メキシコ人をレイプ魔と一括りし、月経の女性を馬鹿にする−−。アメリカ大統領選挙に共和党からの立候補を目指すドナルド・トランプ氏(69)は過激な発言で注目を集め、日常に不満を持つ有権者を酔わせてきた。
ニューヨークで不動産業を営む裕福な家庭に生まれ、父親の事業を継いで成功。オフィスビルやホテルを展開し「アメリカの不動産王」と呼ばれる。高級マンション「トランプタワー」にはヤンキースの田中将大投手夫妻も住むと報道されている。
貿易で日本批判
矛先は日本にも。出馬会見では「われわれが日本を打ち負かしたのはいつだ? 日本は数百万の車を送り込んでくる」と不満をあらわにし、「シボレーを東京で最後に見かけたのはいつだ? ないんですよ、みなさん。いつも我々は打ち負かされている」と挑発した。(インディペンデント紙は日本でシボレーが走っていると報道)
われわれは日本が関税ゼロで数百万の自動車を売るのを許している。彼らと貿易取引はできない。我が国はひどい目にあっている!
他国を批判して、アメリカ人の不満を昇華する話法は得意芸だ。
8月16日のテレビ番組では「中国、メキシコ、日本から雇用を取り戻す」と主張。日米貿易は不均衡で「日本は、アメリカの牛肉も小麦も受け取ろうともしない」と攻撃した。
こうした考えは20年以上遡る。
1990年の著書「Trump: Surviving at the Top 」(トランプ:トップにいつづける)では、「日本からの輸入品には20%の関税をかけるべきだ」と主張。その収入で、財政赤字を減らし、アメリカの貧しい地域の教育費や医療費をまかなうべきだとしている。
もし、日本が対抗措置でアメリカからの輸出品に関税をかけてきても「取るに足らない」とこき下ろした。
TPPも反対
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には真っ向から反対。「TPPは最低の協定だ」として、「ないほうがいい。むしろ個々の国とそれぞれに協定を結ぶ」と表明。「われわれは貿易で多くのものを失っている。中国、日本、メキシコだ」などと声を荒らげた。
オバマ政権の弱腰も批判している。2015年8月21日にはアラバマ州で、安倍首相は「とても賢く」て、ケネディー駐日大使は丸め込まれていると指摘。「(日本が)欲しがることをなんでもやるだろう」と息巻いた。
CNNの単独インタビューでも日本や中国に強硬姿勢で臨む考えを鮮明にしている。
日本人をバカに
8月25日のアイオワ州での集会では、日本人と中国人のモノマネをして笑いものに。
日本や中国と交渉するとき、この人たちは部屋に入ってきて、こうは言わないんだ。「こんにちは。天気はどうですか。外は素晴らしい天気ですね。ヤンキースの調子はどうですか。絶好調ですよ」
その代わりに「ワタシタチ、トリヒキ、シタイ」といきなり言ってくるんだw
日米安保も疑問視
時事通信によると、8月25日、アイオワ州であった集会で、日米安全保障条約は「不公平だ」と指摘。日本が攻撃されたときはアメリカが助けるが、逆はないと問題視した。(ただ、27日に安保条約の破棄は否定。)
日系人の強制収容も否定せず
トランプ氏はイスラム教徒の入国を拒否しただけではなく、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の強制収容も否定しなかった。
1942年からフランクリン・ルーズベルト大統領(当時)は日系アメリカ人12万人を強制収容所へ送り込んだ。財産を失った日系人は戦後、ゼロからのスタートを余儀なくされた。レーガン大統領(当時)は1988年になって、正式に謝罪している。
この強制収容についてトランプ氏は、米タイム誌のインタビューに「そのときその場にいてみないと(賛否に)適切な答えはできない」と話した。
この発言に日系コミュニティーは猛反発。幼少期を強制収容所で過ごした米俳優ジョージ・タケイ氏は、自身の体験をもとにしたブロードウェイ・ミュージカル「アリージェンス」(忠誠)を見にくるように呼びかけた。
トランプさん。ジョージ・タケイです。(トランプ氏のNBCのテレビドラマ)「アプレンティス」で私を「解雇」しましたよね。覚えていますか?
アメリカ大統領を目指す途中で、多くの人が困惑することを言いましたよね。困惑するのは、あなたの発言内容のせいだけでなく、発言に賛同するアメリカ人が多いようだからです。
タイム誌に第二次世界大戦中に日系アメリカ人の強制収容に賛同したかもしれないと発言しました。「難しいことで、そのときその場にいてみないと適切な答えはできない」と。
トランプさん。わたしはそこにいました。あなたもそこにいることができますよ。ブロードウェイに「アリージェンス」を見に来るようにご招待します。本当にあった強制収容の話をドラマ化した作品です。それがどんなに難しいことだったか知りたければ、座席に快適に座ったまま、そこにいることができますよ。わたしたちと一緒に収容所に。わたしの家族のような家族たちにとって、どんな体験だったかを垣間見ることができます。恐怖に駆られた政治のせいで押し込められました。あなたの選挙キャンペーンもそうでしょう。
挑戦します。臆病者でないなら、アリージェンスをみにいらっしゃい ;)
当初はまったく本命視されていなかったトランプ氏だが、2016年2月1日のアイオワ州から始まった序盤4州の戦いで3連勝。マルコ・ルビオ上院議員(44)とテッド・クルーズ上院議員(45)を振り切れるかに注目が集まる。
大統領選挙の候補者選びは、予備選挙や党員集会が集中する3月1日の「スーパーチューズデー」でひとつの山場を迎える。