「お前、なんで泣いてんの?」山田裕貴が甲子園で号泣した理由

    山田裕貴が映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』に出演。「大歓声のなかで、あんな風に泣いてたのは一人だけだった」と高校生の頃の号泣体験を明かした。

    「日の丸飛行隊」の一員として1994年のリレハンメル五輪のスキージャンプ団体戦で銀メダルを獲得するも、1998年の長野大会では日本代表に落選――。

    裏方のテストジャンパーとしてオリンピックを支えた西方仁也の苦悩と再起の軌跡を、田中圭の主演で映画化した『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』が公開されている。

    西方の仲間で、聴覚障害のあるテストジャンパーを演じた山田裕貴が、かつて打ち込んでいた野球をあきらめ「一回、終わった」という自身の挫折体験を振り返った。

    「補欠でもいいや」ぶつかった壁

    ――元プロ野球選手(中日、広島)で現広島コーチの山田和利さんを父に持ち、裕貴さん自身も中学生の頃まで野球に打ち込んでいたそうですね。

    中学の時に入っていたクラブチームは、毎年のように全国大会とかに出てました。

    でも僕は補欠・準レギュラーぐらいの、出たり出なかったりみたいな感じで。最後の方はもう、「補欠でもいいや、みんなに迷惑かけないし」と思いながらやっていました。

    高校は帰宅部で遊びたかったのに、父親に「帰宅部だけは許さないからな」と言われて。何なんだよと思いながら、なんとなく友達がいたバレーボール部に入って……。

    高3で野球部が甲子園に出場した時に応援に行ったら、同じクラブチームだった子が4番を打っていました。

    キャッチャーでキャプテンだったクラスメートの親友も、初回初球先頭打者ホームランを打って。山田祐輔君って今、東邦高校の監督やってますけど。

    「あっ、俺一回終わったわ」

    ――仲間たちの大活躍を間近で目にしたわけですね。

    その時に、「ああ、この人たちは人生をあきらめなかった人たちだ……」と思ったんですよ。

    僕はあきらめて、ユニフォームも着ずにスタンドでただ応援してる。「あっ、俺一回終わったわ」と思って。自分で人生、あきらめたじゃんって。

    甲子園のサイレンが鳴ってる時、試合が始まったところで涙が止まらなくて。自分でもワケがわからなかったです。

    周りに「お前、なんで泣いてんの?」と言われて。お芝居では絶対にできないぐらいの量の涙が、もうブワーって止まらなかった。

    大歓声のなかで、あんな風に泣いてたのは一人だけだったと思います。

    なんで涙が出るのか……ああ、俺は終わったんだ。次に絶対やるって決めたことは、最後までやらないといけないな、と心に決めました。それは親父にも言われましたけど。

    「選手」になりたい

    ――お父様は何と?

    野球をやめた時に、「俺は野球をやれとは言ってない、なんで自分でやるって言ったことを最後までやらないんだ?」ってことだけ言われて。

    その時は意味がわからなかったんですけど、ああ、こういうことを言ってたのか。俺が後悔することをわかって言ってたんだなと。

    ――そこから本格的に俳優を目指したわけですね。

    「普通にスカウトされて入りました」とかに比べると、僕の場合、逆に重過ぎますけど。もうこれしかない。次やるって決めたことは、死ぬまでやってみようと。

    人気者になりたいとか、モテたいとかじゃなくて、俳優として認められたい。ちゃんとした「選手」になりたいです。

    自分を捨てない

    ――『ヒノマルソウル』の主人公たちのように、挫折してもまたやり直せると。今、下を向いて心が折れそうになってしまっている人たちに、伝えたいことはありますか。

    命を捨てない。まずそこが第一じゃないですか。あとは自分を捨てない。人に潰されたら終わりだなと思う。

    自分を生きられなくなったら終わり。「誰かがこう言ってたから、俺も、私も」というのはくだらない。人ばっかり見てないで、自分の好きなもの、楽しいこと、やりたいことを見つめた方がいい。

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    映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』予告編【6月18日(金)公開】

    僕はある時期、人ばかり見ていたから。その先輩がいないと、友達がいないと生きていけないの? いやいやいや自分でしょっていうのは、僕自身が思っていることです。

    親がプロ野球選手だったから野球やらなきゃという思いに駆られて、親の背中を追って。親ばかり見ていたら、自分がわからなくなって。家族でさえそうなんですよ。

    自分が何をやりたいか。自分がどうしたいか。自分の幸せは何なのか。みんな孤独、みんな一人だから、自分が主人公だと思って生きなきゃもったいないと思います。

    山田裕貴(やまだ・ゆうき)

    1990年、9月18日生まれ。愛知県出身。NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)の雪次郎役をはじめ、テレビや映画などで幅広く活躍。舞台『終わりのない』で文化庁芸術祭賞 新人賞、NHKドラマ『ここは今から倫理です。』で2021年3月度ギャラクシー賞月間賞。『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』に続き、『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』などの出演映画が公開を控えている。日本テレビ系ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』が7月7日(水)夜10時より放送開始予定。