強面パンクロッカーの豪快すぎる手づくり弁当。息子の感想がめっちゃグッとくる

    パンクバンドBRAHMANとアコースティックバンドOAUのボーカル TOSHI-LOWは、愛する息子のために6年間お弁当をつくり続けた。弁当づくりは「過去の自分と向き合える作業」だという。

    鬼神のようなライブパフォーマンスで聴衆を圧倒し、カリスマ的な人気を誇るパンクバンドBRAHMAN。強面で知られるボーカルのTOSHI-LOWには、実は意外な素顔があった。

    長男が小学校を卒業するまでの6年間、お弁当をつくり続けていたのだ。

    西槇太一

    BRAHMANのTOSHI-LOW

    弁当なのに麺とつゆが入っている「そうめん弁当」。どでかい肉をぶち込んだ「ステーキ弁当」。吉野家の牛皿をそのまま詰め込んだ「吉野家牛丼弁当」…。

    常識をくつがえす変わり種弁当の数々を『鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜』(ぴあ)にまとめたTOSHI-LOWは、弁当づくりを「過去の自分と向き合える作業」と語る。

    「そういえば給食ないんだよね」

    ぴあ / Via amazon.co.jp

    『鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜』

    ――息子さんのお弁当をつくり始めたきっかけは。

    学校に給食がないことを知らなくて。もし知ってたら、入れなかったかもしれないです(笑)

