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「それぞれが自分の身体と人生を守るため」緊急避妊薬の知識をすべての人へ。

緊急避妊薬の市販薬化をめぐる議論が続くなか、性の健康に関する適切な情報を届けるため、啓発活動への支援を求めるクラウドファンディングが実施されている。

避妊に失敗したり、性暴力を受けたりした際に、望まない妊娠を防ぐために使われる「緊急避妊薬(アフターピル )」。

市販薬化をめぐる議論が続くなか、緊急避妊薬や性の健康に関する適切な情報を届けるため、啓発活動への支援を求めるクラウドファンディングが実施されている。

支援を募っているのは、緊急避妊薬へのアクセス改善を求めて活動している医師や性教育に関するNPOなどでつくる「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」。

集まった資金は、学校や医療機関で活用できる啓発リーフレットやウェブサイトの制作に充てる予定だ。

緊急避妊薬を薬局で

緊急避妊薬は、性交から72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を避けることができる薬。性交後、早く飲むほど妊娠を防ぐ効果が高くなる。

WHO(世界保健機関)の必須医薬品に指定されており、世界90カ国以上では、処方箋なしで薬局で購入することができる。

しかし、日本では医師の診察を受ける必要があり、価格も約6000円~2万円ほどと、他国に比べて高価に設定されている。そのため、特に若年層などを中心に、緊急時に入手するのが困難な状況が続いていると問題視されている。

こうした状況を受けて、「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」がアクセス改善を求めて呼びかけたオンライン署名には、11万筆以上の賛同が寄せられている(5月7日現在)。

薬へのアクセスと性教育を「両輪」で

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緊急避妊薬の市販薬化に向けた議論が続く中で、たびたび取り沙汰されてきたのが「性教育の遅れ」だ。

2017年に開かれた厚生労働省の検討会でも、「性教育が遅れていて、使用者のリテラシーが不十分」「安易な販売、悪用・乱用などへの懸念がある」などの理由が挙げられ、緊急避妊薬の市販薬化は「時期尚早」との結論が出された。

2020年末には、内閣府男女共同参画局の専門調査会が「第5次男女共同参画基本計画の策定にあたっての基本的な考え方(案)」の中で、「専門の研修を受けた薬剤師が、十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する」との方針を示したことで、市販薬化をめぐる議論が再燃。

しかし、日本産婦人科医会の木下勝之会長は「今日の性教育が、中学生ではいわゆる性交や避妊という言葉すら使ってはいけない現状を考えると、私たちはただどんな時でも薬局で買えるということ自体がそもそもおかしい話なのではないか」と述べ、反対の姿勢を示した

こうした声に対して、「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」メンバーで産婦人科医の遠見才希子さんは、「万が一は誰にでも起こりうるため、緊急避妊薬はバックアップとして不可欠。性や避妊方法に関する知識があっても、実際に手に入れやすいシステムがないと、その知識は活かされない」と言い、緊急避妊薬へのアクセス改善と性教育の充実は、両輪で進めていくことが重要だと指摘する。

今回のクラウドファンディングを通じて制作するリーフレットでは、主に10~20代の若年層に向けて、緊急避妊薬に関する情報だけでなく、コンドームやピルなど様々な避妊方法の紹介や、妊娠を確認する方法、適切に避妊をするための情報なども盛り込む予定だ。

また、学校・医療機関等への情報提供支援もあわせて行っていくことを目指している。

一人ひとりの思いや行動を応援する情報を

プロジェクトメンバーの染矢明日香さんが理事長を務めるNPO法人ピルコンには、10~20代から性に関する相談が多く寄せられる。

「アフターピルを飲んだけど、その後どう効果を確認したらいいかわからない」「避妊の成功率は何パーセントくらいですか?」「薬の副作用が出たらどうしたらいいですか?」など、相談内容は様々だ。

「医療機関でこんなことを聞いていいのかな?とハードルを感じたり、緊急避妊薬を服用すること自体が『だらしない』『いけないこと』とされる風潮があったりすることで、誰にも相談できなかったりする人はきっと多くいるはず」

「でも性に関する知識をつけて、必要な避妊方法を実践していくことは、自分の身体や人生を守るための前向きなアクションだと思います。そうしたそれぞれの思いや行動を応援できるような情報を発信していきたいと思っています」

クラウドファンディングの期限は5月10日まで。3段階の目標金額を設定しており、これまでに430万円の支援が寄せられている。


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