の失敗や性暴力被害を受けた際に、望まない妊娠を防ぐために使われる「緊急避妊薬(アフターピル)」。

    アクセス改善を求める声が高まるなか、NPOや産婦人科医でつくる市民団体「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」が5月28日、緊急避妊薬を「スイッチOTC医薬品」の候補とし、薬局販売に向けた検討を進めるよう求めて、厚生労働省に要望を出した。

    6月7日には次回の検討会が開かれ、緊急避妊薬についてどのように検討を進めていくか、議論される予定だ。

    緊急時に入手することが困難

    緊急避妊薬は、妊娠の可能性がある行為から72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を避けることができる薬。性行為後、早く飲むほど妊娠を防ぐ確率は高くなる。

    WHO(世界保健機関)の必須医薬品に指定されており、世界約90カ国では、処方箋なしで薬局で購入することができる。

    しかし、日本では医師の診察を受ける必要があり、費用も診察料を含めて約6000円~2万円前後と、他国に比べて高く設定されている。そのため、「すぐに病院に行くことができない」「費用を払えない」など様々な理由から、緊急時に入手するのが困難な状況が続いている。

    こうした状況を受けて、「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」がアクセス改善を求めて呼びかけたオンライン署名には、11万5千筆近くの賛同が寄せられた(5月28日現在)。

    「スイッチOTC医薬品」とは

    「スイッチOTC医薬品」の「OTC」は、「Over The Counter=薬局カウンターなどで薬を買うこと」の略。

    医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」から、薬局などで購入できる「一般用医薬品」や、薬局で薬剤師の対面販売を通じて購入できる「要指導医薬品」にスイッチしたものが、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれている。

    厚生労働省の検討会では随時、「スイッチOTC医薬品」の候補として検討すべきものを市民や団体、学会、企業などから募集しており、今回の要望もその一環だ。

    緊急避妊薬をめぐっては、2017年の検討会でも要望を受けた検討が行われたが、「性教育が遅れていて、使用者のリテラシーが不十分」「安易な販売、悪用・乱用などへの懸念がある」などの理由で否決された。

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    今回「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」は、スイッチOTC化を要望する理由として、次の4点を挙げている。

    1. 新型コロナウイルス感染拡大の影響による意図しない妊娠、性暴力、DVなどの相談が増加しており、WHOなどの国際機関から「緊急避妊薬へのアクセスを確実にすること」を求める提言が出ていること

    2. 緊急避妊薬のオンライン診療が解禁されたものの、迅速な入手経路としては、依然として高いハードルが存在していること

    3. 薬剤師を対象とする緊急避妊薬の調剤に関する研修会が全国で実施され、約9000人の薬剤師が研修を終えたこと

    4. 内閣府男女共同参画局の専門調査会が「第5次男女共同参画基本計画」の中で、「専門の研修を受けた薬剤師が、十分な説明の上で対面で服用させることなどを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう、薬の安全性を確保しつつ、当事者の目線に加え、幅広く健康支援の視野に立って検討する」との方針を示したこと

    2017年の検討会で出された懸念点についても、WHOの発表などをもとに反論を重ねた。

    「使用者自身が避妊に成功したか、失敗したかを判断することが困難」という点については、月経が来たことで判断したり、妊娠検査薬を用いたりできることを指摘。

    「使用者自身のリテラシーが不十分」だとされた点についても、WHOが緊急避妊薬の安全性に関するファクトシートの中で「若い女性も成人女性もラベル表示と説明書を容易に理解できると実証されている」と述べている点などを示した。

    また、「悪用」や「濫用」の懸念については、避妊や性暴力についての知識の啓発は重要とした上で、もし繰り返し使用することがあっても、既知の健康リスクはないことや、万が一、妊娠初期に誤って飲んでも胎児に害を与えることはないことが、WHOの報告で示されていると指摘した。

    科学的根拠に基づいた議論を

    プロジェクト共同代表で産婦人科医の遠見才希子さんは、緊急避妊薬へ安心してアクセスできる環境は「女性の権利に関わる問題」だと強調する。その上で、WHOをはじめとする国際機関が発表している科学的な根拠に基づいて、議論を進めていく必要があると語る。

    「これまでの検討会の経緯や議事録を振り返ると、『男児が女性化するリスクがある』『健康被害につながることもある』など、科学的根拠を確認できない議論が多くあり、個人的な意見が強く影響されていると感じました」

    「どれだけ気をつけていても、避妊の失敗などは誰にでも起こり得ることです。すべての女性が安全で満足できる性生活を営んだり、子どもを産むかどうか決める権利と自由を持っています」

    「これを機会に、社会全体で緊急避妊薬に関する正しい知識を共有し、科学的な根拠に基づいて、誰のための薬で、何を一番大切にしないといけないのかを考えながら、健康と権利を土台とした議論ができるのではと期待しています」


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