    何も考えずに「合格して良かった」なんて言ってたんですけど、その学校を紹介してくれた人が「そういえば給食ないんだよね」って。えー! 早く言ってよ、みたいな。

    ――お弁当づくりは妻のりょうさんと分担されていたのですね。

    お弁当づくりも、もちろんりょうちゃんの方が圧倒的に多くつくってるけど。

    子どもが生まれてあっちが仕事復帰するっていう時に必然的に。どうせ育児をするなら、ちゃんと関わりたいなと。

    「ちゃんと」っていうのは、完璧にやるってことじゃなくて、自分ができるところで、子どもが衰弱しない程度にちゃんとっていうこと。

    遊びが多くて、ちょっと雑でもいいの。ワイルドに育てばいいじゃないですか。

    そうめん弁当の衝撃

    『鬼弁』より

    そうめん弁当

    ――お弁当の中身もワイルドです。そうめん弁当やつけめん弁当は、こんなことができるのかと目からウロコでした。

    麺はできますよ、ちゃんと洗えば。くっつかないようにきれいに洗って、一口分にしておけばいいだけだから。

    つゆは凍らせてね。そうすると保冷剤代わりになるんです。

    一番人気は吉牛弁当

    『鬼弁』より

    吉野家牛丼弁当

    ――特に喜ばれたのは。

    今までで一番おいしかったのは吉牛のやつだって言ってますね。吉野家で牛皿を買ってきて、ご飯だけ炊いて。

    「すごくおいしかった!」って言うから、「そうだろ? 100年以上前に考えられたタレだからな。変わらない味があるんだよ」とかウンチク言ったりして。

    ――ワイルドすぎる(笑) でもたまにはそういうのもアリだと思えたら、親も少し楽になれますね。

    男の人だけじゃなく、女の人も完璧にはできないし、そもそもやる必要ないし。だからこその分業だと思うんですよね。

    飲み屋さんの料理も投入

    『鬼弁』より

    飲み屋の詰め合わせ弁当

    ――飲み屋さんでつくってもらった具材をお弁当に入れるっていうのも、ぶっ飛んでるなと。

    最高うまいじゃないですか。アテなんだもん。「あした弁当なんだけど」って言ったら、全然やってくれますよ。

    それを入れるだけだって弁当。だって、みなさん肉さばくところからやるんですか? お店で買ってきた肉が味つきだったらダメなんですか? そうじゃないでしょ。

    それより、「あのお店の人がこうやってつくったんだ」って教えてあげた方が、子どもも興味を持つんじゃないかな。

    ――お弁当を完璧につくることより、そこから会話が生まれる方が大事だと。

    そうそう。人生なんて全部で1なんだから、生活の小さい何万個のうちの1個を完璧にしたって、あまり影響がないと思うんですよ。

    体に悪いもの食べたら、翌朝は健康的なもの食えばいいし。そんなノリでいいんじゃないかな。あまり厳しすぎてもね。

    「ちゃんとやろう」でスランプに

    『鬼弁』より

    ステーキ弁当

    ――そういう境地に至るまでには、曲折もあったのでしょうか。

    最初のころは「ちゃんとやろう」と考えすぎてスランプに陥りましたね。産地気にしたり、栄養気にしたり。なんか野菜入れすぎちゃったり。

    でも子どもって、そんなに好んで「やったーレンコンだ!」ってならないじゃないですか。やっぱり大人が喜ぶものとは違うから。

    食べてもらえないとつくる方は嫌だけど、残す方にも理由がある。当時はそこをしっかり考えられていなかったなと思っていて。

    単純に量が多かったかもしれないし、つくりすぎていたかもしれないし。「おいしいだろ、食べろよ」っていうのは拷問になっちゃうから。

    「俺は一生懸命やってるんだ」っていう気持ちが抜けてからは、だいぶ楽になりました。

    過去の自分と向き合う

    Ryosuke Kamba / BuzzFeed

    ――『鬼弁』には子どもの食べムラの話なども書かれていて、リアルだなと思いました。

    低学年ぐらいまでは、すげーあるっすよね。あ、これ別に俺の問題じゃなくて、子どもの育ち方がひとり一人違うんだって気づいて。

    確かに俺も子どものころ食わなかったことあったな、とか。「おでんがおかずなんて考えられない」って親に文句言ったりして。「湯豆腐なんて嫌だ。ハンバーグ焼いてよ」みたいな。

    ――お弁当づくりを通じて、昔の自分を思い出しますか。

    過去の自分と向き合える作業ですね。意外に自分のワガママって覚えてなかったりするじゃないですか。

    弁当残したり、弁当箱そのままにして腐らせたり。子どもが金曜につくったのを月曜の朝に出してきて怒るんだけど、そういえば俺もやったな、とかさ。

    しかも、ごちそうさまのひとつも言わずにポンと弁当箱投げたりして。そういうの一個一個思い出しますね。

    いきなり親になった気でいるけど、お前もそうだったじゃんっていうのを、毎朝考えさせられました。

    子どもが喜ぶ新幹線弁当

    『鬼弁』より

    駅弁の新幹線の容器をお弁当に活用

    ――全国各地をツアーでまわって、精魂尽き果てるような激しいライブをされて。その後にお弁当をつくるのは大変だったのでは。

    初めはどっちも負けないでやろうと思ってたんだけど、途中でそうやって気持ちをぶつけてもしょうがないなと。

    そこからはハードル下げるじゃないけど、ツアー先のおみやげ物をそのまま入れてみたり。

    あとは帰りに新幹線型の容器に入った駅弁を買って、ビール飲みながらつまみにして。容器を持ち帰って弁当に使うのも通例でしたね。ちっちゃい時って、それだけで食ってくれるから。

    「パパの方がおいしい。でも…」

    Ryosuke Kamba / BuzzFeed

    ――りょうさんとお互いのお弁当についてアドバイスし合ったりもするんですか?

    ないです。俺がつくる弁当とあっちがつくる弁当は全然違うから。子どもにこっそり「どっちがうまかった?」って聞くことはあるけど。

    ――それは気になる。

    「最近はパパの方がおいしいな。でもママの方が嬉しいんだ」って。一回そう言われて、ああわかる気もするなと。

    ――詩的で、優しい答えですね。

    優しいんだと思います。

    おいしいっていうのは多分、俺の方が面白いもん入れてるから。そりゃ吉牛入ってりゃうまいでしょ(笑)

    やっぱり給食?

    Ryosuke Kamba / BuzzFeed

    ――最後に一言、お願いします。

    給食最高!

    ――えっ!お弁当の本出したのに!?

    給食がいいよ、できれば。下の子は公立だから給食があるんですけど。

    ――全国の親の正直な意見(笑)

    6年間お弁当つくってみて、本当にありがたみがわかった。給食は素晴らしいなと。みんな平等にご飯を食べられるってのも最高ですよ。

    西槇太一

    〈TOSHI-LOW〉 トシロウ。1974年、茨城県水戸市生まれ。1995年にパンクバンドBRAHMANを結成。翌年ミニアルバム「Grope Our Way」をリリース。1999年にメジャーデビュー。2003年に女優りょうと結婚。2005年からアコースティックバンドOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)を開始。9月4日に『帰り道』などを収めた新作アルバム『OAU』を出す。東日本大震災以降は、復興支援活動に心血を注ぐ。2児の父でもある。