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経口中絶薬のパブコメ開始。どんな薬?使い方は?「時代遅れな中絶法」に代わる選択肢となるか

薬を飲むことで人工妊娠中絶ができる「経口中絶薬」について、2月1日からパブリックコメントの募集が始まった。

薬を飲むことで人工妊娠中絶ができる「経口中絶薬」について、2月1日からパブリックコメントの募集が始まった。国内での製造販売を認めるべきか、どのような方法で管理するべきかなど、市民から広く意見を募る。

パブコメの締切は2月28日。その内容を受けて、薬事分科会で審議を続ける予定だ。承認されれば、日本で初めての経口中絶薬となる。

臨床試験では93.3%が中絶に成功

今回、国内での製造販売が検討されているのは「メフィーゴパック」という、2つの薬を組み合わせて飲む経口中絶薬。

妊娠9週までの初期妊娠が対象で、まず妊娠の維持に必要なホルモンの働きを止める薬「ミフェプリストン」を飲み、36〜48時間後に、子宮収縮を起こして内容物を排出させる薬「ミソプロストール」を服用する。

国内で行われた臨床試験では、2つ目の薬の服用後24時間以内に、93.3%が中絶に成功。副作用として、約6割に腹痛や嘔吐などの症状が見られたが、ほとんどが軽度または中等度だった。

2021年12月にイギリスの製薬会社「ラインファーマ」が承認申請し、1月27日に、厚労省の医薬品第一部会が「承認して差し支えない」との見解を示した。

しかし、「社会的な関心が極めて高い薬のため、慎重な審議が必要」だとして、パブリックコメントを実施することになった。

実際にどのような形で、薬を飲むことが想定されているのか。部会では、国内で十分な使用経験が蓄積され、安全に薬を使用できる環境が整うまでは、「緊急時に適切な対応を取れる医療機関で使用する必要がある」と判断。

そのため、入院が可能な有床の医療機関において、外来か入院で投薬することとし、母体保護法指定医師の確認を受けながら、その場で服用することとしている。

また、母体保護法では、人工妊娠中絶は「本人及び配偶者の同意を得て」行うものとされている。経口中絶薬が承認された場合も、この規定が適用されるという。

世界で広く認可、WHO「安全な中絶法」と推奨

経口中絶薬は1988年にフランスで初めて承認され、ミフェプリストンは少なくとも世界65カ国以上、ミソプロストールは90カ国以上で広く認可されている。

WHOは安全な中絶方法として、経口中絶薬の使用を推奨しており、必須医薬品にも指定している。

一方、日本ではこれまで、中絶を希望する場合は、医師による外科手術を受ける以外に選択肢がなかった。

日本産婦人科医会が2012年に実施した全国調査によると、中絶手術の約3割が子宮内に器具を入れて、内容物を掻き出す「搔爬(そうは)法」を用い、約5割が内容物を吸い出す「吸引法」と「搔爬法」を併用する形で行われていた。

WHOは「搔爬法」は安全性が低く、「時代遅れな手法」だとして、「吸引法」や中絶薬の服用に置き換えるべきだと呼びかけていた。


経口中絶薬をめぐるパブリックコメントは、2月28日が締め切り。「e-gov」のページで資料の閲覧や意見の提出ができる。