タトゥー彫り師の業界団体が発足へ 医師法の規制に危機感、法整備へ第一歩

    偏見の払拭めざし、声を上げ始めた彫り師たち

    タトゥー関連の法整備などを求めて、彫り師たちが業界団体の設立へ向けて動き出した。医師免許なしでタトゥーを入れたとして、医師法違反容疑での摘発が相次ぐなか、彫り師らは危機感を募らせている。

    弁護士と刑法学者が呼びかけ

    1月15日夜、東京都内で彫り師の団体「日本タトゥーイスト協会(仮称)」についての説明会が開かれ、約50人の彫り師が出席した。

    協会設立を呼びかけたのは、吉田泉弁護士と立教大学大学院法務研究科の辰井聡子教授(刑法・医事法)。

    吉田弁護士は、医師法違反の罪で大阪地裁で有罪判決を受けた彫り師(控訴中)の弁護団メンバー。辰井教授も裁判に出廷し、弁護側の証人尋問に立った。

    派閥性越えられる?

    集まった彫り師らが真剣な表情で耳を傾けるなか、吉田弁護士はこう訴えた。

    「大阪地裁の判決は職業としての彫り師を認めていない。(法整備へ向けた)国会議員へのロビイングもうまくいっておらず、危機感を感じている。彫り師という職業を社会に認めてもらい、国会に声を届けるためにも業界団体が必要だ」

    彫り師の世界は師弟や一門の関係が濃く、派閥性が強いとも言われる。タトゥー裁判への賛否も一様ではない。そうした状況でひとつの団体にまとまることはできるのだろうか。

    「彫り師と業界団体は食い合わせが悪いと思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。人が集まる以上、派閥的なものがあるのはある意味当然。弁護士会にだって派閥はある。団体は団体として活動すればいい」

    和彫りやタトゥーなどのジャンルを区別せず、全国から参加を呼びかけている。

    偏見払拭へ倫理基準を提案

    辰井教授は医師法による規制の問題点を批判したうえで、倫理基準の策定を提案した。

    「業界団体としては安全性の確保が最重要だが、日本社会の根強い偏見を払拭するにはそれだけでは足りない。彫り師として『こういう風にやっていくんだ』という姿勢を示し、社会的な受容を図ることが必要です」

    辰井教授が例示した倫理基準案は次の通りだ。

    この指針は、タトゥーの施術者が遵守すべき事項を定めることで、顧客の身体の安全性やその他の権利を保護し、顧客のニーズに応じたタトゥーの提供を可能にし、またタトゥー施術に対する社会的信頼を確保することを目的とする。

    今後はこの案をたたき台に、当事者である彫り師たちが議論を深めていくことになる。

    「声をまとめよう」

    「問題ある彫り師への処分はどうするのか」「会員以外が不祥事を起こした場合の対応は?」。質疑応答の時間には、会場の彫り師らから活発に質問や意見が出された。

    会の終盤、彫り師の渋谷彫雅さんは「俺も協会に入るつもりでいます。一人ひとりの意見では、なかなか世間に声が通らない。それをきちんとまとめられる団体にしよう」と語りかけた。

    説明会は1月29日に大阪でも開催される。

    BuzzFeed JapanNews